- まえがき
- T 有田和正の授業力アップ入門
- ――エネルギー学習へのいざない
- 一 授業とは何か……その定義
- 二 発問・指示のつくり方
- 三 板書がうまくなるには
- 四 資料活用力の高め方
- 五 「はてな?」発見力を鍛える(1)
- 六 「はてな?」発見力を鍛える(2)
- 七 見る目の鍛え方
- 八 教材研究のコツ
- 九 学習技能のみがき方
- 十 プロ教師(職人)をめざして
- U 中部電力のホームページ
- 第1回 授業とは何か――その定義
- 第2回 発問・指示のつくり方
- 第3回 板書がうまくなるには
- 第4回 資料活用力の高め方
- 第5回 「はてな?」発見力を鍛える(1)
- 第6回 「はてな?」発見力を鍛える(2)
- 第7回 見る目の鍛え方
- 第8回 教材研究のコツ
- 第9回 学習技能のみがき方
- 第10回 プロ教師(職人)をめざして
- V 身近なところから「はてな?」を掘りおこす
- ○イントロ
- 一 固定観念をひっくり返す
- 1 電気をつけて歩いている人間
- 2 街の中の発電所
- 二 わかっている→実は「わかっていない」
- 1 電気って何だ?
- 2 「便利になった」とは?
- 3 電気はどこから
- 4 電柱に戸籍がある?
- 5 電柱の戸籍をさがそう
- 6 電気はどこからくるのか
- 7 スウェーデンでのこと
- 8 電気をつくってみよう
- 三 意表をつく――「思いもしないところにエネルギーが?」
- 1 子どもが考えるエネルギー
- 2 見えるエネルギー・見えないエネルギー
- 3 見方・考え方の発展
- 4 新しい見方・考え方
- 5 世界一小さな工場――それはどこにあるのか?
- (1)どうして葉っぱは緑色なのか?/ (2)葉っぱは世界一小さな工場・発電所/ (3)物を作ればごみが出る
- 6 葉っぱの二酸化炭素吸収率
- 7 見える学力・見えない学力
- 四 新鮮な出会いをさせる
- 1 静電気との出会い
- 2 風力発電の源は?
- 3 どのくらいの強さの風が吹くか
- 4 一八tもあるジャンボ機がなぜ空を飛べるのか?
- 5 発光ダイオードって何だ?
- W 体験させることの大切さ
- 一 電気をおこすことの大変さを体験させる
- 1 ルームランナーや自転車でやってみる
- 2 水族館に行って見る
- 二 「命を支えるエネルギー」について調べる
- 1 「病院」の電気の使い方
- 2 コンビニ・スーパーの電気の使い方
- 三 「食べる」ということ
- 1 「食べる」ことは「生きること」
- 2 旬がなくなっている野菜・果物
- 3 日本のフードマイレージ
- X エネルギー環境問題の教材づくりのヒント
- 一 身近なことから広い世界が見
- 二 新しい知識を得ら
- 三 調べ方を多様に工夫で
- Y エネルギー環境学習の面白さ
- 一 目のつけどころによって面白さがちがう
- 1 地球温暖化とはどんなことか
- 2 東京を四七%緑化すると四℃下がる
- 3 屋上緑化
- 4 東海道新幹線の工夫
- 5 こんな努力でCO2は減ったか
- 6 「暑さ」や「台風」を保存できないか
- 二 面白いエネルギー環境学習をどうつくり出すか
- 1 「うんこ」で発電?
- 2 ブレーキ性能で最高速度がきまる
- 3 森林をなくした国は滅びる
- 4 家庭ごみ発電
- 三 こわいアスベスト
- 1 アスベストとはどんなものか
- 2 どんなものに使われているか
- 3 どんな病気がおこったか
- 4 なぜ対策がおくれたか
- 四 温暖化防止はできるのか
- 1 温暖化防止法は?
- 五 結論と課題
まえがき
エネルギーにしても、環境問題にしても、社会科学習の中で進めることができる。それで、わたしはごく普通に指導をしてきた。特に力を入れ、面白い教材を開発して指導するというところまでやっていなかった。数年前、愛知教育大の寺本潔教授が、「エネルギー環境教育について、問題提起をしてくれないか」といってきた。
「特に力を入れて勉強しているわけではないので――」と、ことわろうとしたが、「どうしてもやってくれ」というので引き受けた。それから資料を集めて勉強し、何とか問題提起をすることができた。と同時に、これからは「エネルギー環境問題についてさけて通るわけにはいかない」と考え、ふだんから勉強するようになった。研究会にも参加して、勉強をした。わたしの探究心に火をつけてくれたのは、寺本教授である。
関西の方で『エネルギー環境教育あれこれ――関西版――』という冊子をつくることになり、わたしにも書くように、関西ブロックの事務局長である八幡悦央校長から要請があり、一九ページばかり書かせていただいた。この冊子は、「(財)社会経済生産性本部 エネルギー環境教育情報センター」から出版された。このセンターのはからいで、講演をさせていただいたり、授業をさせていただいたりして、勉強させてもらっている。
こうした折、中部電力から、ホームページ用に原稿を書くことと、日本教育新聞に原稿を書くように話があり、よい勉強の機会だと思い書かせていただいた。日本教育新聞に書いたものを見た明治図書の江部満編集長が、「一冊にまとめたらどうか」と声をかけてくださった。大して勉強してないけれども、これまでに書いたものや、何度か行った講演などをもとにして、本書のような形にまとめることが勉強になると考え、書かせていただいた。
第T章と第U章は、日本教育新聞と中部電力のホームページ用に書いたものである。今回のわたしの新しい授業は第V章以降である。
特に、第V章のところにわたしの主張したいこと、提案したいことが多く述べられている。社会科の指導でみつけた「固定観念をひっくり返す」「わかっている→実はわかっていない」「意表をつく」「新鮮な出会いをさせる」といった四つの「はてな?」発見法は、エネルギー環境問題においても同じであることを、具体的な事例をあげて説明した。ここに、わたしのエネルギーの多くを使った。
この第V章を、もっと面白くしたものが第Y章で、ここに「エネルギー環境学習の面白さ」を具体的に述べると共に、今問題になっている「アスベストのこわさ」についても述べている。面白くなるかどうかは、「目のつけどころ」によって全くかわってくる。例えば、列車のスピードがアップされたのは、モーターがよくなったからではなく、ブレーキのよいものができたからであることなどがそうである。逆の発想をすることだと思う。
わたしが驚いたことは、「うんこ」で発電していることや、東京を四七%緑化すると四℃も気温が下がること、などである。発電に「うんこ」まで活用するようになっているのである。そして、東京という大都市が、いかにエネルギーを発散し、温暖化の原因をつくっているかということである。
まだ、勉強不足であることは承知の上で本書をまとめた。それは、契機をつくってくれた中部電力や日本教育新聞、それに、寺本教授や八幡校長へのお礼の意味をこめて、「今の状況」を書くことにした。しかし、一番の契機は、やはり明治図書の江部満編集長である。書くように直接すすめてくれたからである。皆様に厚くお礼を申し上げたい。
二〇〇七年六月 /有田 和正
<授業とは> 「これだけは何としても教えたい」という内容を、子どもが「学びたい・調べたい・追究したい」というものに「転化」すること。
教えること「ねらい」を鮮明にもつ。しかし、「教えてはならない」
<発問・指示> 「これだけは何としても教えたい」という「ねらい」にそって発問・指示は考え、出される。 ブレないことが大事。何回言っても同じでなければならない。
発問で多様な反応を引き出し、それを「集約・焦点化」する
<板書> 目習いと手習い
「何を書いて」「何を書かないか」
<資料活用> 資料というものは「あるもの」ではなく「つくるもの」……つくった人の視点を読み取らないと、その本質は分からない。
読み取りの基本……@題 A出典・年度Bたて軸・よこ軸 C変化の様子 D変化の大きいところの理由を考える。
[プロ教師の条件]
@指示がうまく、子どもを引きつけることができる
Aユニークな発問・指示ができる
Bオリジナルの教材をたくさんもっている
Cユニークな対応の技術をもっている
D子どもを引きつけ、子どもが理解できる板書ができる
←子どもの基盤……意欲が溢れていて、常に明るい
[「はてな?」発見法]
@固定観念をひっくり返す
A意表をつく
Bわかっていない⇒実はわかっていな
C新鮮な出会いをさせる