Society5.0に向けた進路指導
個別最適化時代をどう生きるか

Society5.0に向けた進路指導個別最適化時代をどう生きるか

好評2刷

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個別最適化時代をどう生きるかを学校視点で考える!

今、社会の仕組みが大きく変わっています。子ども達を大人に育て、社会に送り出す学校も変わらねばなりません。個別最適化時代に、どう生きるのか。Society5.0に向けた進路指導とは?これからの社会に生きる子ども達の幸せの為に、大切なことをまとめました。


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ISBN:
978-4-18-285716-4
ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2刷
対象:
小・中・他
仕様:
A5判 128頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年5月10日

CONTENTS

もくじの詳細表示

まえがき
小学校・中学校・高等学校の先生方へ,保護者の方へ
第1章 これからの社会と教育
1 Society5.0とはどんな時代か
今の社会の考え方(コード)
Society5.0のコード
Society5.0における進路指導
2 Society5.0で活躍できる人はどのような人たちか
現在の教育にフィットしていない人
今後増える不適応
3 なぜ,改革できないのか?
第2章 学歴モデルの崩壊
―これからの社会で生き残るには,どんな教育が必要なのか―
1 誤った学歴信仰・学歴モデルの崩壊
旧社会の単純な学歴モデル
「就職率9割,9割5分」の実態
奨学金の制度が変わり,借りやすくなりました
しっかりしたキャリアイメージをもてるか
2 なぜ,そうなったか?
―学校を卒業しても就職できない若者が大量生産される理由―
終身雇用の誕生
終身雇用の崩壊が生み出す変化
人手不足の実態
3 潰されるローカルエリート
競争を勝ち上がっても将来の豊かさが保障されない時代
4 一次元の序列
規格化
同時化
金太郎飴
幸せ
5 これからの社会の幸せ
学校で身につけたい人脈
富の創造
6 専門性をもつことが難しくなった高等学校教師
7 これからの社会で生き残るためには,どんな教育が必要なのか
―広域通信制という選択肢―
第3章 N高等学校の教育
1 N高等学校とはどんな学校か
全日制高等学校に通うA君
N高等学校に通うB君
二人の高校生の生活の違いから見られる広域通信制高等学校
新しいタイプの通信制高等学校
2 多様な教育と多様な進路
本当のキャリア教育
デュアルシステム
事実上のデュアルシステム
多様な進路
3 N中等部
なぜN中等部が誕生したのか
キャリア教育とは
N中等部の可能性
中学校ではありません
4 不登校特例校
特例校
教育課程の特徴
第4章 通信制高等学校Q&A
Q1 通信制に行っている子どもはどれくらいいるの?
Q2 どうやって入学するの?
Q3 ちゃんと卒業できるの?
Q4 友達はできる?
Q5 高等学校卒業資格は全日制と同じなの?
Q6 広域通信制高等学校の通信コースと通学コースの差って何?
Q7 お金はどれくらいかかるの?
Q8 転入学と編入学は何が違うの? どうやって転入学・編入学するの?
第5章 海外進学
1 海外進学という選択肢
2 海外進学のための広域通信制
インフィニティ国際学院
AIE国際高等学校
NIC
広域通信制の強み
第6章 様々な広域通信制
―8つのカテゴリとその特徴―
全日制高等学校の受け皿としての通信制高等学校
発達障がいの対応に特化した通信制
数多くの専門分野から自分で選択できる通信制
ネット学習のコンテンツが多い通信制
特定の分野に特化した通信制
高等学校の部活動だけではなく,世界で活躍したい通信制
大学進学を叶える通信制
とにかく行動したい通信制
第7章 広域通信制の課題
1 過去にあったトラブル
2 広域通信制の見分け方
第8章 今後の教育
1 今後の学校組織を中心とした変革
2 学校組織を中心とした教育変革の拡大化
3 教師の働き方
出口の見えない働き方改革
N高等学校,N中等部の職員
授業が広域通信制高等学校での教師の仕事の中心でない理由
広域通信制にフィットする教師
今後生まれる広域通信制と働き方改革
4 これからの授業
様々な子ども
正しい医療
ホモサピエンス
時代の変化
民主化
年齢構成の崩壊
新たなツール
コードの違い
『学び合い』だったら
1人1台の先にあるもの
個別最適化した学習とは
5 夢―教育が育み培う幸せな社会―
読書ガイド
あとがき

まえがき

  小学校・中学校・高等学校の先生方へ,保護者の方へ


高等学校の先生方へ

 最初にお詫びします。本書は,高等学校の先生方に対して失礼極まりないことを書いているように読み取れる内容が続きます。しかし,私は元高等学校教師で,高等学校教師の方のご苦労はよく存じています。共著者は現職高等学校教師です。

 本書を手に取るような方だったら,以下のことはお分かりだと思います。

 第一に,現状の高等学校,特に公立高等学校が緩慢に弱っており,今後,一層の速度で崩壊に向かっていることを。もちろん行政が様々な施策を行っていますが,それらによって改善しそうにないことを。では,出口はどこにあるのでしょう。本書はその未来像を示そうとしています。

 第二に,現状の高等学校教育にフィットせず,退学してしまう生徒が生まれ,心ならずも退学手続きをしたことはありませんか? 私は学力的に最底辺の高等学校の教師でした。後から後から,可愛がっている担任クラスの生徒の退学手続きをしました。退学してもよいことはないことは十分に分かっています。ある教え子は退学後にバッタリ会ったとき,ヤクザのパシリになったことを私に満面の笑みで自慢していました。私にはそれをとやかく言えませんでした。

 残念ながら,今の高等学校教育は万人向けとは言えません。それはお認めいただけると思います。ならば,退学する生徒に,よりよい選択肢を与えたいと思いませんか? さらに言えば,今の高等学校にフィットしない子どもは最初から,その子に合った学校に進学した方がよいと思いませんか? 本書はその選択肢を先生方に知っていただきたいと願っているのです。



中学校の先生方へ

 皆さんが接する子どもたち,保護者の大多数は今の日本社会の考え方の中にいて,古い学歴モデルの中に生きています。だから,その方々は本書で書かれていることは受け入れがたいと思います。私はそれでよいと思います。無理に伝える必要はありません。しかし,必ず一定数(おそらく2割弱)の子どもや保護者は今の高等学校に対して不安をもっていると思います。その方々に,別な選択肢を紹介して下さい。例えば,本書を紹介して下さい。ただし,当然ですが選ぶのは子どもであり,保護者です。求めている子ども,保護者ならばすんなりと受け入れてくれると思います。



小学校の先生方へ

 現在,本書で紹介している学校の中学校版(例えばN中等部)があります。そして,今後,どんどん増えるでしょう。だから,中学校の先生方へのアドバイスと同じことをアドバイスします。古い学歴モデルの中に囚われている保護者の意識改革には時間がかかります。低学年から伝えられる保護者には伝えて下さい。その保護者の子どもが中学校,高等学校に進学する頃には,今とは違った世の中になっています。



全ての先生方へ

 これからの学校教育は多様になります。その中には,今と全く同じ学校も残ります。なぜなら,今の教育を欲し続ける子どもと保護者もいるからです。ただし,それ以外の子どもと保護者のニーズに対応した多様な学校が生まれるでしょう。当然,教師としての仕事も,子どもとの間合いも様々です。退職(本書の読者の方の場合は65歳,若い方は70歳)までの時間で,どの学校の教師にソフトランディングしたいかをお考えいただきたいと思います。



保護者の方へ

 本書を手に取っている方の中には,今の学校教育にフィットしていないお子さんのことで悩まれている保護者の方も含まれていると思います。「我が子は悪くない!」と思いながらも,何か後ろ暗い気持ちをもっている方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし,お子さんは悪くありません。「今」の学校との相性が悪いだけです。本書は「悪くない!」と確信し,そのような保護者の方に,進むための方向性をもっていただくための本です。

 本文で詳しく説明しますが,今の教育は現状の日本社会にフィットしていないのです。真面目に学校教育を信じても報われません。だから無理に今の学校教育にしがみつこうとすることをやめて,お子さんにフィットする別の選択肢を探すことを提案します。

 皆さんも,私も,「なんでこんな勉強をするんだ! どうでもいいことだろ」と思ったことがあると思います。私は実際に保護者を対象とする調査をしました。その結果,みんなそう思っているのです。驚くなかれ,教えている教師自身も一般の方と同じように思っているのです。当然です。実際には役に立たないからです。

 例えば九九です。なぜ九九を学ばなければならないのですか? 典型的な応えは「買い物ができない」です。でも本当ですか? 今時,買い物で計算しますか? 多くの場合,バーコード読み取りで機械が計算していますよね。そもそも大人の我々の生活を思い出して下さい。この1年間で筆算したことは何回ありますか? 私の場合,少なくともこの20年間で一度もありません。簡単な計算は電卓でやりますし,少し複雑な計算は表計算ソフトで行います。

 もちろん四則演算の考え方は必要ですし,概算で大体の値を出せることは買い物でも必要でしょう。しかし,現在のように九九を覚え,四則演算の筆算を徹底的にやる必要はないように思います。

 特別支援学級で算数を学んでいて,九九が覚えられないお子さんをおもちの方もおられるでしょう。ご安心下さい。九九は覚えなくても結構です(覚えられたら,それはそれでよいですが)。我々は,特別支援学級・特別支援学校を卒業,就職し,現在,30歳,40歳の人の保護者(つまり50歳以上の保護者)に,「今考えると学校で何を学ぶべきでしたか?」と聞きました。同じく,その方々が就職する事業所の担当者に同様な質問をしました。その結果,ただの一人も「九九を覚えてほしい,漢字を覚えてほしい」と言う人はいませんでした。ビックリして,「それでは困るでしょう?」と事業所の担当者に聞き返すと,「我々は一人ひとりの能力・特性に合わせた仕事を探し出します。言葉が分からなければ,マークや色で指示します」と平然と言われました*1。

 本文で説明しますが,その他にもギフテッド,即ち,ある才能について飛び抜けており,それに四六時中集中したいと思っている子どもがいます。その子にとっては今の学校教育は苦痛であり,彼らの才能を組織的に萎縮させている危険性があります。

 皆さんだって,今の学校に自分をフィットさせるのに苦労したと思います。多様な情報とたやすく接する子どもたちは一層苦労しています。しかし,苦労してでもフィットさせることが子どもの将来を保障することだと思い,必死に今の学校にしがみつかせようと努力させているのではないでしょうか?

 残念ながら,これからの時代(実際は今から30年以上前から),学校は将来の幸せを保障できなくなっています。むしろ,今の学校教育に生きづらさを感じている皆さんのお子さんこそ,これからの時代に生き残る可能性が高いのです。本書はそれを書きました。読み終わったら,是非,お子さんに読ませて下さい。


  2020年6月   /西川 純

 *1 では何が大事なのでしょうか? 『特別支援学級の子どものためのキャリア教育入門 基礎基本編』『特別支援学級の子どものためのキャリア教育入門 実践編』(いずれも明治図書)をご参照下さい。

著者紹介

西川 純(にしかわ じゅん)著書を検索»

1959年東京生まれ。筑波大学生物学類卒業,筑波大学大学院教育研究科修了(教育学修士)。博士(学校教育学)。前臨床教科教育学会会長。上越教育大学教職大学院教授。『学び合い』(二重括弧の学び合い)を提唱。

網代 涼佑(あじろ りょうすけ)著書を検索»

1983年和歌山生まれ。高等学校国語科教員。

大阪教育大学教育学部卒業後,和歌山県の公立高等学校に勤務。2019年より現職派遣として上越教育大学教職大学院西川研究室に所属。「徹底的に子どもから学び,一人も見捨てない教育・社会を実現する」ために学んでいる。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • なんとなく、こういうものだろうと考えていた物事が違うんだと改めて考えさせられた
      2021/1/2920代・中学校教員
    • これからの進路指導はより多様な選択肢があり、それをこちらが理解していくことが必要だと分かった。
      2020/12/2220代・中学校教員
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