- まえがき
- T なぜ、今「エネルギー教育」か
- 1 最大限の省エネルギー推進をするということ
- 2 エネルギーに関する意識が高いこと
- <授業プラン1〜21>
- U 停電(シミュレーション)から発電源まで
- 1 もし停電になったら? T(わが家編)…5年
- 2 もし停電になったら? U(わが町編)…5年
- 3 電気はどこからくるの…5年
- 4 発電源調査隊(どんな仕組み?)…5年
- V 発電源から資源と環境まで
- 5 発電源(どんな特徴があるの?)…6年
- 6 省エネの方法を追求しよう…5年
- 7 お米は石油製品です?…5年
- 8 一日の電気の使われ方…6年
- 9 一年間の電気の使われ方と電気機器…6年
- 10 地球温暖化はだいじょうぶ?…6年
- 11 ベストミックスをさがそう…6年
- W いろいろな発電所
- 12 発電所はどのようにして電気を起こしているか…4年
- 13 電気のピンチヒッター、揚水式水力発電所…4年
- 14 石炭を粉にして燃やす石炭火力発電所…4年
- 15 ホントにだいじょうぶなの? 原子力発電所…4年
- 16 マグマからの贈り物、地熱発電所…4年
- 17 風の力で電気をつくる風力発電所…4年
- X どの子もわかるエネルギーの授業
- 18 身のまわりにある電気製品を調べよう…3年
- 19 電気製品の消費電力を調べよう…3年
- 20 わが家のむだづかいをなくそう…3年
- 21 電気の速さは新幹線よりも速いの?…4年
- Y エネルギー教育のカリキュラムをつくる
- 1 エネルギー教育カリキュラム作成のポイント
- 2 第3学年のカリキュラム
- 3 第4学年のカリキュラム
- 4 第5学年のカリキュラム
- 5 第6学年のカリキュラム
- あとがき
まえがき
「石油はなくなるの?」
「なくなるさ、新しくできるもんじゃないんだから」
「石油は、新しくできないの? 石油は、どうやってできたの?」
「石油は、いつなくなってしまうの?」
これは、子ども達の会話である。
この会話の内容について、どれだけの現場教師が具体的な数値を示して、答えられるだろうか。
石油に限らない。石炭も液化天然ガス(LNG)もいつまでもあるものではない。資源には限りがある。
資源に限りがあることは、何となく分かっている。しかし、何となく分かっていても、具体的に数値で示せる現場教師はどれぐらいいるだろうか。
さらに、日本のエネルギー輸入依存度についてはどうだろうか。石油の輸入依存度は九九・七%、石炭は九六・〇%、LNGは九六・五%、そして、ウランについては一〇〇%なのである。しかも、日本の発電電力量の内訳で、石油、石炭、LNG、そして、原子力を合計すると、全体の八七・六%(一九九七年度)を占めるのである。
石油の輸出国であった中国は、現在では輸入国である。インドネシアでさえ、輸入国になろうとしているというのが現実である。子ども達の近未来に予想されるエネルギー資源の枯渇問題を含めて、エネルギー問題は国家の進路を左右するほど重大であるということは周知の事実である。
今、多くの学校で新教育課程に係わる話し合いが行われている。特に、総合的な学習の時間については初めてのことであるから様々な意見が交換されている。二〇〇〇年から移行措置に入り、二〇〇二年から完全実施であるから当然である。
その話し合いの場で、管理職が次のように話した。
「エネルギー問題は、大人が考えなければならない問題であり、このようなことは子どもの教材にはならない」
そうだろうか。
大人が考えなければならない問題であることは間違いない。問題はその後の部分まで考えていないということである。エネルギー問題を考え、それをどのように子ども達に教えていくのかが大事なのである。そこまでやってこそ子ども達の未来に対する大人の責任を果たすことができるのである。現場教師にその責任がある。
教材にならないのではなく、教材にしていかなければならないのである。
向山洋一氏が『現代教育科学』507(明治図書)の冒頭で次のようにいう。
エネルギーについて、どの程度理解しているかという高校生の国際比較がある。
「原子力発電のしくみを簡単にのべなさい。」
この程度の易しい内容である。
日本の高校生は、百点満点で三十点程度、先進諸国では、ダントツのペケである。ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなどの高校生が、七十点、八十点、九十点の平均点を出す中で、日本だけが異常に低い点となっている。むろん、高校生の責任ではない、教師の責任だ。
正しいエネルギー教育が必要なのである。
ところで、先の管理職は、次の文を読んでいるのだろうか。教育改革プログラム本文の「 環境教育の充実等―地球環境問題への対応」の部分である。
地球環境問題に対応するためには、今後、我が国社会が大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から省資源・省エネルギー・リサイクル型社会へと転換していくことが必要である。教育においても、そうした視点が重要となることから、環境やエネルギーへの理解を深め、環境保全やよりよい環境の創造のために(以下略…筆者)
教育課程審議会審議のまとめの「(環境への対応)」の部分はどうだろうか。
環境問題に対する社会の関心が一層高まる中で、環境や資源エネルギーについての理解を深め、環境を大切にする心を育成するとともに(以下略…筆者)
エネルギーについては、教育課程審議会の中間まとめでも取り上げられている。きちんと読んでいれば目に入るはずである。学校で取り組まなければならない大事な課題であることは明らかなのである。
本書が、この大事な課題である「エネルギー教育」の展開に大いに役立ってくれることを願っている。
1998年12月8日 /竹川 訓由
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- 明治図書