- まえがき
- 一 「注文の多い料理店」の作品研究と教材化の観点
- 1 賢治と作品
- 2 教材化の観点
- 題名/書き出し/山奥の二人/視点/人物は知らない、読者も知らない/話者の語り方/読者をひきこむ仕掛/初読と再読の違い/文脈によって異なるイメージ/読者に問われるもの
- 二 教授課題=学習目標と授業の構想
- 1 ねらいとめあて
- ねらい/めあて
- 2 授業の構想
- 《だんどり》《とおしよみ》/《たしかめよみ》/《まとめよみ》/《まとめ》
- 三 「注文の多い料理店」の授業
- 1 初読
- 題名と冒頭の役割/物語の世界に誘い込む仕掛/同化体験と異化体験のズレ/文体の裏にひそむ不気味な世界/前後の場面で人物を対比する/テーマに迫る
- 2 再読
- テーマを支える仕組/初読と再読の違いがテーマを浮きぼりにする
- 3 《まとめよみ》へ
- 《たしかめよみ》から《まとめよみ》へせりあがる/諷刺の構造
- 4 典型化――二人の紳士が笑えるか
- 四 授業を終わって
- 西郷先生に聞く
- 「注文の多い料理店」をどう扱うか
- 聞き手/福岡文芸研
- 〔参考〕宮澤賢治「注文の多い料理店」
まえがき
『文芸研・教材研究ハンドブック』全十五巻は、小学校の教科書教材のうち代表的なもの十五篇を選び、それぞれの教材についての分析・研究の「すべて」を一巻一篇の形でまとめたものです。
教材を選ぶにあたっては、五社の教科書に共通する教材ということを考慮に入れ、学年別に平均三篇をわりあてました。代表的な作家の代表的な作品を選び、題材・主題・ジャンルについても偏りのないようにと配慮したつもりです。
教材の分析は文芸研(文芸教育研究協議会)の各サークルがそれぞれの巻を担当し、充分な研究討議をかさね、西郷の全責任によって、内容を監修し、なお巻末に質疑応答の形で「解説」をつけました。本文に肉づけする意味での補説というべきものです。
教材の研究は当然のことながらすべて文芸研の文芸学理論・文芸教育論にもとづいてなされています。教材研究のあり方として特におことわりしておきたいことは、「この学年で」「この教材で」「どんな認識・表現の力を育てるか」という文芸研の系統指導の学年課題をもとに、ほかならぬその教材の特質・特色をふまえてなされているということです。この点において、このハンドブックは、これまでの教材分析・研究とはまったくちがった異色なものになっていると思います。
なお、授業の展開については、これも文芸研独自の《とおしよみ》《まとめよみ》という指導過程によってなされています。(指導過程そのものについて、また指導の方法・技術などについては、『授業研究篇』にそれぞれ詳しく述べられておりますから、そちらを参照ください。)
いずれの巻も、おおまかに作家と作品の紹介、教材分析、授業展開の三部に分けて構成されています。執筆サークルの独自の工夫がなされていますが、もちろん、理論・概念・用語・方法はすべての巻を通じて統一されていますから、どの巻をお読みいただいても混乱をおこすことはないはずです。
各巻とも、入門書として初心者にも理解しやすいよう具体的に述べてあります。とはいっても研究の水準はけっして下げてはいないつもりです。しかし、さらに深く研究されたい方は、巻末にある文芸研の基本的文献によられることを切望しておきます。
各巻ともに引用のテキストは、できるだけ原典(もしくは文芸読本『ぶんげい』)に拠りました。ただし、授業のばあい、教科書教材によったものも多少あります。
企画から編集にいたるまで明治図書出版編集部の庄司進氏には細かいところまでお世話になりました。
一九八四年五月 文芸教育研究協議会会長 /西郷 竹彦
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