- はじめに
- 第1章 養護学校の先生への期待
- [1] 養護学校の生活
- キーワード: VSOP/ ABC/ 教師論
- [2] 養護学校の義務制とその後
- キーワード: 養護学校の在り方/ 義務制/ 学校教育法施行令第22条の3
- [3] 障害者の思い *泣けへん!
- キーワード: 障害者理解/ 共感的理解
- [4] 「知的障害」という言葉について
- キーワード: ビープルファースト/ 教育の原点/ 人権擁護
- [5] これだけは知っておこう(その1)*障害の実態把握
- キーワード: 健康安全/ ダウン症児/ 学校事故
- [6] これだけは知っておこう(その2)*事故と危機意識
- キーワード: 学校の管理下/ 危機管理/ 心肺蘇生法
- [7] 障害者と人権擁護 *体罰で教育はできない
- キーワード: 体罰/ 学校教育法第11条/ 人種意識/ 懲戒
- [8] 養護学校教諭免許と認定講習について
- キーワード: 免許法/ 専門性/ 認定講習
- 第2章 障害の理解と健康・安全な学校生活
- [1] 障害の概念について
- キーワード: 国際障害者年(IYDP)/ 障害者の日/ WHO/ 障害の3つのレベル
- [2] 医療と教育 *医師が教師に望むこと
- キーワード: 療育/ 治療/ 医者/ 鬼手仙心
- [3] 重度・重複障害について
- キーワード: 学校教育法施行令第22条の3/ 309号通達/ 重複障害学級
- [4] 学校給食とO−157
- キーワード: 学校給食(法)/ ADL/ 給食指導(危機管理)/ 誤飲/ 偏食
- [5] これだけは知っておこう(その3)*てんかんとCP
- キーワード: 健康安全/ 危機管理/ てんかん発作/ 脳性まひ(CP)/ 訓練技法
- [6] これだけは知っておこう(その4)*白閉症
- キーワード: レインマン/ こだわり/ TEACCH/ 構造化
- [7] 性教育と日常生活の指導
- キーワード: パブリック/ 性教育/ セクシャリティー
- 第3章 学級経営の工夫と創造の喜び
- [1] 新任の先生の悩みベストテン
- キーワード: 新任(初任者)研修/ 個別教育計画(IEP)/ 指導技術/ ストレスマネージメント
- [2] 養護学校への入学
- キーワード: 就学指導/ 教育相談/ 令22条の3/ 30号通達
- [3] 就学指導と教育相談
- キーワード: 就学奨励費/ 通級による指導/ 学校見学
- [4] 保護者とのコミュニケーション
- キーワード: 聞き役/ 信頼関係/ 共感的理解
- [5] 親の心理
- キーワード: 決めつけ/ 視線/ 障害の受容
- [6] ティームティーチングのむずかしさ
- キーワード: TT/ 専門性/ 人間関係
- [7] 新任の先年への7つの願い
- キーワード: のん気,こん気,げん気/ 選択・決定・参加/ 広い視野
- 第4章 指導計画をつくる
- [1] 養護・訓練について *養訓が要(カナメ)
- キーワード: 養護・訓練/ 指導領域/ 専門性の確立
- [2] 個別カリキュラムをめざして
- キーワード: IEP/ 保護者の参加/ インフォームド・コンセント/ ノーマライゼーション
- [3] 養護学校の教育課程の特長
- キーワード: カリキュラム・スペシャリスト/ 領域・教科を合わせた指導
- [4] 指導案を書いていますか
- キーワード: 指導案/ 日案・週案・月案/ 略案
- [5] 教材・教具を自作してみよう
- キーワード: 自作教具/ 教材研究/ 教材・教具センター/ トイライブラリー
- [6] 作業学習について
- キーワード: 作業活動/ 職業教育/ 作業療法(OT)
- [7] 生活単元学習について *たのくるしい
- キーワード: 生活単元/ 生活主義的教育/ 領域・教科を合わせた指導
- [8] 授業研究を怠るなかれ
- キーワード: 授業/ 研究授業/ 楽しく,身につく
- 第5章 自立への支援のために
- [1] 自立ということ *親や学校が心がけるべきこと
- キーワード: 自立/ 基本的生活習慣/ 市民としての障害者
- [2] ケーススタディーを大切に
- キーワード: 事例研究/ プライパシー/ 個人カルテ/ 心理検査
- [3] 職業教育と進路指導
- キーワード: 職業教育/ 進路指導/ 学科とコース/ 「生活する力」と「働く力」
- [4] 「障害者の日」と「障害者週間」
- キーワード: 障害者の日/ 障害者週間/ 国際障害者デー/ 障害者基本法
- [5] 自立支援と制度
- キーワード: QOL/ グループホーム/ レスピットサービス/ ピアカウンセリング
- [6] 交流教育を積極的に進めよう *開かれた養護学校に
- キーワード: 交流教育/ 障害者理解推進/ 福祉教育
- [7] 障害者文学に学ぶ *やさしさとの出会い
- キーワード: 小説/ 映画/ 音楽/ まんが等
- 第6章 これからの養護学校
- [1] 養護学校が問われている
- キーワード: インテグレーション/ メインストリーミング/ インクルージョン/ 養護学校の意義/ 養護・訓練
- [2] 指導要録と情報公開
- キーワード: 知る権利/ 個人情報/ 人権やプライバシー
- [3] 特色ある学校づくり
- キーワード: 養護学校の特色/ 学校の特色づくり/ 教育改革
- [4] 福祉教育とボランティア活動
- キーワード: 福祉教育/ 福祉のこころ/ ポランタリーな精神/ 学校福祉教育
- [5] 福祉のこころに学ぶ
- キーワード: この子らを世の光に/ ウエルビーイング/ 福祉の思想/ 無財の七施
- [6] 学校週5日制と社会教育への期待
- キーワード: 地域社会/ 社会教育施設の充実/ ボランティア/ 社会資源
- [7] 専門性について
- キーワード: ジェネラリスト/ スペシャリスト/ プロフェッショナル
- [8] 地域のセンター的役割を担う *旅をする先生
- キーワード: 21世紀の障害児教育/ 専門性/ センタ一的機能/ 巡回教師
- おわりに
はじめに
教育の世界は今,大きな変革期に入っている。全国的に「教育改革」が目下の急務となっている。国レベル,都道府県レベル,市町村レベル,そして各学校レベルでと,取り組める内容はそれぞれ異なるが,最終的には一人ひとりの先生の意識改革が問われている。もはや前例主義では改革は進まない。「変えるためには,自分が変わらなくては,変わらない」というのが,本当のところであろう。その意味で,新任の先生への期待は大きい。それは新鮮な眼で今の養護学校を“問う”ていただくことに,期待しているからである。素朴な疑問を大切にしたい。そんな思いに満たされている。それは,養護学校のあり方そのものが問われているからである。
また養護教育諸学校(特殊教育諸学校)の今後の大きな課題は,重複障害にある。わけても,知的障害と視覚障害,聴覚障害,肢体不自由,病弱,(そして自閉症や学習障害など),知的障害との重複障害が,最大の課題となる。
さらには,21世紀の養護教育諸学校が目指すべき方向として,地域の養護教育(特殊教育)のセンター的役割と専門性のふたつが,大切であると考える。
時代の変化,子どもの実態の変化に対応して,何をどう変えるか,そのことが問われている。それは決して,“教育の原点”と言われる障害児教育のこれまでの実践を否定するものではなく,むしろその真髄を失うことなく,時代の変化に応じた新たな視点を加えた改革を図ることであると思っている。その意味で,基本的なスタンスとしては,「温故知新」と「不易流行」ということばが,あてはまる。
さて,21世紀の障害児教育は,その中での盲・聾・養護学校(以下養護学校を中心に考える)のあり方は,ということについて考えてみると,次のような課題がある。
(1) 個別の指導計画(教育計画としてのIEP)を作り,一人ひとりに応じた指導内容・方法の充実を図ること。
(2) 重度・重視化,多様化が言われて久しいが,その課題解決のための具体的対応策を進めること。
(3) 高等部における教育,特にコース制や職業教育の充実を図ること。そのために出口から見た,教育課程のあり方を検討すること。
(4) 養護教育諸学校の幼児・児童・生徒の減少に伴う新たな対応策の検討と共に,ノーマライゼーションとリハビリテーションさらには,QOLなどの概念への理解を深めること。
(5) 医療的ケアを要する児童・生徒への対応をどのようにするか。医療行為か生活行為かの論議から,新たな解決策の模索。
(6) 幼稚部の充実など,早期教育の充実策を進め,盲学校,聾学校のノウハウを他の障害にどのように反映するか。
(7) 保護者の参加をさらに進め,いわゆるインフォームドコンセント(十分な説明にもとづく同意)を学校教育で生かすこと。
(8) 病気療養中の児童・生徒の教育の充実,医療の変化に応じた病院内学級の増加に伴い,養護学校としての対応を図ること。
(9) 学校の「特色づくり」や,開かれた養護学校など,より地域との連携を図るために,当面,視行制度を前提として,できることから各養護学校で一層の内部努力を図ること。
このように多くの課題をかかえながら,私たちは間違いなく21世紀に向かって,歩みを進めなければならない。とにかく3年間で障害児教育の一通りのことを身につけていくのだという気構えで,日々の実践と研修に臨まれることを期待している。
1997年8月 著者 /中村 忠雄
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- 明治図書