- はじめに
- 第1章 どの子も主役になれる! これからの特別支援教育
- 1 特別支援教育の動きを知ろう
- 2 障がいに応じた指導で授業改善をしよう
- 3 ユニバーサルな授業をするための知識とスキルを身につけよう
- 第2章 合理的配慮の視点でつくる! その子にピッタリの授業アイデア31
- 1 特別支援学校編
- 1 視覚障がい
- 事例1 算数科「広いって何?狭いってどういうこと?」
- 事例2 理科「魚ってどうやって泳ぐ?花のつくりってどうなっているの?」
- 事例3 図画工作科「触って確かめ,足の裏で感じるすごろく遊び」
- 事例4 国語科「タブレット端末を活用した見る力を高める指導」
- 事例5 社会科「資料を読み取りやすくする工夫」
- 事例6 保健体育科「動きを伝える工夫」
- 2 聴覚障がい
- 事例7 国語科「文脈からことばの意味を推論する」
- 事例8 国語科「吹き出しを用いて登場人物の心情を考える」
- 事例9 国語科「登場人物同士の関係を客観的に捉える」
- 事例10 算数科「たしざん」
- 事例11 算数科「ひきざん」
- 3 知的障がい(小学部)
- 事例12 エプロンシアター「くいしんぼうゴリラ」の再現あそび
- 4 知的障がい(中学部)
- 事例13 サーキット形式を取り入れた「桃太郎」の活動
- 5 知的障がい(高等部)
- 事例14 就労支援に向けた授業の工夫
- 6 肢体不自由
- 事例15 やりとり手段の獲得を目指した基礎的コミュニケーション指導
- 事例16 コミュニケーション意欲向上のための実用的コミュニケーション指導
- 事例17 支援ツール活用によるスムーズなコミュニケーションを目指した指導
- 7 病弱
- 事例18 自分の病気についての知識・理解
- 事例19 心理的な安定をつくる活動
- 事例20 自立活動の視点も取り入れた教科指導
- 8 重度重複障がい
- 事例21 ICTの活用で因果関係の理解を促す授業
- 2 学校間連携編
- 1 幼稚園 巡回相談の活用で支援の効果がアップ
- 事例22 発音に課題のある幼児への支援
- 事例23 問題となる行動が多い幼児への支援
- 2 小学校@ 特別支援学校コーディネーターと連携した授業モデル
- 事例24 「パワーボール」で自己理解を深め自尊感情を高める授業
- 3 小学校A 通常学級と支援学級をつないだ実践
- 事例25 通常学級の集団へのかかわりを見据えた取り組み
- 4 小学校B 発達障がいのある子どもの集団での授業づくり
- 事例26 「サーキット運動」で集団学習
- 5 小学校C 障がい特性に応じた「分かる」「楽しい」授業づくり
- 事例27 「サーキット運動遊び」で気持ちの安定をはかる
- 事例28 「ひまわり遠足」で子どもたちのチャレンジ精神を育てる
- 6 中学校 通常学級と支援学級が連携した授業づくり・集団づくり
- 事例29 体験活動を取り入れた「大根の味比べ」
- 7 高等学校 ユニバーサルな視点での環境づくり
- 事例30 すべての生徒が集中して学習できる教室環境
- 事例31 生徒たちの「学びたい」を助ける便利グッズ
- 第3章 初めてでもよく分かる! 赤ペン解説付き学習指導案の実物モデル
- 1 視覚障害がいの授業展開と指導案
- 保健体育科「フロアバレーボールの指導」─誰もが対等に競技でき対等な関係をつくる
- 2 聴覚障がいの授業展開と指導案
- 算数科「対称的な図形」─「できる」自信をもたせる
- 3 知的障がいの授業展開と指導案
- 生活科「足湯あそび」─基本的生活習慣を身につけさせる
- 4 肢体不自由・重複障がいの授業展開と指導案
- 自立活動「みる・きく」─外に気持ちを開き表現を引き出す
- 5 病弱の授業展開と指導案
- 国語科「ともこさんはどこかな」─病気に対する自己管理・学力・自信をつけて前籍校に戻す
- 6 発達障がいの授業展開と指導案
- 算数科「お買い物をしよう」─お金を使って数のかたまりや等価関係を意識させる
- 第4章 これだけは知っておこう! 特別支援教育における用語・略語
- 1 特別支援教育分野全般
- 2 視覚障がい・聴覚障がい分野
- 3 知的障がい・自閉症等分野
- 4 肢体不自由・病弱・重複障がい分野
- 5 発達障がい分野
- おわりに
- 執筆者・協力者紹介
はじめに
特別支援教育がスタートして平成26年度には7年を経緯するところとなります。この間の特別支援教育の体制整備について,文部科学省の実態調査結果からは,次のことが見られます。特別支援教育コーディネーターの指名配置,学校巡回システム,教員研修の推進,個別の教育支援計画,個別の指導計画など,小・中学校等での整備が進んできたものの,今後の課題としては,幼稚園や高等学校,大学等における発達障がいの支援方策や通常の学級における支援を必要とする子どもを含めたユニバーサルな授業展開の工夫の必要性を求めているということ。さらに,特別支援学校等においても,障がいのある子どもへの授業改善の工夫をする等の指導実践を図ることなども挙げられています。
特別支援教育を進める原動力として,特別支援学校の役割と期待があります。それは,従来から培ってきた障がい教育におけるノウハウや指導方法などを提供することで,地域の学校等に対して支援センター的な役割を果たすことを期待されているからです。障がいのある子どもの指導については,発達障がいのある子どもを含め対象となる特別支援教育の拡大に伴って,授業の工夫や教材・教具の開発等,特別支援学校が内外に発信する役割が求められています。
この間,学校教育現場においては世代交代が大きく動いています。団塊世代とそれ以降の年代層である経験者の大量退職に伴い,初任者をはじめとする経験の浅い教員の大量採用時期をすでに迎えています。障がいのある子どもへの教育に対しては,従来から培ってきたノウハウや指導の在り方などを次世代につないでいくことの重要性が叫ばれています。このような命題に対して,筆者は平成19年2月に明治図書より『はじめての特別支援教育―これだけは知っておきたい基礎知識―』(中村忠雄・須田正信編著)を発刊し,特別支援教育を担うすべての教員や教員を目指す学生に対して新たなニーズに応えるべく内容面を編集し検討したつもりであります。しかしながら,新たな動向として国における障がい者制度改革推進会議による「インクルーシブ教育システム構築」の提言が盛り込まれました。このことは,すべての学校における課題として,特別支援教育の推進が求められ,すべての教員に改めて一人ひとりに応じた指導の充実や授業改善とその工夫を求めたものに他なりません。
今回の企画としては,特別支援教育を推進していく際に重要となる個人や集団に応じた授業の工夫や授業改善の在り方に資するような内容を検討しました。それらの実践事例を紹介することで,今後の授業改善に役立てることができるよう,各学校で先進的に実践されている先生方から授業の工夫や教材の活用事例を提供していただきました。
特別支援学校においては,視覚障がい,聴覚障がい,知的障がい,肢体不自由,病弱教育の授業実践を提供していただきました。明日から役立てられる指導事例を収集することで,学習指導案の作成の仕方や授業の工夫などをどのように行うかなど,図表等を入れ視覚的に分かりやすい内容の工夫をしたつもりであります。
また,幼稚園,小学校,中学校,高等学校の実践については,発達障がいのある幼児児童生徒の授業支援に資するための授業展開や教材の工夫,ユニバーサルとなる授業の在り方について実践を行っている先生方から提供をしていただき,特別支援学校のコーディネーターと地域の学校教員との連携実践についても編集を行いました。
是非,初めて特別支援教育にかかわる人や大学等で特別支援学校教員免許取得を目指す学生にも,本書を手に取って参考にしていただくことを願っています。
平成26年8月 /編著者代表
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- 明治図書