- はじめに
- 第1章 数学の「よい授業」をつくるために
- 1 数学の「よい授業」を問い直す
- 1 数学の「よい授業」とは何か
- 2 「よい授業」を行うための要件
- 3 「よい授業」を行うための教材研究
- 2 数学の「よい授業」を求めて
- 1 主体的・探究的な活動の重視
- 2 「よい授業」の構築に向けた先行研究
- 3 「よい授業」に向けて
- 3 「よい授業」の規範的側面についての考察
- 1 教師のもつ「よい授業観」
- 2 本書における「よい授業」の規定
- 3 先行研究において指摘される「よい授業」
- 4 授業評価シートのチェック項目
- 5 教師の潜在的授業力―記述不可能な要件
- 第2章 数学の「よい授業」,27の授業例
- 授業例1 第1学年[正の数,負の数] いくつかの数の乗法
- 授業例2 第1学年[文字と式] 数量を文字で表す意味
- 授業例3 第1学年[文字と式] 文字式の意味
- 授業例4 第1学年[文字と式] 文字と式の利用
- 授業例5 第1学年[1次方程式] 係数に分数がある方程式
- 授業例6 第1学年[1次方程式] 1次方程式の利用
- 授業例7 第1学年[比例,反比例] 反比例のグラフ
- 授業例8 第1学年[比例,反比例] 比例の利用
- 授業例9 第1学年[空間図形] 円錐の側面積
- 授業例10 第1学年[空間図形] 立方体の切断面
- 授業例11 第1学年[資料の活用] 代表値
- 授業例12 第2学年[式と計算] 式の計算の利用
- 授業例13 第2学年[連立方程式] 連立方程式とその解
- 授業例14 第2学年[連立方程式] 連立方程式の利用(3元1次連立方程式)
- 授業例15 第2学年[1次関数] 直線の式の求め方
- 授業例16 第2学年[1次関数] 1次関数の利用
- 授業例17 第2学年[平行と合同] 図形の性質の確かめ方(証明の意味)
- 授業例18 第2学年[平行と合同] 図形の性質の利用(星形五角形)
- 授業例19 第2学年[三角形と四角形] 作図と証明
- 授業例20 第2学年[確率] いろいろな確率
- 授業例21 第3学年[平方根] 平方根の大小
- 授業例22 第3学年[関数y=ax2] 関数y=ax2の意味
- 授業例23 第3学年[関数y=ax2] 関数の利用
- 授業例24 第3学年[相似な図形] 三角形の相似条件の利用
- 授業例25 第3学年[円] 円の性質の利用
- 授業例26 第3学年[三平方の定理] 三平方の定理の利用
- 授業例27 第3学年[標本調査] 標本調査の利用
- おわりに
はじめに
数学の「よい授業」に焦点を当てるきっかけになったことを,2つ紹介します。
□授業を参観すると,「よい授業だった」「よい授業ではなかった」ということが話題になります。しかし,どこがよかったのか,よくなかったのかということを話していくと,互いに異なることを考えていたということが多くあります。私たちは,数学の「よい授業」をどのように捉えているのでしょうか?
□これまで海外の数学の授業を参観する機会があり,先生方と話し合う中で,日本の先生方は「よい授業だった」と評価しましたが,その国の先生方は「特によい授業とはいえない」という場面もありました。さらに,「日本の数学のよい授業とは?」と問われて,明確に答えられないことに改めて気づきました。数学の「よい授業」とはどのような授業なのでしょうか?
日本の算数・数学の授業が国際的に注目され,「よい授業」として評価されていますが,数学の「よい授業」とは何か,「よい授業」を行うための要件は何かなどについて改めて問い直す必要があると思われます。
このような課題意識のもと,私たちは平成25年度から研究を始めました。3年間のこの研究では,「よい授業」に関する日本のこれまでの算数・数学教育研究や授業実践の成果をまとめたり,北海道,静岡,埼玉,山梨での実際の授業を互いに参観する中で「よい授業」について検討を重ねました。
3年間の研究と授業実践を通して明らかになってきたことを,次ページのようにまとめました(詳しくは第1章1で説明します)。
1 数学の「よい授業」とは何か?
T 生徒が主体的に取り組み,考え続けている授業
・「おや?」「なぜ?」
・「なるほど!」「おもしろい!」
U 目標が適切に設定され,それが達成される授業
・「わかった!」「できた!」
2 「よい授業」を行うための要件は何か?
[要件@]本時の目標を明確にする
・目標を1〜2に絞る
・目標を簡潔かつ具体的に示す
[要件A]問題と問題提示の仕方を工夫する
・決定問題として提示する
・予想を取り入れる
・数値や図を工夫する
[要件B]考えの取り上げ方を工夫する
・机間指導を行い,意図的に指名する
・考えを促す発問を取り入れる
・思考の流れがわかる板書にする
数学の「よい授業」とは何かを問い直し,「T 生徒が主体的に取り組み,考え続けている授業」と「U 目標が適切に設定され,それが達成される授業」に絞りました。この2つのうち,一方だけが実現されても「よい授業」とはいえません。同時に達成される授業が数学の「よい授業」だと考えます。
そして,「よい授業」を行うための要件を@,A,Bの3つに集約しました。この3つの要件は,数学の「よい授業」をつくるためには欠くことができないものです。
本書は,第1章と第2章の2章構成になっています。
第1章(理論編)では,相馬,國宗,二宮の3名が,それぞれの視点から数学の「よい授業」に迫りました。
第2章(実践編)では,北海道,静岡,埼玉,山梨の先生方が,これまでの自分の授業を振り返って「よい授業だった」という授業例を紹介しています。執筆にあたっては,「よい授業」を行うための要件@,A,Bについてどのように検討して授業をつくったのか,そして実際の授業で「よい授業」のT,Uが達成されたかどうか考察しています。
数学の「よい授業」を問い直し,「よい授業」をつくるために,実践編の27の授業例(各4ページ)を活用していただければ幸いです。
なお本書は,相馬一彦・研究代表「算数・数学科における問題解決の授業の具現化に関する研究」(平成25〜27年度科学研究費補助金・基盤研究(C),課題番号25350183)をもとにまとめたものです。
最後になりましたが,研究の成果を単行本としてまとめる機会をいただき,出版にあたって大変お世話になりました明治図書出版編集部の木山麻衣子さんに厚くお礼申し上げます。
平成28年5月 編著者
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- 明治図書
- 分かりやすかった。2017/12/2220代・中学校教員
- 具体的な授業例がたくさんあるとよかった。2016/8/130代・中学校教員
- 日々の授業づくりに大変役立つ本でした。内容が具体的だったのもよかったと思います。2016/7/1450代・中学校管理職