- はじめに
- 本書の使い方
- 第1章 図画工作授業がうまくいく!指導アイデア
- [指示]授業中の指示の方法
- 1 教材の見せ方で子どもの集中を促す
- 2 発問のし方で子どもの集中を促す
- 3 教師が失敗してみせる
- 4 野外活動は事前にイメージをもたせる
- [つなぐ]子どもどうしをつなぐ方法
- 5 返し方の工夫で子どもの言葉を引き出す
- 6 子どもどうしが相互鑑賞したくなる指導アイデア
- 7 ゲーム化で「見たい・見せたい」を引き出す
- 8 ナイスカードで常時相互鑑賞を促す
- [材料・道具]材料・道具の提示方法
- 9 共同絵の具はコミュニケーションを高める
- 10 ICTを使った繰り返し学習で技能の定着を図る
- 11 授業で子どもたちと小刀を使う
- 12 準備や片づけの手順をわかりやすく示す
- 13 図工室の3つのルールを必ず守る
- 14 活動・材料を小出しにする
- [評価]評価・みとりの方法
- 15 みとりと評価で子どもを伸ばす
- 16 子どもたちの作品から学びのプロセスを知る
- 17 完成は自分で決めさせる
- 18 「先生できました」を一度認める
- 19 図画工作と実生活をつなぐ
- 第2章 ポイントを押さえてカンタン追試!題材ネタ50
- 造形遊び
- 1[低学年]最新モードコレクション!
- 2[低学年]秋のおべんとうばこ
- 3[中学年]からだで影絵
- 4[中学年]色砂をつくろう
- 5[高学年]色水コーディネート
- 6[高学年]紙の表情
- 絵
- 7[低学年]折り曲げた紙からつくる絵
- 8[低学年]ウキウキお絵かき!
- 9[低学年]ポンポンタワー
- 10[低学年]はんぶんでチョウ!
- 11[中学年]虹色の花
- 12[中学年]透明感を考えよう
- 13[中学年]春ぶち
- 14[高学年]お気に入りの風景
- 15[高学年]刷りから版画
- 16[高学年]墨でアート
- 17[高学年]わたしのレモンはどのレモン?
- 工作
- 18[低学年]カップを転がしたら見えて来たよ!
- 19[低学年]ふわふわゴーゴー
- 20[中学年]パラレルワールド
- 21[中学年]お花紙でうちわ
- 22[高学年]木の塊からどうなる?
- 23[高学年]カッターナイフで「光の塔」
- 24[高学年]わくわくメッセージプレート
- 25[高学年]自分の紋章
- 立体
- 26[低学年]僕の紙様 立ったよ!
- 27[低学年]くるくるツリー
- 28[低学年]むにゅむにゅべんとうできあがり!
- 29[中学年]小さな紙で広がる世界
- 30[中学年]成長し続ける形
- 31[中学年]つな木,ぐんぐんぐん!
- 32[高学年]形の中に広がる宇宙
- 33[高学年]けずって彫りだせ
- 34[高学年]動き出すねんどくん
- 35[高学年]絵の前の2人
- 鑑賞
- 36[低学年]まん丸紙から生まれたよ
- 37[低学年]色がつくるイメージ
- 38[低学年]わごむでポン!
- 39[低学年]ブクブクの国
- 40[中学年]ポーズでミッケ!
- 41[中学年]プラ板模写修行
- 42[高学年]シンメトリーのよさを味わう
- 43[高学年]色の表情
- 44[高学年]砂遊びから枯山水へ
- 映像・メディア
- 45[低学年]学校のゆるキャラ
- 46[低学年]くるくるものがたり
- 47[中学年]サンゴのメッセージ
- 48[中学年]手描きパラパラアニメ
- 49[高学年]この角度でみたら
- 50[高学年]箱ちゃんの意外な展開
はじめに
ピーター・レイノルズの描いた「てん」という絵本があります。絵の苦手な子どもがこのお話の主人公です。美術(図画工作科)の時間に絵を描こうとせず,授業が終わっても画用紙は真っ白いままです。そこへ教師がこんな言葉かけをします。
「吹雪の中の北極熊ね」
そして,画用紙の真ん中に「てん」を打つように指示します。子どもは投げやりに「てん」をひとつだけ描きます。次の日,その「てん」だけの絵が額縁に入れて教室に飾られていました。それ以降,子どもは「てん」をテーマに次々と絵を描きます。そして「てん」を描き続けることを通して,自分の価値に気づき自信となって人間的に成長していくのです。
この「吹雪の中の北極熊ね」との言葉かけは,「子ども一人一人の表現への思いや願い」を認める共感的なものです。授業の中で「描けなかった」子どもの葛藤に寄り添うものです。子どもの存在を認めようとする教師のまなざしによって,子どもが自信を持ち,自らの意思で動き出したわけです。図画工作科は,「一人一人の価値や理由」に寄り添うことができる教科といえます。
その図画工作科も,社会の要請に応じで少しずつ形を変えてきました。現行学習指導要領では,教科目標に「感性を働かせて」という文言が加わりました。これを指導する我々教師から言い換えますと,「造形活動を通して,子ども一人一人の感じ方,表し方を十分に働かせられるようにすること」と捉えることができます。これからの社会を生き抜いていく子どもたちには,「かけがえのない自分」という自信が必要です。その自信を培うために,一人一人の感性や感覚を思いきり働かせる場を保障してあげる必要があるのです。
一方,感性や創造性といった数値で現れにくい力を培い育てる教科であるため,教師にとっては悩ましい教科ともいえます。造形遊び等では,どう一人一人をみとるか評価が難しいとの声も聞こえてきます。図画工作科のもつ課題といえるでしょう。
本書は,子ども一人一人の感性や感覚,自分なりの見方や考え方を十分に発揮できることを願って題材を選定しました。また,各題材ごとに「材料準備のポイント」「道具の使い方のポイント」「授業のポイント」等,見やすくわかりやすくお伝えできるよう心がけました。前述の図画工作科の課題解決と先生方の日頃のご実践に少しでも役立てればと思います。
2017年1月
筑波大学附属小学校図画工作科教育研究部 /仲嶺 盛之・北川 智久・笠 雷太
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