- シリーズ発刊に寄せて
- シリーズの読み方
- まえがき
- 第1章 3月 涙と笑顔の最後の学活
- 〜全員が「このクラスでよかった」と思いながら笑顔で旅立つ〜
- 1 一人ひとりの生徒が仲間と自分と未来を肯定する
- 2 3年生の学級のゴールイメージ〜私が担任した学級の3月の様子から〜
- 1 どの生徒にとっても教室が居心地のいい場所になっている
- 2 全生徒が自発的に協力して学級生活を豊かにする活動をしている
- 3 ゴールイメージに至るための学級集団づくり
- 1 1学期は日常生活がきちんと機能する集団づくりをする
- 2 2学期は行事を通して団結力を高め生徒同士の心がつながる集団づくりをする
- 第2章 4月〜5月 生徒のやる気を共有し,最大限に活かし,伸ばし,育てる
- 〜学年団がチームとなる〜
- 1 始業式を迎える前に学年内での共通理解を図る
- 1 学年として指導をそろえる部分をはっきりさせる
- 2 最初の1週間の学活・総合の予定を把握しておく
- 2 学級開きから教師と生徒との信頼関係をつくり,生徒の安心感を高める
- 1 当たり前のことをほめ,認め,励ますことで安心感を生む
- 2 2年生までのことはリセットする
- 3 やる気を共有して,集団としての雰囲気を高める
- 3 リーダー生徒に集団づくりの視点をもたせる〜席替えの班長会議から〜
- 1 席替えは担任の専権事項であることを知らせる
- 2 班長と担任で席順を検討する
- 4 全員参加で学級目標をつくる
- 5 学校管理下の自治的活動であることを教師も生徒も理解する
- 6 「憧れられる先輩」をスローガンにする
- 7 授業も集団づくりの時間だと心得る
- 1 生徒同士が関わる場面をつくる
- 2 生徒の意見を共有する場面をつくる
- 8 すべての行事を意図=糸で結び,効果的な集団づくりをする
- 1 前任校の場合
- 2 現任校の場合
- 9 学級通信で担任の愛と誠を示す
- 1 生徒と学級のよいところを紹介する
- 2 教室の日常をそのままネタにする
- 3 教師としての信念・信条をストレートに書く
- 第3章 6月〜7月 部活動に打ち込み,2学期の行事に向けて準備をする
- 〜「憧れられる先輩」を目指す〜
- 1 部活動を通して学級・学年集団づくりをする
- 1 壮行会を活かす
- 2 担任として,部活動の目的を伝える
- 3 後輩から見た3年生の素適な姿をフィードバックする
- 2 集団づくりという面から考える学習・進路の指導
- 1 進路に関する情報を共有しつつ,協力して受験に向かう雰囲気をつくる
- 2 個人面談において,教師と生徒との信頼関係を築く
- 3 行事に向けての集団づくりを進める
- 1 リーダーとしての資格を明確に示す
- 2 リーダーの選出には教師の考えも反映させる
- 第4章 夏休み ちょっと一休みしたいところだけれども……
- 〜生徒とのつながりと1学期からの流れを切らさない工夫を〜
- 1 オープンハイスクール(高校への体験入学)の引率で笑顔で声をかける
- 2 暑中見舞いを送る
- 3 2学期の行事に向けてリーダーとつながる,リーダーを育てる
- 1 学年が一丸となって活動を進める
- 2 活動の枠組みをはっきりと示す
- 3 活動の見通しをもたせる
- 4 2学期に向けての準備をする
- 1 教室環境を整える
- 2 係や当番,日直の仕事を確認しておく
- 3 最初の学活で語ることを考えておく
- 第5章 9月〜10月 行事を通して「憧れられる先輩」になる
- 〜行事の面で中学校生活の総決算をする〜
- 1 行事を「通して」集団づくりをする
- 1 教師が行事の目的を強く意識する
- 2 行事の目的を生徒と共有する
- 3 練習時間をリーダーに預ける
- 4 リーダーの生徒とのミーティングを大切にする
- 5 リーダーの生徒に語らせる
- 6 本音を出し合うことが集団の質を高める
- 7 ピンチはチャンスと心得る
- 2 生徒が進路選択を意識して過ごす環境をつくる
- 1 進路希望調査と個人面談で進路に対する意識を高める
- 2 学年委員会の取り組みで家庭学習に対する意識を高める
- 第6章 11月〜12月 受験は団体戦という意識をもつ
- 〜気持ちを切り替えて学習に向かう〜
- 1 受験に向けての集団づくり
- 1 行事の直後に切り替える
- 2 「進路指導は生き方指導」を貫く
- 3 個人面談で生徒の思いをよく聞く
- 4 進路を決定するのは生徒と保護者であるということを常に意識する
- 5 勉強する上での悩みを共有し,アドバイスをおくり合う雰囲気をつくる
- 6 日々の生活に潤いをもたせる
- 2 生徒会選挙で「先輩の役割」を理解し,実践する
- 第7章 冬休み 面接練習でつながる
- 〜個との信頼関係を深める〜
- 1 書類作りを抜けなく行う
- 2 推薦入試に向けた面接練習を行う
- 1 担任との面接練習の前に
- 2 担任との面接練習
- 第8章 1月〜2月 義務教育最後の日々に対する愛惜の念をもたせる
- 〜二度と戻らない時間を意識させる〜
- 1 愛惜の念をもって生活する
- 1 カウントダウンカレンダーを作る
- 2 教師が,愛惜の念を伝え続ける
- 3 道徳の時間を大切にする
- 4 予餞会で3年生としての役割を自覚させる
- 2 志望校の決定をするのは,生徒と保護者である
- 1 生徒の進路は生徒と保護者が決めるものと肝に銘じる
- 2 合否の予想はデータに語らせる
- 3 進路指導の原点を忘れない
- 4 生徒が志望校を決めたら,あとは励まし続ける
- 第9章 3月 涙と笑顔の卒業式と最後の学活
- 〜一人ひとりの生徒にエールを送る〜
- 1 感謝の気持ちと愛惜の念をもって卒業式に臨むために
- 1 教科担当の先生方に感謝の気持ちを表す
- 2 「人生最後の○○」を意識させる
- 3 中学校生活の中でお世話になった方に手紙を書く
- 4 保護者への手紙を書く
- 5 道徳授業で卒業式の意義を考える
- 2 卒業式の練習に真剣に取り組む
- 1 有限の時間を愛惜する念を学年で共有する
- 2 教師の気合いを声で示す
- 3 生徒一人ひとりに宛てた手紙を書く
- 4 最後の学活を構想する
- 第10章 1年間を乗り切るコツ
- 1 何をするにも報連相で共通理解を図る
- 2 事務仕事も担任の大切な仕事である〜確実に伝える,期限を守る〜
- 3 ちょっとした仕事は即今着手でいく
- 4 教室環境を整える〜「机を定位置に置きます」〜
- 5 信念をもって指導する
- 第11章 学級集団づくりチェックポイント20
- 〜チームに育てるための定期点検リスト〜
- 1 学級集団づくりにも定期点検を
- 2 学級集団づくりチェックリスト
- 3 いつも自分のあり方を見つめながら学級を見る
- あとがき
まえがき
中学3年生の担任になったということを周りの人に話すと,決まって「受験とかいろいろあるし,大変ですねえ」というような返事が返ってきます。
実際,運動会,合唱コンクールなどの学校の各種行事や部活動,そして委員会活動は,3年生の活動ぶりがその成否を大きく決めますから,3年生の指導に当たる教師は,常に緊張感をもって指導に当たることになります。また,11月からは生徒たちの進路指導に当たる場面が多くなり,そして受験の書類作りにも抜けやミスがあってはいけませんから,事務仕事にも緊張感をもって取り組んでいかなければなりません。その上,部活動も指導しなければならず,確かに,「大変ですねえ」と言われるだけのことはあるのかもしれません。
しかし,私は「大変ですねえ」と言われるたびに,「そうかなあ?」と心の中で首をかしげます。
正直なところ,私は3年生の担任をするのが大好きです。中学校3年間の中で,生徒がもっとも濃密な時間を過ごすのが3年生であり,その濃密な時間を生徒とともに過ごし充実感を味わえるのも,また3年生の担任の特権だろうと思っているからです。
「憧れられる先輩」になろうと一所懸命にがんばる3年生は,とても可愛いなと思います。運動会のリーダーなど,1週間で堂々と後輩に指示を出すようになります。そして,団をまとめ,応援合戦をやり切った後の解団式で,勝っても負けても涙を流して団員をたたえる姿,純粋でいいなあと思います。合唱コンクールでは,「これが最後の合唱だ」という気持ちで学級が一つになり,1・2年生には出せないすばらしい歌声を響かせ,学級に戻れば涙を流してお互いをたたえ合う,これまた純粋でいいなあと思います。
そう,3年生は,学年で,あるいは学級で団結したときには,1・2年生の及びもつかないようなパワーを発揮し,感動の涙とともに大きく成長していくのです。私は,そんな感動的なシーンを,生徒とともに味わうことのできる3年生の担任が,とても好きなのです。
また,進路指導においては,生徒たちと面談を繰り返す中で,一緒に真剣に将来のことを考えたり,語り合ったりすることになります。2年生までは,まだ進路選択まで間があるせいか,なかなか真剣に将来の話をするということはできません。真剣な面談を繰り返す中で,生徒との心の距離が近くなっていきます。私は,生徒と一人の人間として,心を開いて真剣に語り合うことのできる3年生の担任が,とても好きなのです。
こんなふうに考えるとき,中学3年生の担任が一番やりがいのある楽しいポジションなのではないかと思うのです。
急いでつけ加えますが,楽しいと言っても,いつも笑っていられるというような質の楽しさではありません。日常生活の中では,「そんな姿を後輩に見せていいのか!」と叱ることもありますし,行事ではなかなか生徒の心に火がつかず,やきもきすることもあります。合唱活動が停滞しているときなど,悩みすぎて,ご飯の味がわからなくなるということもあります。
でも,そういういろんなことを生徒と一緒に乗り越えていくからこそ,充実感のある時間になるのではないかと思います。
そして,充実感のある時間を過ごしていく上で大切なのは,教師の「愛と誠と本気度と」に尽きると思っています。
しかし,「愛と誠と本気度と」があっても,それが生徒に誤解なく伝わるようにするポイントとかコツがあるように思います。
私は,これから3年生を担任する先生方とその学級の生徒たちが,それぞれの濃密な時間を過ごしてくれることを願っています。そのために,私自身の経験から,こんなふうに考えたら学級がまとまっていくのではないか,「愛と誠と本気度と」が伝わるのではないかと思うところを,少しだけ書かせていただきます。
以降に書くことが,少しでも皆さんのお役に立つことを願っています。
/海見 純
学級経営がうまくいかず悩んだ年もありましたが、この本とともに頑張っています。