- まえがき
- T 知的なクラスつくり
- 1 入学式のメッセージ
- 2 涙くんさようなら
- 3 始業前の十五分は黄金の時間
- 4 低学年 四月にしつけたいこと
- 5 低学年 四月の給食開始のポイント
- 6 楽しい席替え
- 7 入学後一年生の実態調査と保護者会
- 8 知的な楽しい授業が一番
- 9 一学期の生活指導いろいろ
- 10 一年生におすすめグッズ
- U 楽しいクラスつくり
- 11 低学年が仲良しになる指導
- 12 先生は遊び会社の社長です
- 13 友だちつくり 最初の一歩はクラスの遊び
- 14 係活動に挑戦!
- 15 二年生岡級実況中継
- V 低学年は荒れてなんかいられません
- 16 二学期の荒れを防ぐ集中チェック項目
- 17 天才は荒れてなんかいられません
- 18 活躍の場を意識して作ろう
- 19 低学年の子の思い込みにご注意!
- 20 五色百人一首で人生修業?
- 21 悪口文化の復活をひそかに願う
- W 低学年は漢字が大好き
- 22 漢字紙芝居は一年生新学期の強い味方
- 23 一年生は漢字が大好き
- 24 漢字は、成り立ちの絵と漢字文化と指書きで
- 25 尿検査、紙芝居、自習、どんな時にも漢字のお話
- 26 漢字のお話
- 27 論語のお話
- X 保護者とスクラム組んでいこう
- 28 「へそパシー」
- 29 「あー楽しかった」と懇談会に言わせよう
- 30 一年生黄金の三日間細案
- あとがき
まえがき
一年生を持った時のことだ。漢字の読みを覚えた子ども達はいろいろな面で賢くなった。こちらが思った以上の力を出して伸びていってくれた。一番驚いたのは三学期のパソコン室でのことだった。パソコンも初めからローマ字入力を教えた。
子ども達は教えてもいないのに自然にローマ字入力を始めたのだ。その時の学級通信を紹介する。
「土曜日が一年生のパソコン室の日です。パソコンの操作にもなれたので、そろそろローマ字入力を教えよう、と思い二月から始めました。最初はひらがながやっとでした。そのうちに面白いことを始めました。教えてもないのに漢字変換をし出したのです。一人が始めるとあっという間に漢字変換は広がりました。パソコンローマ字入力を教えた四回目、全体指導で漢字変換を教えました。自分の名前を漢字で書いています。ひらがながやっと打てるようになった子が漢字に直しているのです。お母さんや先生なんて当たりまえのように漢字です。」
Aさんが、三学期にパソコンで打ったお手紙をくれた。
「岡 惠子先生へ いつも勉強をおしえてくれてありがとう。算数も楽しいし、国語もたのしいよ。あと、生活もたのしいなあ。図工もたのしいし、あと……ないっけ。二年生になってもわすれないよ。Aより」(原文)
生活指導でも漢字が登場した。学校の池に一年生が石や葉っぱを投げ入れていて困るので、しっかり指導してくれと生活指導主任から言われた。次のように子ども達に話した。
「池に何がいるかわかりますか?」「金魚」「こい」と答えがあった。
「そうだね、金魚がいるよね。」そう言って「金魚」と板書した。漢字カードで読んでいたので「あ、魚だ。」「金曜日の金だ。」と、うれしそうな声がした。
「これが、きんぎょという漢字です。」
この後、「池に石や葉っぱを投げ入れては金魚がかわいそうだね。ついついやってしまった人はいますか。」と聞いた。漢字を勉強した後は、なぜかみんな素直だ。正直者が何人も「投げてしまいました。」と手を挙げた。
最後はこれで決まり!
「みんな正直でとっても偉い。でも、もうやってはいけませんよ。【子曰く 過ちて 改めざる これを過ちという】、だからね。もうしなければいい。」と。
保護者も応援してくれた。あるお母さんがくれた手紙だ。「この子は一年生になってからぐんぐん漢字を読み、書けるようになった子です。(保育園では一切していませんし、お母さんも読ませたり書かせたりしていなかった子です。字はあまり上手くないです。)百人一首は一番強くなりました。毎日の学校での出来事を楽しそうに教えてくれるのを見ていると本当によいクラスだなあと感じました。自慢の友だちがたくさん出来たようです。百人一首もほとんど覚えているのでかなわないのがわかっていながら、何度も相手をさせられました。漢字に興味を持ち、目に入る漢字は何でも聞いてきました。……」
本書は漢字読み先習の他に朝の論語の実践も紹介している。論語は生きていく上での大事なことを教えてくれている。有無を言わせず、悪いものは悪いと低学年のうちから声に出して覚えこませたかったからだ。低学年の指導がその後の学校生活を支えると考えたからだ。低学年の子ども達が論語を暗唱している姿はかわいらしく頼もしく思えた。漢字読み先習とともに実践していただけたら幸いである。
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- 明治図書