小学校算数 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実

小学校算数 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実

総合46位

好評3刷

「個別最適な学び」と「協働的な学び」の現在地

「個別最適な学び」「協働的な学び」という2つの視点から、“自ら学び続ける人”を育てるための教科教育の在り方を問う1冊。先行研究や教育動向を丹念に紐解きつつ、1年間の実践の蓄積に基づいて、学び方から評価まで具体的かつ実践的な提案を行っています。


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ISBN:
978-4-18-447221-1
ジャンル:
算数・数学
刊行:
3刷
対象:
小学校
仕様:
四六判 176頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年5月15日

目次

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 何のための「個別最適な学び」と「協働的な学び」か
1 政策として定められた「個別最適な学び」と「協働的な学び」
2 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の目的
3 教科教育の重要性
4 見方・考え方を働かせる学習の個性化を目指す
5 学習観について再考する
第2章 「個別最適な学び」とは何か
1 「指導の個別化」と「学習の個性化」
2 単元を考える際は,一斉授業と個別学習を分ける
3 一斉授業と個別学習を取り入れた単元構成の実際
4 個別学習のつくり方
第3章 「協働的な学び」とは何か
1 「協働的な学び」について考える必要性
2 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の関連
3 「協働的な学び」の意味
4 「協働的な学び」の意義
第4章 「協働的な学び」の効果
1 「協働的な学び」の効果
2 「協働的な学び」の問題点
3 「協働的な学び」を効果的にするために子どもが意識すべきこと
第5章 「協働的な学び」を実現させるための教師の役割
1 教師が「協働的な学び」ができる学習環境を築くべき理由
2 「協働的な学び」と学級経営との親和性
3 「だれとでも関わる力」を養い,「学習の理解を深めるための人との関わり方」を育てる教師の声かけ
4 「協働的な学び」が実現されていく様子
5 算数が苦手な子どもには教師が積極的に関わる
6 人との関わりについても振り返る
7 学習を通して学級経営をする
8 「協働的な学び」そのものが目的にならないように
第6章 「個別最適な学び」と「協働的な学び」における評価
1 各教科が育てるべき力とは何か
2 評価の前提
3 「個別最適な学び」における評価
4 「協働的な学び」における評価
5 日常的な評価の方法
6 自己評価について
第7章 「個別最適な学び」と「協働的な学び」で大切な教科の特質に応じた「学び方」
1 教科の特質に応じた「学び方」の大切さ
2 算数の特質に応じた「学び方」
3 教科書では扱いづらい発展的に考える活動
4 統合的・発展的に考える子どもの姿
5 算数の「学び方」を身につけさせるための教師の意識
第8章 「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現するために積み重ねていくこと
1 子どもの学習観を変える
2 算数における「学び方」とは
3 一斉授業で算数における学習観と「学び方」を学ぶ
4 2単元目から個別学習を取り入れる
5 数学的な見方・考え方を意識させていく
6 はじめて出会う学習内容は一斉授業で
7 1学期の終わりごろの姿
8 2学期の終わりごろの姿
おわりに

はじめに

 自ら学び続けられる人を育てるための教科教育の重要性


 本書は,2022年に出版した『「個別最適な学び」を実現する算数授業のつくり方』では書ききれなかった実践や「個別最適な学び」における評価,「協働的な学び」に関することについて書きました。そして何より,「教科教育における『個別最適な学び』と『協働的な学び』」ということを意識して書きました。「個別最適な学び」と「協働的な学び」について考えるとき,教科教育がとても重要になると考えているからです。


 「個別最適な学び」と「協働的な学び」は,何のために行うものでしょうか。私は,「自ら学び続ける人」を育てるためだと考えています。「自ら学び続ける子ども」ではなく,「自ら学び続ける人」を育てるためです。将来,自分で考えて,行動できるような人になってほしいのです。そして,様々な困難を,過去の経験やまわりの人の意見を取り入れながら乗り越え,自己実現をできるような人になってほしいのです。

 そもそも,「個別最適な学び」と「協働的な学び」が「主体的・対話的で深い学び」を実現させる授業改善のための手段であるため,「主体的・対話的で深い学び」の目的である「資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすること」を目指すことは当然です(「個別最適な学び」と「協働的な学び」の目的の詳細は,第1章をお読みください)。


 「自ら学び続けられる人」になるためには,「学び方」を学ぶことが必要です。ひたすら知識を覚えても,自ら学びを進めることはできません。「学び方」を知らなければ,いつまで経っても「だれかに問題を出してもらう」「だれかに知識を教えてもらう」ことしかできないため,受動的な学習者になってしまいます。

 だからこそ,「どうやって考えれば,自分で新しい知識を創り出せるのか」という「学び方」を学ぶことが必要なのです。


 「学び方」を学ぶために,教科教育はとても適しています。教科教育は内容の系統性があるからこそ,共通点を見つけて大切な考え方を見つけやすくなっています。そして,見つけた大切な考え方を,他の場面でも使ってみるということが,子どもにもやりやすいのです。

 要するに,子どもが自分で学習を進め,子ども自身で新しい知識を創り出す経験がしやすいのです。


 「算数を学習しても,生活に役立たない」と思う方もいるかもしれません。確かに,役立たない学習内容もあるかもしれません。大人になって,台形の面積の求め方を使ったことがある人は,小学5年生の担任になったことがある人ぐらいかもしれません。ただし,「既習である面積の求め方を使って,台形の面積の求め方を創り出す」という経験は,大人になっても役に立ちます。

 こうした「前の学習を使えば,新しい知識を自分で創り出せた」という経験が積み重なれば,大人になっても,過去の経験や,まわりの人の意見を生かして,目の前の問題を解決しようとするでしょう。そして,「それなら,こんなこともできるかもしれない!」と,今までにないことにチャレンジするようになるかもしれません。


 教科教育というのは,系統的に学ぶことによって,「前に考えたときに○○と考えられたから,同じように考えれば,目の前の問題も解けるかもしれない」「この考え方を使えば,こんなこともできるかもしれない」と,新しい知識を子どもが創り出せるようになっています。ですから,自分で新しい知識を創り出す疑似体験がしやすいのです。

 新しい知識を創り出す疑似体験は,「どうやって学んでいけば,自分で新しい知識を創り出せるのか」という思考方法を養うことにつながり,まさに「学び方」を学ぶことにつながります。


 各教科において,「学び方」を学ぶためには,各教科の特質に応じた見方・考え方を働かせることが重要です。ただ「できた」「できない」ではなく,「どこに着目するとできたのか?」「他の人の考え方を取り入れて,よりよい方法はできないか?」「この見方を使えば,どんなことができるのか?」と考えるということです。

 見方・考え方を働かせることによって,教科の学習を自ら進め,新しい知識を創り出すことがしやすくなります。その結果,教科の特質に応じた資質・能力が身につき,教科を越えた汎用性のある力が身についていくのです。

 これは,現行の学習指導要領が目指している方向性と同じです。「個別最適な学び」と「協働的な学び」という新しい言葉に振り回されるのではなく,現行の学習指導要領で目指すべき「教科の特質に応じた見方・考え方を働かせ,資質・能力を育て,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続ける人を育てる」という方向を見失わないことが大事なのです。「教科の特質に応じた資質・能力を育て,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続ける人を育てる」ことを続けた先に,将来の教育の在り方が見えてくるのだと思います。


 「自ら学び続ける人」になるためには,「学び方」を学ぶことが必要です。そのためには,教科教育が重要です。本書が,教科教育を通して「自ら学び続ける人」に育てることを考えるきっかけとなれば幸いです。


  2023年3月   /加固 希支男

著者紹介

加固 希支男(かこ きしお)著書を検索»

1978年生まれ。立教大学経済学部経済学科を卒業し,2007年まで一般企業での勤務を経験。2008年より杉並区立堀之内小学校教諭,墨田区立第一寺島小学校教諭を経て,2013年より東京学芸大学附属小金井小学校教諭。

日本数学教育学会算数教育編集部幹事。

2012年に所属する「志の算数教育研究会」の共同研究が第61回読売教育賞最優秀賞(算数・数学教育)を受賞。

2022年に日本数学教育学会学会賞(実践研究部門)を受賞。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 見方・考え方を働かせるためにはどうすればいいのか、という疑問を持って読み始めたが、本書の中で具体的な手立てが書いてあり、大変分かりやすかった。
      2024/5/520代・小学校教員
    • 加古先生の著書に興味があって購入しました。
      2024/2/1850代・公務員
    • この本の前の「個別最適・協働的な学び」の本を校長の薦めで購入し、読みました。とてもよかったので、さらに購入しました。
      やはり、具体的な様子の写真や児童の記述などがあり、目指す方向性に説得力があると思いました。
      私たち教員は、とかく自分色にハードルを下げて解釈しがちなので。
      2023/8/230代・小学校教員
    • 個別最適な学びと協働的な学びについて実例を通して学ぶことができるため、校内研究においても大いに参考になりました。
      2023/8/140代・小学校教員
    • 具体的な話が多く、分かりやすかったです。
      2023/4/1620代・小学校教員
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