- T 論争問題を取り上げた国際理解学習の開発
- 1 国際理解学習の概念規定 /小原 友行
- 2 社会科における三つの国際理解学習 /小原 友行
- 3 社会科国際理解学習の目標 /小原 友行
- 4 国際理解学習の教材としての論争問題 /小原 友行
- 5 論争問題を取り上げた国際理解学習の方法 /小原 友行
- U 論争問題を取り上げた授業づくりの方法
- 1 文化摩擦の論点・争点を取り上げた授業づくり
- ―教材開発の視点― /藤原 孝章
- (1) 六つの言説―文化摩擦の論点・争点
- (2) 文化摩擦のサイクル
- 2 国際化の論点・争点を取り上げた授業づくり /鴛原 進
- (1) 国際化の論点・争点
- (2) 国際化の論点・争点の学習材への変換の視点
- (3) 国際化の論点・争点を取り上げた授業づくりの方法
- 3 国際協力・国際貢献の論点・争点を取り上げた授業づくり /朝倉 淳
- (1) 国際協力・国際貢献の論点・争点
- (2) 国際協力・国際貢献に関する単元の目標
- (3) 国際協力・国際貢献の論点・争点を取り上げた授業
- V 論点・争点を明確にした国際理解の授業
- 1 文化摩擦を取り上げた授業
- 1 「はし」と「手」,どちらが清潔なの /田山 修三
- (1) 「はし」と「手」を使う食習慣
- (2) 「文化摩擦」が内在
- (3) 単元構成(例)
- (4) 単元構成図(13時間)
- (5) 展開例1 3/13時間目の場合
- (6) 展開例2 5/13時間目の場合
- (7) 展開例3 10/13時間目の場合
- (8) 食文化を取り上げた学習の問題と展望
- (9) 「箸食」と「手食」を考える資料
- (10) 考察―「調べて考える」国際理解の学習へ
- 2 女性は肌を見せてはいけない宗教がある,これっていいの /永田 成文
- (1) 中学校社会科地理的分野における異文化理解学習の必要性
- (2) 人々の行動様式から価値観をとらえる地域調査学習
- (3) ムスリムと日本人との価値観の違いから生じる文化摩擦
- (4) 小単元「サウジアラビアの文化を考える」
- 3 インドの人は牛の肉を食べるべきか /上之園 強
- (1) 牛肉食と子どもたちとのかかわり
- (2) 単元の基本的な考え方
- (3) 単元の目標
- (4) 学習活動
- (5) 考 察
- (6) 資 料
- 2 国際化社会の論争点を取り上げた授業
- 1 捕鯨の解禁,資源の問題それとも文化の問題 /尾ア 美香
- (1) 近年の捕鯨問題
- (2) 単元の基本的な考え方
- (3) 単元の目標
- (4) 学習活動
- (5) 考 察
- (6) 資 料
- 2 日本は食糧自給率を高めるべき,それとも輸入に頼るべき /松田 芳明
- (1) わが国の食料自給率の問題
- (2) 単元の基本的な考え方
- (3) 単元の目標
- (4) 食料にかかわって日本と関係の深い国々
- (5) 意思決定にかかわる予想される意見
- (6) 学習展開
- (7) 考 察
- 3 外国人労働者を受け入れるべきか /門戸 史幸
- (1) 社会問題としての外国人労働者問題
- (2) 外国人労働者の増加の背景
- (3) 外国人労働者にかかわる問題
- (4) 外国人労働者問題をめぐる議論
- (5) 「外国人労働者を受け入れるべきか」の授業
- (6) 生徒の意識と態度の変容
- 3 国際協力・国際貢献を取り上げた授業
- 1 青年海外協力隊を採点すると何点 /有森 歩
- (1) 「青年海外協力隊」って何?
- (2) 授業構成の視点
- (3) 授業の実際
- 2 ユニセフ募金は本当に必要か /坂田 大輔
- (1) ユニセフの活動のどこに論争問題があるのか
- (2) 論争問題を取り上げた授業づくり
- (3) 「あなたは,ユニセフ予算案に賛成か」
- 3 アフリカからのタコ輸入は成功か /村上 忠君
- (1) 授業づくりにあたって
- (2) 授業「タコ輸入は成功か?」
- 4 どう考える,中国人サポーター問題 /森田 直樹
- (1) 問題のとらえ方―教材観に代えて
- (2) 授業モデルの実際
- (3) 資 料
- 執筆者一覧
まえがき
今,子どもたちが社会人となる2015〜2025年の社会の変化に主体的に対応していくことができるような資質や能力の基礎・基本を育成する社会科学習が求められています。
では,10〜20年後はどのような社会になっているのでしょうか。社会のグローバル化や高度情報化はますます進み,超少子化問題はいよいよ深刻になっていると考えられます。このような社会においては,価値観や文化観の違いによって,さまざまな摩擦やジレンマが生まれることが予想されます。それらの多くは,判断が分かれるような,それゆえ合理的な解決が困難な論争的な問題となります。このような社会の変化や課題に対して,合理的な判断を行い,適切な社会的行為を選択しながら主体的に生きていくことができる子どもたちを育てるために,今どのような社会科授業が求められているのでしょうか。
このような課題意識から,本書では,多文化社会の出現によって生まれてくる社会的な論争問題を教材として取り上げた社会科国際理解学習の具体的な授業プランを提案していきたいと考えています。
そこで,T章では,新しい社会科の教材となりうる論争問題について考察するとともに,それらを取り上げた新しい国際理解学習の考え方と授業のあり方について明らかにします。
U章では,新しい時代の国際理解学習に関する教材開発の視点を示すとともに,論争問題を取り上げた国際理解学習をどのように教材化していけばよいのかについて明らかにしていきます。
そしてV章では,論点・争点を明確にした国際理解学習の授業プランについて提案していただきます。具体的には,文化摩擦を取り上げた授業づくり,国際化社会の中での論争点を取り上げた授業づくり,国際協力や国際貢献に関する論争問題を取り上げた授業づくり,それらの可能性に大胆に挑戦していきます。
本書が,全国の先生方に広く活用されますことを期待したいと思います。また,そのことを通して,21世紀初頭の国際化社会を主体的に生きていくために必要な力を,子どもたち自身が獲得していく手助けとなりますことを念願いたします。
最後になりましたが,本書は,難産ではありましたが,樋口雅子編集部長のねばり強いご支援によって刊行にこぎつけることができました。また,編集・校正などでは,原田俊明氏のご尽力をいただきました。お二人に,心より感謝申し上げます。
編著者 /小原 友行
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- 明治図書