養護学校におけるQOLを支える個別教育計画(IEP)21世紀へ向けた新しい教育実践

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21世紀へ向けての障害児教育の新しい流れを作る牽引車的役割を果たす横浜国立大学附属養護学校が、3年間5回に亘る研究セミナーの成果を集大成。


復刊時予価: 2,728円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-018224-6
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
3刷
対象:
小・中・高
仕様:
A5判 184頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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はじめに
第1章 QOLを支える教育
1 人問尊重の教育
(1) 探求,創造,そして自己実現
(2) QOLを学校教育に取り込む
2 個別教育計画(IEP)による教育
(1) 保護者と共に取り紹む教育
(2) IEPを生かす環境での教育実践
3 動的教育
──ムーブメント教育
4 ライフステージを見通した教育
5 QOLを支える本校の教育
(1) QOLを支える個別教育計画(IEP)
(2) QOLを表にあらわす
第2章 本校の個別教育計画
1 教科中心の教育課程
2 個別教育計画(IEP)の作成の方針,過程
3 アセスメントとアセスメントプラン
4 各学部のIEPの様式
(1) 小学部
(2) 中学部
(3) 高等部
第3章 発達支援を重視する<小学部>
1 小学部におけ+QOLとIEP
2 QOLを支える小学部の授業事例
@ 全体体育  二人組&椅子を使ったムーブメン卜
A 算数ムーブメント  ハンプムーブメン卜
B 国語  どんなおべんとう?
C 算数  なにができた?
D 給食  給食配膳指導
第4章 自己選択自己決定する力を育てる<中学部>
1 中学部におけるQOLとIEP
2 QOLを支える中学部の授業事例
@ 体育  フープ・ムーブメン卜
A 理科  おもさとつりあい
B 総合  休日に遊びにいこう
第5章 自己実現へ向けて<高等部>
1 高等部におけるQOLとIEP
2 QOLを支える高等部の授業事例
@ 体育  ニュースペーパー・ムーブメン卜
A 国語  私のシステム手帳
B 数学  文章題を作ろう
C 保健  わたしたちのいのちとからだ
D 情報  ふようトラベル秋のツアー
E 産業社会と人間  喫茶店キャッツただいま営業中
第6章 健康教育
1 QOLを支える給食・栄養教育
はらぺこ青虫
2 QOLを支える学校保健
空気のいれがえをしよう!
第7章 交流教育
1 小学部の実践
2 中学部の実践
第8章 余暇教育
1 QOLと余暇活動
2 部活動《ムーブメント部》の実際
3 本校の余暇活動
(1) 本校のクラブ活動
(2) 本校の部活動
(3) 卒業生・保護者の活動
第9章 保護者の考えるQOL
QOLの充実をめざして *保護者の立場から
(1) IEPが伝えてほしいこと
(2) IEPを生かした本人と家族のQOLの充実
おわりに

はじめに

 Quality of Life(QOL:生活の質の豊かさ)。この考えが,我が国の特殊教育に取り入れられ始めたのは,ごく最近のことでしょうか。一般にはまだ養護学校関係では馴染みのない教育理念かもしれません。

 また,障害児教育におけるIEP(Individualized Education Program:個別教育計画)の取り組みについてはどうでしょうか。これは,個々人の個性を尊重し,見通しのある教育を支援するための当然の筋道として,そして教育の成果をより高めるための手段として,我が国の特殊教育諸学校でようやく立ち上がり,少しずつその教育実践が発表されてきている教育の流れです。

 私たちは,この「QOL」と「IEP」という特殊教育諸学校の教育の中でこれからもっと真剣に考え特殊教育を支えていかなければならないキーワードに注目し,これまで学校内での授業研究はじめ公開研究セミナーを通して教育実践を試みてきました。

 そして,21世紀の扉がもう少しで開けられようとしている現在,この二つの大きなキーワードが,確実に力のある扉の鍵となり新しい特殊教育の道を開けることができるものと確信できるようになりました。

 どなたでも感じられていると思いますが,日本の教育は余りにも頑丈な枠にはまり重い扉で固まり,動きがとれずいろいろな教育のゆがみを噴出しています。精神遅滞児の教育課程を例にしてみても,特殊教育が義務化されて以来,少しは新たなものが入ったもののほとんど変わることなく,激しく変化する社会の流れに対応していない状態にあるように思います。

 改めて教育の狙いはどこにあるのか,そのために学校教育は何をすべきか,教育の重たい扉を,どのように動かし,どのように揺さぶりをかけたらよいか,ようやくあちこちでその「新しい風」が吹き始めたような気がします。

 周知のように特殊教育の扉は,1960年代の北欧に誕生し,1970年に世界的に開花したノ一マライゼーション思想の台頭で開けられました。1975年の米国フォード大統領により調印された「PL94−142,全障害児教育法」は更に大きく扉を開けるきっかけとなりました。この調印で障害を持つ全ての子どもに,個別化された教育計画(IEP)を持つことが特殊教育諸学校に義務づけられました。この時に障害児教育は,学校だけでなく地域,社会,家庭との連携が打ち出されました。QOLの煮えもすでにこの時に組み込まれました。

 ライフスタイルのクオリティ(質的側面)は,1990年に入って特に強調された言葉となりました。これによりインクルージョンという言葉も生まれてきました。より有意義な質的様式での人生をどのように生きていくかという生き方の選択に,インクルージョン理念が拍車をかけました。そして「QOLに基づいて障害を持つ子ども達の教育をどのように支援するか,IEPはどのように位置づけることができるか」という課題が,私たちの養護学校の教育課題として生まれたのです。

 この本は3年前に開始した本校の5回に渡る研究セミナーの成果:平成7年度の「養護学校におけるIEPの取り組み」,平成8年度の「IEPを進めるためのアセスメントの方法」,平成9年度の「運動アセスメントを教育実践にどう生かすか」,「QOLを支えるための教育」をまとめたものです。

 本書は,第1章がQOLと学校教育の基本理念,第2章がIEPとアセスメントについて,第3章が小学部での発達に結びつけたQOLとIEPの取り組み,第4章が自己選択・自己決定に向けた中学部での教育実践,第5章が高等部での自己実現に向けての教育実践,第6章,第7章,第8章がQOLの軸になる健康教育,地域との交流教育,余暇教育,そして第9章が保護者の立場から見たQOLから構成されています。

 本書が,障害を持った子ども達の幸せを支え,21世紀に向けての障害児教育の新しい流れを作り,特殊教育担当の教師はもとより,保護者の教育理解のために利用されましたら,私たちの喜びであります。


   編者 /小林 芳文

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