- まえがき
- 第1章 学力を高めるのは愛を「見える化」する教師
- やる気を引き出す全員参加の授業づくり 理論編
- 1 学力を高める教師
- 2 学力を支える学力基礎
- 3 学力の3要素
- 4 やる気を引き出す戦略
- 5 雰囲気に最も強く影響するもの
- 6 やる気を引き出す安全基地の存在
- 7 やる気を引き出す教師の授業
- 「やる気を引き出す全員参加の授業づくり〜協働を生む教師のリーダーシップ〜」の使い方
- ※第2章の実践編は,下記の内容を中心にして,各執筆者が,それぞれの主張を展開しています。
- @子どものやる気を引き出す考え方
- ▲子どものやる気を引き出す上で大事にしている基本的な考え方,ポイントなどについてまとめました。
- A授業において,子どものやる気を引き出す具体的な取り組み
- ▲子どものやる気を引き出すことができた具体的な実践を,はじめて取り組む方にも追試できるよう,わかりやすく解説しました。
- ▲成功させるコツ,また失敗しそうなところと失敗してしまった際のリカバリーの方法についても,ポイントをまとめています。
- 第2章 やる気を引き出す全員参加の授業づくり 協働を生む教師のリーダーシップ
- やる気を引き出す全員参加の授業づくり 実践編
- 1 教師の本気で,子どものやる気に火をつける
- 1 「教師になりたくてなったわけではない」からのスタート
- 2 教師の本気を見せる
- (1) 1対1で授業をする
- (2) 全員の学力を上げる
- (3) 音読で感動を
- 2 やる気と技能をアップさせるタイムリーな声かけ
- 1 一人一人にあった声かけを全員に
- (1) 説明上手でつながる
- (2) 全員に声をかけると決めてしまう
- 2 子どものやる気を引き出す授業づくり
- (1) 体育科:単元「短きょり走とリレー」
- (2) 音楽科:歌唱活動
- (3) 音楽科:リコーダー
- (4) 心を込めて声をかける
- 3 教師の考え方・在り方でやる気を引き出す
- 1 どのような授業を目指すのか〜ゴールイメージをもつ〜
- 2 教師としての考え方と在り方
- (1) 子どもたちをよく見ているということ
- (2) 子どもたちには力があるということを信じること
- (3) 子どもたちに期待し,その期待を語ること
- (4) やわらかな構えでいること
- (5) 叱るよりもほめる,ほめるよりも認めること
- (6) 謝れること
- 3 わかるようになった,できるようになったことを実感できる授業をする
- (1) その時間,その単元で学ぶ学習事項を明確にする
- (2) 目標と評価を一体化する
- 4 「空気」を読んで,「雰囲気」をつくる
- 〜国語「音読」と「創作」で子どもとつながる・つなげる〜
- 1 「放課後の遊びを決める」ように授業を展開していく
- (1) 6年生の4月
- (2) 5年生の4月
- (3) 授業を軸に子どもたちの関係を築く
- 2 実践@「空気読み」
- (1) 「お前,空気読めよ!」
- (2) 空気を読ませる前に
- (3) 「空気読み」の始め方
- (4) 「空気読み」の段階
- (5) 「空気読み」のコツ
- (6) 「空気読み」の効果
- 3 実践A「創造しよう」
- (1) 詩の授業
- (2) 創造しよう
- (3) 子どもは詩人
- 4 放課後の会話のように
- 5 グッとくるやりとりで子どものやる気を引き出そう
- 1 授業は子どもたちのやる気を引き出すチャンス
- (1) 授業,楽しんでいますか?
- (2) 授業でのやりとりで,子どもたちとつながろう
- (3) 笑顔で上機嫌!
- (4) 気を付けること
- (5) 時々立ち止まって考えよう
- 2 やりとりを楽しもう
- (1) ダジャレで面白雰囲気を
- (2) 反応が悪かったときこそチャンス
- (3) グッズや服装は魔法の道具
- (4) 擬音語・擬態語をうまく利用しよう
- (5) 雑談でつながる
- (6) 子どもたちと競争しよう
- (7) ワクワク感は隠すことから
- (8) 板書でわざと間違える
- (9) 指名にもユーモアを交えて
- (10) 声や表情にも変化を添えて
- (11) 自分のキャラを生かそう
- (12) 子どもが答えを間違えたときや答えられなかったときに
- (13) 言葉のやりとりを楽しもう
- (14) 何かになりきる
- (15) 一人一人とコミュニケーション
- 6 真剣勝負の授業で育てる
- 1 子どもの力を信頼して,つながる・つなげる
- (1) 授業で子どもと信頼・尊敬の関係を築く
- (2) つながる授業に外せないポイント5
- 2 やる気スイッチオン!の授業づくりの視点
- (1) 子どもに新たな視点を与える授業〜俳句の鑑賞を例に〜
- (2) 考える価値のある問題を出す授業〜算数の難問を例に〜
- (3) みんなが楽しめるルールを考える授業〜ボール運動を例に〜
- (4) 価値観の違いを考える授業〜道徳を例に〜
- 7 「言いがかりをつけるようにほめる」
- 〜ほめる・多様化させる・リンクさせる〜
- 1 「言いがかりをつけるようにほめる」〜多様性の担保〜
- 2 「言いがかりをつけるようにほめる」
- (1) まず,ほめる。全員をほめる。理由は後から
- (2) 「ほめる」ことは,「評価基準」の設定である
- (3) 0スタートで子どもを見る
- (4) 多様化することで,相反することをほめることができる
- (5) 多様なほめを授業に活かす
- (6) 「言いがかりをつけるようにほめる」場面の実際
- 3 「言いがかりをつけるようにほめる」その先に〜リンクさせる〜
- 8 トラブルを表面化させてつながりをつくる
- 1 1000 回つながるよさ
- (1) 教科と学級づくりの時間をあわせて取る
- (2) いつもしていることが大切なこと
- 2 段階的に,安心につなげる「規律」から自主につなげる「意味」へ
- (1) まずは外発的でも,規律を守ろうとする姿勢を
- (2) 意味の理解があるから,工夫が生まれる
- 3 A子が仲間に入って輝きだした学級
- (1) 先生限界宣言でつながることの意識化
- (2) 班内役割分担で共同体意識をもたせる
- (3) 自分の意見を表明させ,つながる準備をさせる
- (4) 協力課題で楽しみながら,つながり方を教える
- (5) 教師が率先して貢献モデルを見つけ,つながる意味を示す
- (6) 厳しさをもって貢献度を振り返らせる
- (7) 発言の方法を変えて,さらにつながる相手の価値化を図る
- (8) 活用・説明などの全員達成課題を設定する
- 9 「つなぐ〜つながる」授業デザインで,子どもたちのやる気にアクセスする
- 1 学習意欲とその継続を生み出すために
- 2 つながりを意識してやる気にアクセス
- (1) 単元を貫く課題意識のめばえを(2年 言語科・国語科)
- (2) つながりを意識した授業〜「できた事実」の積み重ね(5年 国語科)
- (3) 協働を促進するホワイトボードの活用(1年 算数)
- 〜「考える楽しさ」「友達の考えを見聞きするよさ」を実感できる子どもを目指して〜
- 10 「大丈夫,一人じゃないから」を一人残らず伝える
- 1 子どもの視点に立って考えてみよう!
- (1) 一人ではできないことも,みんなと一緒だったらできるかもしれない(一斉授業)
- (2) 教師色の「メガネ」を外して子どもを見る(個別指導)
- 2 子どもとつながり,やる気を引き出す授業づくり
- (1) やる気が広がるチャンスを逃さず見つける
- (2) 不適応を起こす子には「先生は自分の味方」と思わせる
- (3) どの子どももみんな大切
- (4) 安心感はやる気への近道
- あとがき
まえがき
皆さん,本気で学力を高めようと思うならば,何に最も力を注がなくてはならないでしょうか。教材の研究ですか,教え方ですか,学習者を理解することですか。これからの時代は,学習者に関する研究だと考えられます。誤解のないようにお伝えしておきますが,教材研究や教授法研究に意味が無いと言っているのではありません。しかし,優良な授業コンテンツがネットで配信されるような時代に,これまでのように何をどのように教えるかということは,相対的に意味が薄れることが予測されます。それよりも,どのように条件整備をしたらそうしたコンテンツに子どもたちが積極的にアプローチするようになるかということに関する研究が,さらに必要となってくると言いたいのです。
子どもたちが,積極的に学習にアプローチするためには何をしたらいいのでしょうか。発問や指示といった教え方の工夫やネタの面白さで引きつけることだけでは不十分と言わざるを得ません。教え方やネタの工夫でやる気を出すことができるのは,ある程度学習に向き合う力を持った子どもたちです。しかし,教室には,そうしたものだけでは学習に向き合うことが困難な子どもたちが一定数いることは,プロの実践者の皆さんならご存知のはずです。
「一人残らずわかる授業」「全員参加の授業」を目指すならば,別な発想と技術が必要です。学力を高めるには,およそ3つのアプローチがあります。「学習の質を上げること」,「学習の時間を増やすこと」,そして「学習への意欲を高めること」です。これからの授業づくりにおいて最も大事なことは何でしょうか。主体的な学びを重視する時代ですから,間違いなく「学習への意欲を高めること」でしょう。この3つのアプローチはかけ算構造です。どんなに質の良い学習内容にたくさん触れさせても,意欲のない子どもには入っていきません。意欲が0だったら,学習をしません。そして,マイナスの場合は,学習から遠ざかることすらあります。これまでわが国の教育は,授業の質を上げること,たくさん学習させることについては様々な工夫をしてきました。しかし,それが学習意欲を喚起することにコミットできていなかったのではないかと思います。では,子どもたちはどうしたら学習への意欲を持つのでしょうか。詳しくは本編をお読みいただきたいと思いますが,少しだけ述べると,いかに安心感を保証するかです。私たちは,安心感を感じたときにやる気になります。そして安全が確保されたときに,挑戦するのです。
本書で小中学校,合計20名の精鋭達が一貫して大事にしているのは,授業における「つながりの確保」です。「授業はコミュニケーションである」と自覚し,あらゆる手で子どもたちとつながろうとしています。そして,また,様々な学習活動で子ども同士をつなげようとしています。彼らがやろうとしていることは,一人一人とつながり,そして同時に子ども同士をつなげることで,教室を安心感のあるコミュニティーにしているのです。
彼らの教室で,なぜ,学習に向き合いにくい子どもたちが学習に向き合うことができるのか,それは,教室が,学習者にとって安心できる場になっているからです。それでは,具体的にどのようにして安心感のある環境設定をしているのでしょうか。本書には有効な実践が満載です。
授業でつながり,授業でつなげ,子どもたちのやる気を引き出す具体的実践の数々をご堪能ください。
/赤坂 真二
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- 明治図書
- 実践と理論があり、納得して進めることができる。2017/3/930代・小学校教員
- いろいろな先生方の実践が、とても生き生きと描かれているのが大変勉強になります。「全員参加」と一言で言っても、そのアプローチはさまざまだし、教師一人一人が工夫していくものなのだと実感させられます。2016/11/630代・小学校教員