- 特集 中学校での特別支援教育のポイントはここだ!
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- 中学校における特別支援教育―今後のあり方を考える―
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- 非行と発達障害/総合的な個別発達援助体制による発達障害を伴う子どもの非行予防と対応
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- 【特別寄稿】アメリカにおける思春期以降の特別支援教育 (第1回)
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- 「ベジタブル」
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- 親の会ニュース (第29回)
- 旭川LD親の会「ぷりずむ」/岐阜県LD親の会「れんげの会」
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- 医療との連携 (第29回)
- こども病院だより(1)
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- 〜診断が意味するもの〜
- 実践の小箱/臨床学校現場から (第28回)
- 特別支援教育の風に乗って
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- 情報最前線/行政や海外の動向は (第29回)
- 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育情報センターWebサイトからの情報提供
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- 学校カウンセラーから見た発達障害の子どもたち (第1回)
- 「中学生」という難しい時期を乗り切るために
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- 医療から見た発達障害の子どもたち (第1回)
- 医療機関で出来ること
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- 〜投薬について〜
- わたしの教え方・自慢の教材 (第1回)
- 中学生の指導に活用できる教材
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- 新しいアセスメントの動き (第1回)
- PASS理論を基にした新しい知能検査としてのDN-CAS
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- 一度は手にしたい本
- 『天使の正体 ダウン症の書家・金澤翔子の物語』(金澤泰子著)/『高機能広汎性発達障害の教育的支援―特別支援教育のプロを目指す教師のために―』(竹田契一監修 里見恵子編)
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- 編集後記
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特集について
中学校での特別支援教育のポイントはここだ!
東京学芸大学教授/松村 茂治
中学校での特別支援教育には,小学校でのそれとは異なった,難しい点が多々あるように思います。そのいくつかを以下に書き出してみます。
発達段階に関して言えば,中学生は,青年前期(思春期)に位置します。第二次性徴,第二反抗期に象徴されるように,身体も心も,大きな変化を経験します。心身の変化は,自分自身についての理解や周囲の人たちとの関係の持ち方に影響を及ぼします。障がいの理解やそれへの対応に関して言えば,知能テストを取る際にも,あるいは,学級から離して個別の指導に向かわせる際にも,小学校時代とは異なった配慮が必要となります。
また,多くの中学生は,小学校時代から,学習面でのつまずきを体験して来ています。ある調査によれば,小学6年生の児童のおよそ15〜25%に,算数と国語で1学年以上の遅れがあるとのことです。中学校に進めば,日々,学ぶべきことは増大するわけですから,遅れは益々蓄積していきます。そうした遅れの積み重ねは,生徒の自尊心や自己肯定感の低下を招くであろうことは想像に難くありません。こうしたことが,中学校における不登校生徒の増大(小学校の約10倍!)の一因になっているとも考えられます。
中学校では,小学校の段階に比べ,教科内容がより専門化し難しくなってきます。教科担任制は,そうした専門化に対応したシステムと言えます。教科毎に複数の教師が関わることで,教師と生徒との間に,さまざまな出会いを期待できる反面,学級担任と教科担任,及び教科担任同士の間で,一人の生徒に対する理解や対応に関して共通理解が得られないということが起きることもあります。
特別支援教育では,通級指導教室での指導が重要な役割を持つことになりますが,この制度と教科担任制は,どのように折り合いをつけていったらいいのでしょう?
進路指導に関しては,中学校から高等学校への移行は,義務教育から非義務教育への移行ということになり,本人,保護者そして教師も,義務教育間の移行に比べ,極めて厳しい現実に向き合わなければならなくなります。
思いつくまま挙げただけでも,以上の通りです。どれも簡単に解決できるものではありませんが,そうした難しさを見つめながら,地道な支援教育を展開している中学校もあります。通級指導教室,教科指導,生徒指導,スクールカウンセリング等の実践的な活動の中から,中学校での特別支援教育の在り方について考えてみたいと思います。
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