- まえがき
- T 読解から「ひとり語り」に発展させ,声に表す喜びを知る
- 1 豊かに「語る」ことは,確かに「読む」ことから
- 2 「海のいのち」指導ステップ
- 3 単元の実際
- ・自力読みの方法を学び,「海のいのち」を読む
- (1) アニマシオン的な活動で設定をつかむ
- (2) 物語全体の流れをつかむ
- (3) 場面わけ
- (4) あらすじを書く
- (5) 作品の星座(主観編)で人物関係をまとめる
- (6) クライマックスを考え合う
- (7) 作品の構造を作品の星座(客観編)にまとめる
- (8) 「海のいのち」作品の心を考える
- (9) 作品との対話
- (10) 「ひとり語り」をつくり,交流する
- U リレー落語で,楽しくコミュニケーションを
- 1 相手意識を持たせるために落語を行う
- (1) 恥ずかしさが残り,表現しきれていない子がいるという課題
- (2) 相手意識を持ち,動作を入れる
- 2 活動のステップ
- 3 単元の実際
- (1) 落語を語る動機づけを図る
- (2) 寄席で噺家の落語を見る
- (3) めあてを決める
- (4) 落語の本を選ぶ
- (5) 落語を頭に入れる
- (6) 高齢者体験をする
- (7) デイサービスセンターに調査活動に行き,相手の方の様子を知る
- (8) 落語の練習をする
- (9) 相手となった方に落語を語る
- V サイレントマジックで,通じる自信を持ち,言葉の大切さを知る
- 1 黙って手品を行い,音声表現の力をつける
- 2 活動のステップ
- 3 単元の実際
- (1) 手品を行うめあてづくり
- (2) 自分で行う手品を見つける
- (3) 調査活動をする
- (4) 手品の練習をする
- (5) 相互評価をする
- (6) 仕上げの練習をする
- (7) 交流会を行う
- W 詩のボクシングで「伝える心」「受け取る心」の大切さを知る
- 1 詩のボクシングで,心を込めた言葉の根底にある心の大切さに気づく
- 2 活動のステップ
- 3 単元の実際
- (1) 共通学習材を読むことを通して,読み方を学ぶ
- (2) 自分で詩を読み,選び,読解する
- (3) 自分が選んだ詩を覚え,友達と交流する
- (4) 自分で詩を作る
- (5) 自分で作った詩を暗唱し,交流する
- 学習用配布資料
- ◎物語の読み方を身につけよう
- ◎高齢者の方と仲良くなろう
- ◎続高齢者の方と仲良くなろう
- ◎「命」を感じる詩を読もう・詩を作ろう
- ◎詩のボクシングをしましょう
- あとがき
- 詩のボクシングとは
まえがき
すべての教科でも,すべての日常生活でも使うもの.それは「言葉」である.
言葉のうちでも,最もよく使われるもの.それは「音声言語」である.
そこで,本書では国語科で育てる基幹学力のひとつとして「音声言語」を取り上げた.
「音声言語」を使った活動の中でも最も頻度の高いもの.それは他者との「対話」である.
対話が成立するということは,「お互いのコミュニケーションがとれた」ということである.コミュニケーションをとることは各教科で必要であり,日常生活でももちろん必要である.本書では音声言語の中でも特に「コミュニケーション」をとる力,中でもその基盤について述べる.
コミュニケーションの力とは,さまざまな相手にさまざまな方法で自らを伝え,そして,相手を受け取ることができる力であろう.
この力をつけるためには,以下の2つの活動が必要である.
1つは,相手に合わせて,自らを表現する方法を獲得する活動である.
もう1つは,自分とは異なる立場の人とかかわり,相手の様子を知り,相手に合わせて自己表現し,相手との意思疎通を達成する活動である.
相手に合わせて活動するためには,自己表現することが必要となる.しかし,自らへの自信がなければ表現することはおぼつかない.昨今,論理的に考え,話す・聞くという能力は重要視されている.それも大切である.しかし,話すことや聞くことに対して,その一元的な価値観でよいとは思わない.語りたいことがあり,相手がいて,うまく言えないかもしれないけれども一生懸命伝えようという気持ちを持った子どもたちを育てたい.自分に向けて,相手が一生懸命話している.一生懸命聴こう.そして,答えよう.そういう気持ちを持った子どもたちを育てたい.言葉の奥にある思いを何とか伝えようとして,何とか受け取ろうとして,表現し理解する.このような姿こそが,お互いを認め合い,コミュニケーションの力を高めていくための礎であろう.これは,論理性追究型価値観の音声言語の授業からは生まれない.
また,子どもたちの中には,論理的に話を進め,論理的に聞くことが苦手な子も実は多い.指導をすることで,一つひとつのスキルは身につけることができる場合も多い.が,苦手な子もいる.そのような状況の中,論理的な思考のみを大切にした「話すこと・聞くこと」の活動では,論理的に話したり,聞いたりすることの苦手な子はどんどん自信を失っていく.
よく考えてみたい.言葉,その中でも,音声言語はあらゆる言葉の中でも最も多く使われていくものである.それに対する自信を失った子は,話すことが少しずつできなくなっていくだろう.論理的に話すことのみの価値観を持った子は,論理的に話したり聞いたりできない子の話が理解できず,意思疎通ができなくなっていくだろう.
論理的な思考と,それを伴う話し方,聞き方を否定しているのではない.その一方で,お互いをまるごと受け入れ,何とかして伝えよう,何とかして分かろうという心を育てる授業が必要だと言っているのである.
そこで,本書では,次のような活動を段階的に行うことで,相手意識を高め,自己表現・他者理解の力を養うことを,子どもの姿から提案する.
1 声に出して表現することの楽しさを知る
2 伝える方法を学ぶ
3 伝わる自信を持ち,言葉の大切さを知る
4 言葉のもとにある心の大切さに気づく
なお,巻末には本書で行った活動で使用した「学習用配布資料」をつけた.実践の際に,参考にしていただければと思う.
/小林 康宏
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- 明治図書