- 特集 教科書を使った「1年間の総まとめ」
- 教科書は、よくできている。ドリルとの思想が異なる!あくまで教科書通りで
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- 「2段階、3ステップ」指導で学力を保障する
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- 教科書の1年間のまとめの問題は、必ず授業で扱う
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- 「子どもは忘れていて当たり前」と思え
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- 「教科書チェック」を再活用して、教科書の問題を完全に理解させる
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- 数学の苦手な生徒に身につけてほしい力は何か
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- ミニ特集 気になる子の通知表記述の気配り点
- 通知表を書く前からの気配り2点
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- かすかな伸びに気づくための放課後の孤独な作業
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- 作業指示→称賛で成功体験を積ませよ
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- 算数授業での微かな変容を見逃さず
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- 努力したこと、感心したこと、その子なりの印象的な出来事を書く
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- 指導から生まれる事実と価値づけで所見を書く
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- 巻頭論文 算数授業へのこだわり
- 「1つのすばらしい事実」をつくり、また次の1つの事実を創ることから「方向性」は生まれる
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- 向山型算数実力急増講座 (第66回)
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- 向山型算数の原理原則と応用 (第66回)
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- “問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
「1つのすばらしい事実」をつくり,また次の1つの事実を創ることから「方向性」は生まれる
向山洋一
向山型算数についての質問をもらった。参考になると思うので紹介する。
◆向山洋一先生,女☆D研の藤野美紀です。
わり算の指導をD研のMLにずっと記録してきて,いくつかわかったことがありました。
1向山型算数は,「問題を解決する力」を身につけさせる指導法(向算誌2004年3月号を読んでいてはっとしました)だけれども,いわゆる今,小学校で取り入れられている「問題解決学習」とは違う,ということが第一。
2どこが違うかというと「教科書を使う」こと。しかし,「教科書で教える」とか「教科書をなぞる」のではない。
「教科書を教える」とは,教科書のその時間に指導しなくてはならない要素,要点を子どもにつかませること。
3ある基本が身につくまでは何度も繰り返すけれども,身についたら逐一指導はしない。子どもにぽーんと渡してしまっていい瞬間がくる。それは,子どもの中で簡便な方法を探す,だったり,他の知識と組み合わせるといった自由思考の時間。それが,1単位時間の中にも行われ,同時に単元を通しても行われる。
私のわり算の指導は,念のために,念のために,とやりすぎたので,子どもの思考が飛んでいかなくなってしまったのだ,と考え,反省しました。
〈向山〉
1について。算数の学習は,「問題を出し,それを解決する」という形で進みます。
その意味では,すべての算数の学習は「問題を解決する学習」です。
「問題解決学習」と「問題を解決する学習」とは,全く別ものです。
「問題解決学習」は,「ポリアの学習方法」を「日本の子どもたち」に,かなり無理やり押し込んだ指導方法です。
観念の世界から生まれた指導方法であり,「子どもの事実」をきちんと見ない指導方法です。
そのため「できない子ができるようになった指導例」は,全国的に見ても皆無に近いのです。
「算数嫌いが増え」「できない子が激増する」特徴をもっています。
何よりもADHD児など,軽度知的障害をもつ子に冷たい(というより冷酷な)指導方法であり,問題解決学習により障害を悪化させた事例は,全国どの学校(いや,どの学級)にも存在すると断言できるほどです。
教育史上,最低最悪の指導法が「算数の問題解決学習」であり,近年の学力低下の主因になっていると推定されます。
算数の問題解決学習派の教師は,学習指導要領でも,問題解決学習を言っていると言いますが,真っ赤な嘘です。
デマです。
学習指導要領で示されているのは,「問題を解決する力」なのです。算数の学習なら,当然のことを言っているのです。
そもそも,教育基本法により,教育行政は「教育の外的事項」の整備がその任務であり,「教育の内的事項」までは,踏み込まないのです。
「学習指導要領」によって「学習内容の大綱的基準」を示すに止まり,「いかなる指導法をすべきか」には踏み込んでいないのです。
また,法律上も,踏み込むことはできないのです。
2について。「要素,要点を,分かりやすく,できたら知的に,つかませること」なのです。
3 身につくまで繰り返しますが,毎回の指導を「100点主義」ではなく「80点主義」ぐらいでとらえておくこと。
「100点」を目指しますが,途中では「80点」のときも多々あるということです。
毎回「100点主義」ですと,教師も子どもも疲れます。
いやになってきます。
学習は,「点」ではなく「線」で考えるべきなのです。
「自由思考」とも言える授業の形態を,山ほど考え出すことです。
5つも10も,20もの「指導法」を身につけることです。
「ゲームから入って規則性を見つけさせる」などは有力な指導法の1つです。4それで,次の単元の概数のところでは,四捨五入の基本はみっちり,位取りが読めなかった子には,その指導もしっかり。その基本が入ったらあとは「やってごらんなさい」と子どもに問題をあずけてみたのです。すると,ずっと「算数わかんない」と言っていた子が,目をぱちっと大きく開いて「あたし,四捨五入わかったかも!」と,どんどん手を挙げるようになりました。ああ,これか!と私は思ったのですが,勘違いでしょうか?
〈向山〉
いつもいつも,温室で育っていると,本来の成長する強さが育ちません。
いつもいつも,噛んで含めて教えていると,自分でやっていく力が育ちません。
弱いときには,病気のときには,それを大切にカバーすることは大切です。
しかし,人間は,知的好奇心に満ちた動物ですから「自分でやってみたい」「いろいろやってみたい」という欲求も強いのです。
普通学級では,とりわけ「すべての子の知的満足」を保証する授業が求められます。
音楽の授業で,飯田先生が何百人もの教師を熱狂させ,それを活用した授業で,多くの子どもをひきつけるのも同じです。
基本を大切にして,変化のある繰り返しがあるからです。
言葉ではなく,行為させながら教えているからです。
50年も昔,「節づくり」という見事な指導法で全国から万余の参観者を集めた,岐阜の山本先生の指導法を若いときに経験し,自分のものとしているからです。
飯田先生の授業が,圧倒的多数の教師に受け入れられたのは「子どもの事実」があるからです。
「目をぱちっと大きく開き」「どんどん手をあげるようになった」子どもの事実が,すべてをものがたります。5もし,それで方向性がまちがっていなければ,3学期の面積の学習も単元を通して見たら,組み立て方がわかったような気がしています(ここを向算セミナーでぜひやりたい!と思っています)。
跳び箱指導で教えていただいた「少しのたくましさを育てること」にも通じると思っています。……どうでしょう!?
〈向山〉
「1つの事実」と「方向性」は,違います。「方向性」が「正しい」と判断するには「いくつもの事実」が必要です。
「1つの事実」を参考にして,次をやった場合「うまくいく場合」もあれば「うまくいかない場合」もあります。
そここそ,研究すべきなのです。
「なぜ,両方ともうまくいったのか」
「なぜ,一方は成功し,一方はだめだったのか」
どちらにしても,これまで以上のことが学べるはずです。
こうしたことの繰り返しこそが,「実践的研究」なのです。
「1つや2つの成功」で,「全体」を語るべきではありません。
30年前,保護者であった,東京労災病院の外科部長のドクターは,
「医学の世界では,最低で50例,できたら100例ほしい」
と,私によく言ってました。
「1つずつの実例を大切にする」
「1人の子どもを大切にし,クラス全体の子も大切にする」
この視点で,毎日毎日,毎日毎日の実践を繰り返していくのです。
その中で,「手ごたえのある方法」「だめだった方法」を意図的に記録し,蓄積していくのです。
さらにそれを「サークル」「研究メール」などで検証していくのです。
そうすることによって,初めて教育学は「学」として成り立っているのです。
千葉大の明石先生は現在,教育学部長代理ですが,全学の会議のときに医学部の先生から言われたそうです。
「医学部の教授は,自分でも臨床の場に立つ。なぜ,教育学部の教授は,臨床の場に立ち,子どもたちに教えないのか?」
ここにこそ,大きな問題があると思います。
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- 明治図書