- まえがき
- T 導入編―これで「自学」のスタートを
- 一 教室に「自学」を導入する
- 1 「自学モデル」をまず見せよ
- 2 「自学メニュー」づくりに全力を
- 3 「自学帳」にはこんなノートを
- 4 「自学帳」はこう使う
- 5 「自学帳」へはその日の内に赤ペンを
- 6 「自学」できない子に対して
- 7 「自学」と授業とのドッキングを
- 二「自学テーマ」ベスト一〇〇
- 1 Aメニュー〈粘り強い思考と意欲を引き出す〉テーマ60
- 2 Bメニュー〈知的な喜びを引き出すドリル〉テーマ35
- 3 Cメニュー〈自己評価とツーウェイを促す〉テーマ5
- U 応用編―自学を支える10の手だて
- 一 知を促す自学テーマの提示を
- 1 まずはメニュー作り
- 2 Aメニューの作り方
- 3 Bメニューの作り方
- 二 作業のための明確な指示を
- 1 学習材と発問・指示
- 2 発問・指示を意識させる場
- 3 「指示」で変わる思考
- 4 授業での指示・「自学」への指示
- 三 「追試」できる自学モデルの提示を
- 1 実物の力
- 2 各学年の「自学」の例
- 四 教師の評価と自己評価の併用を
- 1 赤ペンは自学の原動力
- 2 限られた時間の中で
- 3 仲間からの赤ペンで
- 4 赤ペンを入れて見えてきた
- 5 自分のノートヘ赤ペンする
- 五 教室でも「自学」を
- 1 「朝学」の効用
- 2 「自学」推薦コーナー
- 六 授業とのドッキングを
- 1 「自学」が授業を動かす
- 2 よい話し合いになる問題
- 3 研究授業もメタ的に
- 4 二つに切れるか
- 5 生きた状況で思考できる子に
- 6 自ら学ぶ力とは
- 7 討論の力を「自学」で
- 8 くらしに目を向けたH男
- 9 S子の主張
- 10「自学」で本物の予習
- 七 スモールステップ化を
- 1 低学年にも自学を
- 2 プリント方式によるスタート
- 3 プリントの利点を生かす
- 4 成績主義からの脱皮を自学で
- 5 家庭でも知的な状態に
- 6 Aメニューは日記で
- 7 選択制を取り入れる
- 8 自学帳の導入へ
- 八 思考する道具としてのノート活用を
- 1 システム手帳化
- 2 子どもの行動の支えとして
- 3 思考を引き出す「器」
- 4 思考するための道具
- 5 思考が見える道具
- 九 個への着目を
- 1 データペースとしての「自学帳」
- 2「個」に応じる赤ペン
- 3「自学」で成長
- 4 成績主義からの逆転
- 5「制約」の有無ではない
- 6「自学」による逆転の発生
- 7「自学」で治癒する
- 8「自学」で変身したT男
- 十 ツーウェイの場の設定を
- 1 ツーウェイの場
- 2 Cメニュー
- 3 親の「自学」へと
- あとがき
まえがき
「自ら学び続ける意欲=自学力」をクラスの全員の子に育てる方法を見つけました。今、「自学」が面白いです!
樋口雅子編集長への手紙の片隅にこのように書いた。三年ほど前のことだ。
自分の実践の成果の出ている面について書くのは、照れくさいものだが、この時ばかりは、どうしても、ひとこと紹介したくなってしまった。
当時、クラスでは、画期的な“事件”が発生していた。
一冊のノート=「自学帳」の中に、自分の思考をはっきりと見せる子どもがつぎつぎと誕生していたのである。
授業の中でなら、精一杯思考し、発言する子どもを現出させることはできる。
しかし、教室という特殊な人的・物的な場に支えられて生まれた子どもの力は、他の場においては、なかなか発揮できにくい。状況によって、思考は大きく左右される。教室での力を、家庭で出すことは難しいのであった。
思考は学校で、家庭ではドリルを! といったような、“あきらめの構図”が、私の中にできかけていたのだった。
そんな時の「自学帳」の出現である。一冊のノートが、教室の場でも、家庭の場でも共通の「思考を促す道具」として機能することが分かった。
このノートは、教室から、家庭へと行き来することになった。そして、授業とのドッキングにより、授業の質を高める機能も有することになった。
家庭での「自学帳」は、自然に親の目に触れることになる。親はテストの成績でなく、子どもの思考と対面することになる。
「子どもも、いろいろと考えているのですね。」
「初めて、うちの子が机にすわったのを見ました。」
親の言葉が、「自学帳」に登場するようになった。
教師と親の間に、成績ではなく、「子どもの知」を媒介としたツーウェイができあがっていった。
気がついてみたら、まさに「自ら学ぶ力と意欲」を持った子の姿があった。「自学帳」は、自学力育成を物語る証拠の品となった。はしゃぐ気持ちを押さえながら、子ども達のノートを職場の仲間に見せて回った。
現代的課題として叫ばれ続けている(その割には成果の出ていない)「自ら学ぶ意欲の育成」というスローガンは、一冊の「自学帳」によって、具体化できることを見つけたのだった。このような状況の進行中に、「今、自学が面白いです」という手紙を編集長に書いたのだった。
本書で紹介する「自学システム」には、特別な道具はいらない。子どもには一冊の「自学帳」、教師には一本の赤ペンがあれば、明日からでも始めることができる。
ベテランでなければできない巧みな指導技術も必要ない。ただし、ちょっとした技術はいたるところに使ってある。一つ一つの技術は、常識的なものでも、それがシステム化すると、力を発揮するようである。
この「自学システム」は、一人の教師が、自分の教室でコツコツと進めていくことを想定している。しかし、その効果は、「自ら学ぶ意欲」研究に大がかりで取り組んでいる学校に決して負けないと考えている。
「私も、今、自学が面白いです!」
若い先生からも、ベテランの教師からも、こんな声が聞かれることを楽しみにしながら、私が、今までに取り組んできた「自学システム」のすべてを、すぐに追試できる形で紹介していくことにする。
/岩下 修
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- 明治図書