- 刊行のことば
- はじめに
- T 学校経営の基本概念
- 1 学校経営
- 2 学校管理
- 3 学校組織
- 4 学校の自主性・自律性
- 5 学校に基礎をおいた経営(School-Based Management)
- 6 リーダーシップ
- 7 教育理念
- 8 学校教育目標
- 9 学校の経営戦略
- 10 マネジメント・サイクル(Plan-Do-See)
- 11 学校経営計画
- 12 協働
- 13 学校評価
- 14 アカウンタビリティ
- 15 学校経営組織
- 16 ラインとスタッフ
- 17 校務
- 18 校務分掌
- 19 意思決定
- 20 経営参加
- 21 職員会議
- 22 校内委員会
- U 学校制度
- 1 学校
- 2 学校の公共性
- 3 教育を受ける権利
- 4 教育の機会均等
- 5 教育の内的事項と外的事項
- 6 教師の教育権
- 7 親の教育権
- 8 特別権力関係論
- 9 学校自治
- 10 学校慣習法
- 11 教育条理
- 12 学校の設置者
- 13 設置者管理主義
- 14 設置者負担主義
- 15 教育委員会
- 16 学校管理権
- 17 学校管理規則
- 18 指導行政
- 19 指導主事
- 20 学校規模
- 21 通学区
- 22 学校統廃合
- 23 学級編制基準
- 24 教職員定数
- 25 教職員構成
- V 学校経営の理論
- 【効率性の論理】
- 1 科学的管理法
- 2 経営過程論
- 3 官僚制
- 4 官僚制の逆機能
- 5 目標管理
- 6 インプット・アウトプット
- 7 最適化論
- 8 効率性
- 9 合理性
- 10 学校の効果(有効性)
- 11 学校経営の近代化
- 12 重層構造論・単層構造論
- 【感情の論理】
- 13 ホーソン実験(人間関係論
- 14 フォーマル組織とインフォーマル組織
- 15 モラール
- 16 モチベーション
- 17 組織風土
- 【統合の論理】
- 18 学校経営の現代化
- 19 専門職組織
- 20 オープン・システム
- 21 社会システムモデル
- 22 イノベーション・組織開発
- 【新しいパラダイム】
- 23 組織理論のパラダイム転換
- 24 ルース・カップリング・モデル
- 25 主観主義・批判理論
- 26 ミクロポリティクス
- 27 組織文化
- 28 組織学習
- 29 シンボリック・アプローチ
- 30 自己組織性
- 31 エスノグラフィ
- 32 臨床的アプローチ
- W 教職員
- 【教師・教職】
- 1 教師観
- 2 教師=専門職論
- 3 教員の地位に関する勧告
- 4 反省的実践家としての教師
- 5 教師文化
- 6 同僚性
- 7 教師の役割葛藤
- 8 教師のプライヴァタイゼーション
- 9 教師の多忙化
- 10 教師のメンタルヘルス(バーンアウト)
- 【教師の資質能力の向上】
- 11 教師の資質能力
- 12 職能成長
- 13 実践的指導力
- 14 得意分野を持つ個性豊かな教員
- 15 教員養成制度
- 16 教育実習
- 17 現職教育・研修
- 18 初任者研修制度
- 19 校内研修
- 20 行政研修
- 21 教育研究団体
- 22 教育研究集会(ワークショップ)
- 23 教員の海外派遣
- 24 長期研修の手続き
- 【職務内容】
- 25 校長の職務
- 26 教頭の職務
- 27 教諭の職務
- 28 主任の職務
- 29 事務職員の職務
- 30 養護教諭の職務
- 31 学校医
- 32 司書教諭(学校図書館)
- 33 学校管理職
- 34 充てる職
- 【人事】
- 35 教師の服務
- 36 教師の分限
- 37 教師の懲戒
- 38 任 用
- 39 教師の適格性
- 40 特別免許状・特別非常勤講師制度
- 41 休職・辞職・定年
- 42 校長の意見具申
- 43 勤務評定
- 44 キャリア・ラダー
- 45 メリット・ペイ
- 【勤務条件】
- 46 勤務時間の割振り
- 47 時間外勤務
- 48 女子教職員の保護
- 49 給与制度
- 50 公務災害補償制度
- 51 共済組合
- 52 教師の労働基本権
- 53 職員団体
- 54 職員団体の交渉
- X 教育活動の経営
- 【教育の目的・目標】
- 1 自己教育力
- 2 新学力観
- 3 個性の尊重
- 4 基礎・基本の重視
- 5 生きる力
- 6 ゆとり
- 7 心の教育
- 【教育課程】
- 8 教育課程=カリキュラム
- 9 隠れたカリキュラム
- 10 教育課程の編成
- 11 学習指導要領
- 12 教育課程行政
- 13 教育内容の厳選
- 14 選択履修(選択学習)
- 15 学年・学期
- 16 授業日
- 17 授業時数
- 18 指導計画
- 19 モジュラー・スケジューリング
- 20 学校裁量の時間
- 21 総合的な学習の時間
- 22 国際理解教育
- 23 情報教育
- 24 環境教育
- 25 福祉教育
- 26 ボランティア
- 27 自然体験
- 28 日の丸・君が代
- 29 同和教育
- 【道徳・特別活動】
- 30 道徳教育
- 31 特別活動
- 32 学校行事
- 33 クラブ活動・部活動
- 34 勤労体験学習
- 【教科書・教材】
- 35 教科書
- 36 教科書制度
- 37 補助教材・副読本
- 38 教材と著作権
- 39 教育機器
- 40 インターネット
- 【教育評価】
- 41 教育評価
- 42 通信簿
- 【教授・学習の組織】
- 43 教授・学習過程
- 44 授業研究・授業分析
- 45 ティーム・ティーチング
- 46 一斉指導・一斉学習
- 47 個別指導
- 48 学級経営
- 49 学級編成
- 50 学級担任制・教科担任制
- 51 習熟度別編成
- 52 学年制・無学年制
- 53 学年経営
- Y 児童・生徒の管理
- 【児童・生徒の就学・在籍管理】
- 1 就学義務・指導・猶予・免除
- 2 就学援助
- 3 特殊教育諸学校と障害児教育
- 4 海外子女教育・帰国子女教育
- 5 入学・編入学・転学
- 6 進級・卒業
- 7 原級留置・落第
- 8 出席督促
- 9 出席停止
- 10 指導要録
- 【生徒指導】
- 11 児童・生徒の問題行動
- 12 いじめ
- 13 学級崩壊
- 14 不登校・登校拒否
- 15 保健室登校
- 16 生徒指導
- 17 心の居場所
- 18 学校教育相談・学校カウンセリング
- 19 スクールカウンセラー
- 20 スクールソーシャルワーカー
- 21 適応指導教室
- 22 学校外施設への通学
- 23 児童・生徒の健全育成
- 24 校外生活の指導
- 25 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育
- 26 校則・生徒心得
- 27 児童・生徒の懲戒
- 28 体罰の禁止
- 29 児童の権利に関する条約
- 30 少年矯正機関・児童福祉機関
- 31 少年法
- 【進路指導】
- 32 進路指導
- 33 内申書
- 34 偏差値
- 35 業者テスト
- 36 職業紹介
- 【学校保健・給食・安全】
- 37 健康教育
- 38 学校保健
- 39 健康診断・健康相談
- 40 学校伝染病
- 41 学校給食
- 42 学校安全
- 43 学校事故
- 44 日本体育・学校健康センター
- 45 危機管理
- Z 学校事務
- 1 学校事務
- 2 学校事務のOA化
- 3 学校表簿
- 4 学校要覧
- 5 学校基本調査
- 6 教育財産の管理
- 7 学校予算
- 8 私費会計
- 9 学校運営費標準
- [ 施設・設備
- 1 学校施設・設備
- 2 学校環境
- 3 教室
- 4 学校建築
- 5 インテリジェント化
- 6 オープンスペース
- 7 施設・設備の災害防止
- 8 避難所としての学校
- \ 開かれた学校経営
- ―学校・家庭・地域社会の連携―
- 1 学校評議員制度
- 2 教育情報の公開(開示)
- 3 情報発信
- 4 生徒参加
- 5 父母の学校参加
- 6 家庭の教育力
- 7 PTA
- 8 学社連携・学社融合
- 9 コミュニティ・スクール
- 10 公開講座
- 11 学校開放
- 12 学校の目的外使用
- 13 余裕教室
- 14 地域教育経営
- 15 コミュニティ教育
- 16 地域の教育力
- 17 第4の領域
- 18 地域人材の活用
- 19 青少年教育施設
- 20 社会教育施設
- ] 社会変化の中の学校
- 【学校をめぐる社会の変化】
- 1 少子化
- 2 情報化社会
- 3 生涯学習社会
- 4 リカレント教育・リフレッシュ教育
- 5 男女共同参画社会
- 6 学歴社会
- 7 学校格差
- 8 受験競争
- 9 学習塾
- 10 学校化社会
- 【教育制度改革】
- 11 学校週5日制
- 12 単位制高等学校
- 13 総合学科
- 14 単位互換制度
- 15 中高一貫教育
- 16 中等教育学校
- 17 飛び入学(教育上の特別措置)
- 18 高校入試改革
- 19 大学入試改革
- 【学校観の転換】
- 20 学校論
- 21 学校の正当性の危機
- 22 オールターナティブ・スクール
- 23 臨時教育審議会
- 24 教育の自由化論
- 25 学校のスリム化
- 26 「合校」構想(経済同友会)
- 27 真の学び舎
- 28 リストラクチャリング(再構造化)
- 29 教育の卓越性
- 30 学校選択制
- 31 チャータースクール
- 32 ホームスクーリング
- 執筆者一覧
はじめに
今,学校経営の姿が大きく変わろうとしている.
これまで中央集権的な規制や教育委員会の過度な関与によって学校の主体的な取り組みは制約され,学校側にも横並び意識があった.しかし,教育における規制緩和や地方分権化を提言した中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」(1998年9月)では,「学校の自主性・自律性の確立」とそれに伴う「学校の責任」が強調された.また新学習指導要領では,各学校が創意工夫を生かした特色ある教育を展開できるよう授業の1単位時間や授業時数の運用が弾力化され,カリキュラム編成も各学校の裁量に委ねられる「総合的な学習の時間」が創設された.まさに各学校の経営力が,校長の教育的リーダーシップや教職員の創造性が否が応でも問われる時代がやってきたのである.
新たな時代を迎えて,学校経営論も変わらざるを得ない.今日の学校は多くの課題に直面している.いじめ・不登校・学級崩壊といった子どもの危機的状況,教師の多忙化やバーンアウト,生きる力の育成,情報教育,国際理解教育,環境教育…等々である.これらの課題や状況は既成の学校経営論の枠組みに収まりきらない広がりを呈している.見通しのよい安定した時代においては,学校内部の問題に終始する学校経営論で十分であったかもしれない.だが,当たり前だった学校の存在意義さえ大きく揺らぐ変化の激しい時代,先行き不透明な時代にあっては,学校内部の問題を考えるにしても,学校をとりまく社会変化,家庭や地域社会などの環境との関係性を視野に入れたオープンな視点を有する学校経営論が必要不可欠である.
その一方で,こうした時代は,次から次へと押し寄せる新たな課題や新たな言葉に流され振り回される危険性を孕んでいる.しかし重要なことは,各学校が「学校とは何か」「学校が果たす役割は何か」を自ら問い直し,自らの教育理念・ヴィジョンを明確にし,地に足の着いた責任ある学校づくりを展開することである.そのためには,これまでの実践や研究のどこを受け継ぎ,どこを変えていくべきか,「不易(時代を超えて価値あるもの)」と「流行(時代の変化とともに変えていく必要があるもの)」を冷静に検討する姿勢が求められる.
以上に鑑み,本書は,学校経営の現状と展望を正確かつ体系的に把握するために有効なキー・コンセプトを整理することを目的としている.そこで編集にあたっては,次の方針をとった.
(1) 中央教育審議会答申をはじめとする,新しい教育改革の提言・動向に対応した用語を積極的に取り入れる.
(2) これまで蓄積されてきた実践や研究に関する用語を精選して取り入れる.
(3) 経営に関する基本概念や視点を,閉鎖性から開放性へ,他律から自律へ,硬直さから柔軟さ・緩やかさへという教育経営学の理論的展開を踏まえて体系的に整理する.
(4) 教育の仕事は教師の役割で,経営の仕事は管理職の役割だという固定観念を払拭する.
本書は10章から構成されている.まずT〜V章は学校経営の基礎論である.「T 学校経営の基本概念」では,個々の学校を単位とする学校経営を理解する上で最低限踏まえなければならない用語を取り上げた.「U 学校制度」では,学校経営を基礎づける法的・制度的な枠組みに関する基本用語を取り上げた.とりわけ現在,地方分権・規制緩和・学校の自由裁量の拡大を目指す制度改革の動きがかつてないほど活発化している.「V 学校経営の理論」では,学校経営を見る視点や原則について,教育経営学の理論展開を踏まえて編集した.
次いで,W〜[章は学校経営の各論である.「W 教職員」「X 教育活動の経営」「Y 児童・生徒の管理」「Z 学校事務」「[ 施設・設備」は,学校において主要な経営実践領域となっているものを選び構成している.これらの章では「教師のメンタルヘルス」や「学級崩壊」など教職員や生徒の現在を読み解く用語,そして21世紀の教育の在り方を提言した中央教育審議会答申やそれを受けて告示された新学習指導要領で強調された新しい用語を積極的に取り入れた.
最後に\・]章は,学校をとりまく環境を視野に入れ,学校経営の課題と展望を扱った章である.「\ 開かれた学校経営―学校・家庭・地域社会の連携―」では学校と保護者・地域社会との関係について,「] 社会変化の中の学校」では学校をめぐる社会の変化,教育制度の変革,そして学校像そのものの転換に関する用語を取り上げた.
本書が,現場実践に従事している人たち,教職を志望している学生たち,さらに,学校経営研究に携わっている人たちの目にふれ,今後の実践や研究にいささかなりとも役立てば幸いである.
最後に,本書の執筆にあたっては,第一線で活躍されている専門家・実践者多数の方々にご執筆いただき,また,出版に際しては明治図書出版株式会社の江部満氏,樋口雅子氏,多賀井壽雄氏にお世話いただいた.心から厚く御礼を申しあげます.
2000(平成12)年7月1日 /岡東 壽隆
編集者 /林 孝 /曽余田 浩史
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- 明治図書