中学校音楽「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価完全ガイドブック

中学校音楽「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価完全ガイドブック

「指導と評価の一体化」のための学習評価の具体がわかる!

そもそも「主体的に学習に取り組む態度」とは何か。理論的背景の詳説と、評価規準や評価基準等、評価の具体に迫ることで、これまで現場で抱かれていた疑問に応えていきます。音楽科の特質に応じた「主体的に学習に取り組む態度」を育む提案授業の学習指導案も必見。


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ISBN:
978-4-18-239223-8
ジャンル:
音楽
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 144頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年5月7日
備考:
サポート情報

Contents

もくじの詳細表示

はじめに
「主体的に学習に取り組む態度」の評価はなぜ難しいのか
第1章 「主体的に学習に取り組む態度」を理解する
1 「主体的に学習に取り組む態度」は「学びに向かう力,人間性」の一部である
1 教科教育で育てたい3つの資質・能力について
2 「主体的に学習に取り組む態度」とは「自らをモニタリングしながら学びを継続させる力」である
3 「主体的に学習に取り組む態度」を身に付けた生徒はどう学ぶのか
〜エレキベースを始めたAさんの学習プロセス〜
4 「主体的に学習に取り組む態度」の特殊性
〜汎教科的な資質・能力を教科の特性に合わせて涵養する〜
5 「主体的に学習に取り組む態度」を育て評価する上で気をつけたい3つのポイント
2 「主体的に学習に取り組む態度」を支える諸理論@
内発的動機を育てる「自己決定理論」とは
1 自己決定理論とは何か
2 外発的動機づけと音楽科は相性が悪い
3 「主体的に学習に取り組む態度」を支える諸理論A
自らの学びを調整する「自己調整学習」とは
1 自己調整学習とは何か
2 自己調整する力をどう育てる?
第2章 「主体的に学習に取り組む態度」を評価する
1 なぜ評価する?
1 評価の目的と具体
2 子どもや保護者との信頼関係が何より重要
2 どう評価する?
1 評価の観点=資質・能力を捉える視点
2 評価規準=評価対象の具体化
3 評価基準=評価規準につける目盛り
3 評価にまつわる疑問あれこれ
1 「やる気はあるが能力がない生徒」をどう評価する?
2 「能力があるから練習しない生徒」をどう評価する?
3 「主体的に学習に取り組む態度」と合唱コンクールの関係性
4 ワークシートで「主体的に学習に取り組む態度」を評価できる?
第3章 「主体的に学習に取り組む態度」を涵養する
1 音楽科教育の特殊性
1 従来型の授業は「主体的に学習に取り組む態度」を育ててきたか
2 音楽科教育はこれまで「良さや美しさ」を継承させてきた
3 音楽科における課題価値
4 「文化の創造」を視野に入れた教育課程の重要性
5 子どもを当事者にする
6 「文化の継承」の意義
2 「主体的に学習に取り組む態度」を育むための授業構造
1 「文化の創造」的な創作活動の具体
2 「音楽は自由だ」という言説の危険性
〜正確なフィードバックを目指して〜
3 「主体的に学習に取り組む態度」を育て評価する学習指導案サンプル
1 題材の概要
〜「主題動機労作」の技法に当事者意識を持たせる《運命》の授業〜
2 学習指導案「《運命》を参考にグループで音楽を作ろう」
3 「主体的に学習に取り組む態度」の評価について
おわりに

はじめに

 「主体的に学習に取り組む態度」の評価はなぜ難しいのか


 本書は,『中学校音楽「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価完全ガイドブック』という書名です。平成29年に告示された学習指導要領で評価の観点が従来の4つから3つへと変化したことで,現場の先生方は指導と評価に際して混乱されていることと思います。特に「主体的に学習に取り組む態度」については,評価の方法論について様々な議論があり,どうにも取り扱いが難しい。筆者が担当する大学の授業でも,学生の理解が深まりにくいトピックです。

 では,なぜ「主体的に学習に取り組む態度」の評価は難しいのでしょうか。それは端的に言って,「主体的に学習に取り組む態度」という観点から評価しようとしている「学びに向かう力,人間性」という資質・能力の実態が不明瞭だからではないでしょうか。3つの資質・能力のうち「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」については,音楽科の特質に合わせてその実態をイメージすることが比較的容易です。したがって,この2つの資質・能力については,該当する評価の観点ごとに評価規準を作成して評価し,授業改善をしながら学期末の評定に反映させるというプロセスも明瞭なものになりやすいのです。一方で,「学びに向かう力,人間性」については,それが「資質・能力」であるということさえ意識されていないのが現状です。「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」の獲得の過程で副次的に獲得される何かであるかのような誤解があるように思われます。ともすれば「やる気」のような刹那的な感情と混同されている感さえあります。生徒たちに育むべき「学びに向かう力,人間性」の具体がわからない状態で「主体的に学習に取り組む態度」の評価について議論することは,本末転倒であると言わざるを得ません。

 後に詳細に解説しますが,我々が「主体的に学習に取り組む態度」という観点で評価しようとしてるのは「学びに向かう力,人間性」という資質・能力から「人間性」の要素を除いた力,すなわち「学びに向かう力」だと解釈されます。音楽科の文脈で言い換えれば「自分で自分をレッスンする力」という表現も可能かと思います。そのように考えれば,「主体的に学習に取り組む態度」が単なる「やる気」を評価するものではないことがわかります。我々は,このような基礎的な理解を積み上げるところから始めなければなりません。したがって,本書は「主体的に学習に取り組む態度」および「学びに向かう力,人間性」を音楽科の立場からどのように理解するのか,という点にフォーカスしています。第1章『「主体的に学習に取り組む態度」を理解する』では,文部科学省や中央教育審議会等のオフィシャルな文章をもとに,「主体的に学習に取り組む態度」が何を意味しているのか整理しています。加えて,「主体的に学習に取り組む態度」やそれに対応する「学びに向かう力,人間性」の理論基盤となっている自己調整学習や自己決定理論についても概論的に解説しています。上述したように,「主体的に学習に取り組む態度」という観点について理解するためにはそれが評価しようとしている「学びに向かう力,人間性」についても深く理解しなければなりません。そのような意図で第1章では「主体的に学習に取り組む態度」の理論的背景を中心に取り扱っています。

育むべき資質・能力について理解したところでようやく評価についてあれこれと議論することができます。第2章『「主体的に学習に取り組む態度」を評価する』では,評価の具体について触れています。ここでは,評価の観点や規準と基準といった基礎的な内容を改めておさらいするとともに,「やる気はあるけど『技能』が身に付かない生徒の『主体的に学習に取り組む態度』をどう評価する?」「ワークシートで『主体的に学習に取り組む態度』を評価することは可能?」等,読者の方々が抱きそうな疑問に先回りする形で原稿を書きました。現場で生じる実際的な問題に対応するための考え方を紹介する内容になっているので,評価に行き詰まったらこの章に戻ってきてください。

 第3章『「主体的に学習に取り組む態度」を涵養する』では,音楽科という教科の特質に応じて「主体的に学習に取り組む態度」を育むための基本的な考え方について論じています。「指導と評価の一体化」という言葉が示唆するとおり,評価について考えるためには指導それ自体に対して内省的である必要があります。「『主体的に学習に取り組む態度』の評価」の前提にあるのは,「『主体的に学習に取り組む態度』を育み得る授業」です。子どもたちが主体的に音楽を学びたくなるような授業をしなければ「主体的に学習に取り組む態度」は涵養されません。では,従来型の音楽科の授業は子どもが真に主体的になれる構造になっていたでしょうか。読者に,公教育としての音楽科教育のあり方を抜本的に捉え直す視座を持っていただくために第3章を設けました。そして,第3章の最後には,本書で述べてきた内容を全て詰め込んだ指導案のサンプルを掲載しています。題材としてはベートーヴェンの交響曲第5番《運命》を教材にして主題動機労作の技法について教えるものですが,結果的に,「いわゆる普通の鑑賞の授業」とはかけ離れた領域横断的でどちらかというと提案性の高い指導案になりました。「評価についての書籍で特殊な指導案を見せられても日々の授業に取り入れづらい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし,「主体的に取り組む態度」の評価が難しいのは,「学びに向かう力,人間性」を資質・能力として目的的に育成するような授業がほとんどなかったからです。従来型の慣例的な授業では「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」を育てることはできても「学びに向かう力,人間性」については副次的に涵養されることを期待するのみでした。もちろん「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」を目的的に取り扱う授業自体を否定するわけではありませんが,「学びに向かう力,人間性」や「主体的に学習に取り組む態度」に積極的にフォーカスした授業があってもいいはずです。その意味で,本書に掲載された指導案はこれまでになく「主体的に学習に取り組む態度」を中心的に取り扱ったものになっています。読者のみなさまにはこの指導案をたたき台として批判的に読んでいただき,各現場のローカルな事情に応じて改変しながら大いに活用していただきたく思います。


  2023年5月   /長谷川 諒

著者紹介

長谷川 諒(はせがわ りょう)著書を検索»

 博士(教育学),音楽教育学者。神戸大学,三重大学,関西大学等複数の大学で非常勤講師として教員養成に携わりながら,即興演奏ワークショップの講師としても活動している。活動の概要はSNSやYouTubeで随時発信中。2021年度より日本音楽即興学会の理事長を務めている。

 高校を卒業後,広島大学教育学部に入学して音楽教育学を専攻しそのまま同大学の教育学研究科で修士(教育学),博士(教育学)を取得した。博士論文では米国の音楽教育史を対象とするに取り組み,その成果を日本音楽教育学会,日本教科教育学会等等が発行する学会誌で発表している。

 博士号取得後は,音楽教育哲学の視点から即興演奏の教育的価値を探究する研究に取り組んでいる。

 在学中から鈴峰女子短期大学や比治山大学,エリザベト音楽大学等で音楽教育学に関する非常勤講師をしつつ,クラシックサキソフォンの演奏活動や音楽教育学研究を継続した。

 卒業後は香川大学特命准教授や神戸大学特命講師を歴任し,現在に至る。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。

このたびは本書をご購入いただき、誠にありがとうございました。

さて、初版第1刷の一部に、誤りがございました。
大変申し訳ございませんが、つきましては、こちらの誤植訂正用データファイルをご参照のうえ、ご利用賜りますようお願い申し上げます。

今後はこのようなことがないよう、細心の注意を払ってまいります。
何卒ご容赦賜りますようお願い申し上げます。

誤植訂正用データファイル(ファイル名:239223_teisei.pdf/サイズ:358KB)

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