向山型算数教え方教室 2005年3月号
教科書を使った「1年間の総まとめ」

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向山型算数教え方教室 2005年3月号教科書を使った「1年間の総まとめ」

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2005年2月8日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 教科書を使った「1年間の総まとめ」
教科書は、よくできている。ドリルとの思想が異なる!あくまで教科書通りで
甲本 卓司
様々な型であきないように組み立てる
根本 直樹
「2段階、3ステップ」指導で学力を保障する
田村 治男
教科書の1年間のまとめの問題は、必ず授業で扱う
森川 敦子
「子どもは忘れていて当たり前」と思え
八和田 清秀
「教科書チェック」を再活用して、教科書の問題を完全に理解させる
小貫 義智
数学の苦手な生徒に身につけてほしい力は何か
月安 裕美
ミニ特集 気になる子の通知表記述の気配り点
通知表を書く前からの気配り2点
神田 朋恵
かすかな伸びに気づくための放課後の孤独な作業
奥井 利香
作業指示→称賛で成功体験を積ませよ
雪入 哲也
算数授業での微かな変容を見逃さず
渡辺 佳起
努力したこと、感心したこと、その子なりの印象的な出来事を書く
有村 紅穂子
指導から生まれる事実と価値づけで所見を書く
末冨 奈津子
グラビア
常に変化し、進化する向山型算数セミナー
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
『静か』とは
小倉 郁美
向山型算数キーワード
赤鉛筆で薄く書く
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
「1つのすばらしい事実」をつくり、また次の1つの事実を創ることから「方向性」は生まれる
向山 洋一
学年別3月教材こう授業する
1年
「はるよ,こい」
塩苅 有紀
さんすうと せいかつ
大島 英明
2年
もうすぐ3年生
太田 政男
図をつかってかんがえよう
正木 恵子
3年
算数と生活
坂田 幸義
もうすぐ4年生
末益 紀子
4年
分数
堤 星雨子
4年のふくしゅう
山本 昇吾
5年
算数と生活
中川 貴如
100をつくろう
小宮 孝之
6年
計算の見積もり
伊藤 鉄正
6年のまとめ
林 健広
向山型算数に挑戦/論文審査 (第64回)
定義を様々に工夫して授業する
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第66回)
子どもの自然な活動から出発する
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第66回)
わり算で「逆転現象」が起こるのは向山型算数しかない
井上 嗣祥
“問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
やっと終わった地獄の算数!
石井 研也
問題解決できない子多数の授業
和歌 千明
向山型算数WEBサロン (第60回)
M君が「先生、算数はおもしろすぎる」と言ったスマートノートブックを活用
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第60回)
「ていねいな上にもていねい」な授業では、知的成長・興奮を作り出せない
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第24回)
親と子は、いつまでも証言する。「向山型算数は、やっぱりすごい!」
松崎 力
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
シンプルでテンポのよい授業がいい
浜松 繁
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第66回)
低学年
細羽 朋恵
中学年
武田 俊樹
高学年
岩田 史朗
ライブ体験で味わう“実力づくりへの道”向山弟子の介入を受けて
知的な授業も混乱させたらお終いだ
星原 一宏
自分のリズムとテンポに子どもを巻き込む
岩本 友子
向山型算数セミナー
まだ間に合います。キャンセル待ち受付中
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
すぐ使える!算数が楽しい!
三浦 久美子
憧れを抱いて腕を磨いていく
元村 恵利子
さくらんぼ計算に救われた
横田 裕二
ライブ体験で向山型算数を知る
森元 智博
子どもが変わる・私も変わる
笹原 詩織
どの子にも自信と力をつけていける
田澤 大吾
A君に有効だった3つの指導
島田 謙一
子どもたちが3倍速で動く指示
石亀 健
小さな事実をみんなに見てもらう
藤田 博子
論文ランキング
12月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
学期に1回は「ノートコンテスト」
黒瀧 耕治
読者のページ
ルポ問題解決学習への反響
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第66回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

「1つのすばらしい事実」をつくり,また次の1つの事実を創ることから「方向性」は生まれる

向山洋一


 向山型算数についての質問をもらった。参考になると思うので紹介する。

◆向山洋一先生,女☆D研の藤野美紀です。

 わり算の指導をD研のMLにずっと記録してきて,いくつかわかったことがありました。

1向山型算数は,「問題を解決する力」を身につけさせる指導法(向算誌2004年3月号を読んでいてはっとしました)だけれども,いわゆる今,小学校で取り入れられている「問題解決学習」とは違う,ということが第一。

2どこが違うかというと「教科書を使う」こと。しかし,「教科書で教える」とか「教科書をなぞる」のではない。

 「教科書を教える」とは,教科書のその時間に指導しなくてはならない要素,要点を子どもにつかませること。

3ある基本が身につくまでは何度も繰り返すけれども,身についたら逐一指導はしない。子どもにぽーんと渡してしまっていい瞬間がくる。それは,子どもの中で簡便な方法を探す,だったり,他の知識と組み合わせるといった自由思考の時間。それが,1単位時間の中にも行われ,同時に単元を通しても行われる。

 私のわり算の指導は,念のために,念のために,とやりすぎたので,子どもの思考が飛んでいかなくなってしまったのだ,と考え,反省しました。

〈向山〉

 1について。算数の学習は,「問題を出し,それを解決する」という形で進みます。

 その意味では,すべての算数の学習は「問題を解決する学習」です。

 「問題解決学習」と「問題を解決する学習」とは,全く別ものです。

 「問題解決学習」は,「ポリアの学習方法」を「日本の子どもたち」に,かなり無理やり押し込んだ指導方法です。

 観念の世界から生まれた指導方法であり,「子どもの事実」をきちんと見ない指導方法です。

 そのため「できない子ができるようになった指導例」は,全国的に見ても皆無に近いのです。

 「算数嫌いが増え」「できない子が激増する」特徴をもっています。

 何よりもADHD児など,軽度知的障害をもつ子に冷たい(というより冷酷な)指導方法であり,問題解決学習により障害を悪化させた事例は,全国どの学校(いや,どの学級)にも存在すると断言できるほどです。

 教育史上,最低最悪の指導法が「算数の問題解決学習」であり,近年の学力低下の主因になっていると推定されます。

 算数の問題解決学習派の教師は,学習指導要領でも,問題解決学習を言っていると言いますが,真っ赤な嘘です。

 デマです。

 学習指導要領で示されているのは,「問題を解決する力」なのです。算数の学習なら,当然のことを言っているのです。

 そもそも,教育基本法により,教育行政は「教育の外的事項」の整備がその任務であり,「教育の内的事項」までは,踏み込まないのです。

 「学習指導要領」によって「学習内容の大綱的基準」を示すに止まり,「いかなる指導法をすべきか」には踏み込んでいないのです。

 また,法律上も,踏み込むことはできないのです。

 2について。「要素,要点を,分かりやすく,できたら知的に,つかませること」なのです。

 3 身につくまで繰り返しますが,毎回の指導を「100点主義」ではなく「80点主義」ぐらいでとらえておくこと。

 「100点」を目指しますが,途中では「80点」のときも多々あるということです。

 毎回「100点主義」ですと,教師も子どもも疲れます。

 いやになってきます。

 学習は,「点」ではなく「線」で考えるべきなのです。

 「自由思考」とも言える授業の形態を,山ほど考え出すことです。

 5つも10も,20もの「指導法」を身につけることです。

 「ゲームから入って規則性を見つけさせる」などは有力な指導法の1つです。4それで,次の単元の概数のところでは,四捨五入の基本はみっちり,位取りが読めなかった子には,その指導もしっかり。その基本が入ったらあとは「やってごらんなさい」と子どもに問題をあずけてみたのです。すると,ずっと「算数わかんない」と言っていた子が,目をぱちっと大きく開いて「あたし,四捨五入わかったかも!」と,どんどん手を挙げるようになりました。ああ,これか!と私は思ったのですが,勘違いでしょうか?

〈向山〉

 いつもいつも,温室で育っていると,本来の成長する強さが育ちません。

 いつもいつも,噛んで含めて教えていると,自分でやっていく力が育ちません。

 弱いときには,病気のときには,それを大切にカバーすることは大切です。

 しかし,人間は,知的好奇心に満ちた動物ですから「自分でやってみたい」「いろいろやってみたい」という欲求も強いのです。

 普通学級では,とりわけ「すべての子の知的満足」を保証する授業が求められます。

 音楽の授業で,飯田先生が何百人もの教師を熱狂させ,それを活用した授業で,多くの子どもをひきつけるのも同じです。

 基本を大切にして,変化のある繰り返しがあるからです。

 言葉ではなく,行為させながら教えているからです。

 50年も昔,「節づくり」という見事な指導法で全国から万余の参観者を集めた,岐阜の山本先生の指導法を若いときに経験し,自分のものとしているからです。

 飯田先生の授業が,圧倒的多数の教師に受け入れられたのは「子どもの事実」があるからです。

 「目をぱちっと大きく開き」「どんどん手をあげるようになった」子どもの事実が,すべてをものがたります。5もし,それで方向性がまちがっていなければ,3学期の面積の学習も単元を通して見たら,組み立て方がわかったような気がしています(ここを向算セミナーでぜひやりたい!と思っています)。

 跳び箱指導で教えていただいた「少しのたくましさを育てること」にも通じると思っています。……どうでしょう!?

〈向山〉

 「1つの事実」と「方向性」は,違います。「方向性」が「正しい」と判断するには「いくつもの事実」が必要です。

 「1つの事実」を参考にして,次をやった場合「うまくいく場合」もあれば「うまくいかない場合」もあります。

 そここそ,研究すべきなのです。

 「なぜ,両方ともうまくいったのか」

 「なぜ,一方は成功し,一方はだめだったのか」

 どちらにしても,これまで以上のことが学べるはずです。

 こうしたことの繰り返しこそが,「実践的研究」なのです。

 「1つや2つの成功」で,「全体」を語るべきではありません。

 30年前,保護者であった,東京労災病院の外科部長のドクターは,

 「医学の世界では,最低で50例,できたら100例ほしい」

 と,私によく言ってました。

 「1つずつの実例を大切にする」

 「1人の子どもを大切にし,クラス全体の子も大切にする」

 この視点で,毎日毎日,毎日毎日の実践を繰り返していくのです。

 その中で,「手ごたえのある方法」「だめだった方法」を意図的に記録し,蓄積していくのです。

 さらにそれを「サークル」「研究メール」などで検証していくのです。

 そうすることによって,初めて教育学は「学」として成り立っているのです。

 千葉大の明石先生は現在,教育学部長代理ですが,全学の会議のときに医学部の先生から言われたそうです。

 「医学部の教授は,自分でも臨床の場に立つ。なぜ,教育学部の教授は,臨床の場に立ち,子どもたちに教えないのか?」

 ここにこそ,大きな問題があると思います。

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