- まえがき
- 第1章 アクティブ・ラーニングを一歩踏み込んで理解しよう
- 1 子どものどんな姿がアクティブなんだろう
- (1)学びに向かう気持ちと確かな学力
- (2)一斉講義とアクティブ・ラーニング
- (3)改めて,なぜアクティブ・ラーニングなんだろう
- 第2章 協同学習とアクティブ・ラーニング
- 1 グループ学習が協同学習ではない
- (1)協同学習の「進め方」より「考え方」の理解を
- (2)協同の意味をとらえなおす
- (3)協同学習の効果
- 2 なぜ協同学習が効果的なのだろう
- (1)協同が意欲を高める
- (2)学び合いが確かな力を育てる
- (3)アクティブな学びにつながる協同学習の仕かけ
- 第3章 アクティブ・ラーニングの授業づくり
- 1 学びのマップをもたせよう
- (1)受け身を強いる授業になっていないか
- (2)マップの効用
- (3)めあてをわかるように知らせる
- (4)どんな道筋で学ぶかわかるように知らせる
- (5)その学びの価値を知らせる
- (6)単元を見通すためのマップの事例
- 2 アクティブ・ラーニングの授業展開
- (1)授業モデルはあくまでモデル
- (2)アクティブな授業展開のためのいくつかの工夫
- 3 アクティブ・ラーニングの授業の終わり方
- (1)確かな授業の振り返りをさせたい
- (2)振り返りの視点をどう設定したらいいか
- (3)振り返りの生かし方
- 第4章 協同的学級経営をベースに置いたアクティブ・ラーニング
- 1 協同的な学級ではどんな活動が見られるのか
- (1)高め合う学び合いの姿
- (2)協同的な学級集団づくりの基本
- 2 学級全体の学び合いによる授業の進め方
- (1)学級全体の学び合い
- (2)クラスの課題で協同を促す
- (3)机配置の工夫
- (4)意見交流のさせ方の工夫
- (5)教師のまとめをどうするか
- 3 スモールグループを生かした協同学習
- (1)グループを使えば学び合いは起きる?
- (2)グループへの課題を明確に示す
- (3)個人思考で,話し合いへの仕込みを
- (4)話し合いを成功させるための支援の仕方
- (5)グループ編成の考え方と工夫
- (6)効果的な全体交流を進めよう
- (7)教師のかかわり方
- 第5章 アクティブな学びを創る協同学習実践
- 1 ジグソー法による授業づくり
- (1)ジグソー法の進め方と背景にある考え方
- (2)ジグソー法の課題づくりと集団づくり
- (3)ジグソー法を用いた授業事例
- 2 LTD学習法による授業づくり
- (1)授業への導入法
- (2)LTDの効果を高める態度とスキル
- (3)LTDの効果
- (4)LTD話し合い学習法の実践例
- 3 看図アプローチによる授業づくり
- (1)看図アプローチとPISA型学力
- (2)「ビジュアルテキストを読む」ということ
- (3)ビジュアルテキスト 読み方の作法
- (4)根拠のある想像を広げる
- (5)看図アプローチのレパートリーとしての看図作文
- (6)看図作文の基本発問と絵図の条件
- (7)看図作文もアクティブ・ラーニング
- (8)看図アプローチへの発展
- 4 マインドマップを活用した授業づくり
- (1)理論編
- (2)マインドマップを活用した学習
- 5 グループ・プロジェクトによる調べ学習の授業づくり
- (1)グループ・プロジェクトとその理論的背景
- (2)プロジェクトを設計する
- (3)グループ・プロジェクトの効果
- (4)グループ・プロジェクトの幅広い実践可能性
- 6 単元見通し学習(LULU)による授業づくり
- (1)単元見通し学習の進め方
- (2)単元見通し学習がなぜ効果があるのか
- (3)単元見通しモデルを使った協同学習の授業事例
- 第6章 アクティブな学びを支える教師集団をつくる
- 1 教師集団づくり
- (1)教師の協同づくり
- (2)教師の協同にどうせまる?
- 2 研修のポイントはどこにあるか
- (1)研究テーマ設定の工夫
- (2)若手の成長支援
- (3)「研究的実践」の文化づくりが大事
- (4)参加度を高める研修の進め方
- あとがき
まえがき
アクティブ・ラーニングは,大学教育の改善への取り組みから使われはじめたことばです。それが高校の実践でも,さらには小・中学校の実践でも,重要な改善の視点として取り上げられるようになってきました。
私は教育心理学の視点から,協同学習の実践的な研究をし,年間50〜80の小・中高校の実践づくりにかかわってきました。学校における実践づくりの文化に多くふれてきた経験から,今回の,アクティブ・ラーニングへの関心が高まってきていることに対して,大変興味深く思っていることがあります。
それは,これほど「ラーニング=学習」が表立って取り上げられたことはかつてなかったのではないかということです。文部科学省が提唱する実践づくりは「習熟度別指導」「少人数指導授業」などのように「指導」の観点で一貫してきました。学習指導は「指導」という教師の活動に重点を置き,子どもたちの「学習」に実質的に目を向けることが少なかったことを表していないでしょうか。
教育心理学者の私には,これまでの実践に向けた教育の理論は,教師中心に組み立てられており,学ぶ側の視点が弱かったと思えるのです。子ども主体の授業というようなことばだけは,教育理論でも実践の場でも語られてきましたが,教育は「教え授ける」教師の仕事という理解は,根本のところでは変わっていなかったように思います。アクティブ・ラーニングが打ち出されて,やっと「学習」という,子どもの活動を明確に軸に据えた考えが出てきたという一種の感慨さえあります。
教育心理学は,発達心理学,学習心理学,認知心理学などに基礎を置き,成長する本人の例から教育を研究してきましたから,教育心理学者が開発した学習指導の例は「プログラム学習」「発見学習」「有意味受容学習」「完全習得学習」そして「協同学習」のように,終わりが「学習」なのです。
アクティブ・ラーニングは,学習指導の本来の主役である子どもの活動に目を向けるための,とてもいい手がかりとなることばです。ただ,そこに実質の「学び」を入れなければ,これまでと同様,形ばかりの「教える教育」に立ちもどってしまいます。
本書は,協同学習を理解することでアクティブ・ラーニングを実現しようという内容になっています。協同学習とアクティブ・ラーニング,2つも学ぶのかと思う必要はありません。アクティブ・ラーニングという発想は,これまでの協同学習の研究と実践という裏づけがあってなされたものなのです。後で詳しく説明しますが,協同学習は技法ではなく,非常に幅広い教育理論なのです。グループ学習が協同学習ではありません。柔軟さをもち,さまざまな実践的工夫を組み込んでいくことが可能な理論です。私は,協同学習の理論がアクティブ・ラーニングを支える基礎理論だと考えています。
アクティブ・ラーニングの魅力は,それは協同学習も同じなのですが,その出発点に「どういう子どもにしたいか」という目標論があることです。大きな変化のある時代の中で,自立し,共生社会を支える力のある子どもを育てようという目標が先にあり,そのための実践論が考えられたということです。教師の仕事も「教え」から「育ちの支援」へと変わります。協同学習の実践でも一貫して追求してきた,教育文化の大きな転換の機会だといえるでしょう。
本書は,小学校・中学校・高校の教師だけでなく,大学の教員にもその実践づくりに役立つ内容となっています。具体的な事例を多くつけました。ただ,それらは実践者が応用すべき事例であって,まねするものではありません。子どもの状況,教育内容,そして教師自身の個性を考えて最適の授業づくりを自分自身で進めていく,アクティブな教師となる手がかりととらえてほしいのです。
/編著者
とても役立ちました!
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