向山型算数教え方教室 2004年8月号
「発展学習」で大活躍!「難問1問選択」の授業

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向山型算数教え方教室 2004年8月号「発展学習」で大活躍!「難問1問選択」の授業

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2004年7月8日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 「発展学習」で大活躍!「難問1問選択」の授業
初めての導入はこうすればOK。子ども熱中のユースウェア
谷 和樹
挑発とできない子どもへのヒントで熱中する
椿原 正和
最後の1人も「向山型難問1問選択システム」の授業は大好き!!
村田 斎
大人をも巻き込む!「難問1問選択システム」
千葉 康弘
開始時から全員の脳がフル回転し出す!
田村 治男
授業の活性剤「難問」の授業に挑戦!
本間 尚子
「難問」の原理を見抜いて「先生問題」
八和田 清秀
ミニ特集 実物ノート&写真で早分かり「赤鉛筆指導」のコツ
いつの間にか,さりげなく,目立たなく
根本 直樹
大きな指示を入れて時間を作り,少し書き残してほめる!
木村 孝康
軽視していた声のかけ方
高杉 祐之
少人数指導の先生にもコツを教えよう
末冨 奈津子
赤鉛筆は薄く,細く,時にはっきりと
細井 俊久
赤鉛筆指導の7つのポイント
北村 聖子
グラビア
教師が説明しなければいけないと思い込んでいる。だから混乱するのです
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
個人差を埋める黒板8等分
小倉 郁美
向山型算数キーワード
あたたかな表情,対応
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
毎日の授業で「学習していくシステム」を身につけさせる。知識記憶よりエピソード記憶をそれより方法記憶を学習させるのである
向山 洋一
1人でグングンできる迷路型算数ワーク
1年
いくつといくつで おにたいじ
岡山作州教育サークル
たしざん おにがしま
岡山作州教育サークル
2年
せんすいかんで 大ぼうけん!
岡山作州教育サークル
パトロールにしゅっぱつ!
岡山作州教育サークル
3年
どくグモにご用心!
岡山作州教育サークル
桃太郎めいろに挑戦
岡山作州教育サークル
4年
迷路の魅力を脳科学から分析する
岡山作州教育サークル
不登校の子も喜んで取り組む迷路型
岡山作州教育サークル
5年
君もスペーストラベラー!
岡山作州教育サークル
サファリパークは危険がいっぱい
岡山作州教育サークル
6年
お宝めざせ!いざ出発!
岡山作州教育サークル
姫を救え!大冒険!
岡山作州教育サークル
向山型算数に挑戦/論文審査 (第57回)
教科書のポイントとなる部分を中心に授業せよ!
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第59回)
1年生の指導は小学校教育の原点
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第59回)
子どもをわしづかみにする授業開始3分間の原理原則を意識する
井上 嗣祥
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第28回)
我流の授業を廃して,向山型算数を目指して子どもの反応が変わった
荒井 健司
向山型算数WEBサロン (第53回)
手順を細分化した授業の連続でM君は算数が好きになった
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第53回)
セミナーの模擬授業と実際の授業は同じなのですね
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第17回)
向山型算数は,やさしく穏やかで,人なつっこい子を育てる
松崎 力
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
百玉そろばんで4年生でも説明しない授業が(中)
藤野 美紀
やることが分かっているから安心して取り組める
脇 規洋
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第59回)
低学年
平山 勇輔
中学年
藤田 貴也
高学年
青木 勝隆
ライブ体験で味わう“実力づくりへの道”向山弟子の介入を受けて
技術・技能が凝縮された10分間
竹森 正人
会場の空気が一変する代案炸裂
國本 直嗣
向山型算数セミナー
7月東京会場はキャンセル待ち
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
数字が全てを物語る
間嶋 祐樹
子どもが教えてくれる「事実」
松本 一樹
全部,算数でいいよ!
赤塚 邦彦
価値ある教師を目指して
伊藤 英理子
向山型でサクセスストーリーを
松山 修司
奇跡と呼ばれた向山型算数
吉田 真弓
「読む」と「やる」では全然違う
平田 純也
論文ランキング
5月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
約分の見つけ方,公約数の見つけ方
金子 明弘
読者のページ
脳科学が保証する「繰り返し」で生じた向山型の事実
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第59回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

毎日の授業で「学習していくシステム」を身につけさせる。知識記憶よりエピソード記憶を

それより方法記憶を学習させるのである

向山洋一


 子どもを教育するとは,学習のシステムを身につけさせることなのである。

 「幼児に本を読み聞かせる」という親の教育行為は,「幼児が自分で本を読めるようになる」という,一連の学習行為を身につけさせるためにするのである。

 教育とは,とりわけ授業とは,「あれこれのバラバラのことがらをいっぱい教える」というより,「1つのまとまった内容を,はじめから終わりまでまとまって身につけさせる」という行為なのだ。

 だから,教師は,「授業の1つのまとまり」を,みがかれ抜いた「システム」を理解しなければ,いつまでたっても,つまらない,その場限りの,行き当たりばったりの授業しかできないことになる。

 他人のすぐれた点,いいところを学ぶことは大切であるが,「いいとこどり」という教育のシステムはない。

 トヨタとホンダとニッサンとフォードとベンツの「いい部品」を集めても,「すばらしい車」は作れない。あちらこちらガタガタのボロ車ができるのが,せきの山だ。

 車にさえ,ならないことにもなる。

 それは,世界最先端の「システム」は,1つ1つが,みがかれたものであり,洗練されたものであり,部品の1つ1つに「それが必要」という「必然性」「理由」があるからだ。

 授業のシステムも,また同じなのである。

 1つ1つに意味があり,必然性があるのだ。

 このように,「すぐれた教育」は「1つのシステム」であり,「1つ1つが,みがかれてきたもの」であり,「意味」「必然性がある」ことを理解してこそ,教師の授業は,新しいレベルへの飛翔を開始するのである。

 「教育は1つのシステム」であることを理解すれば,サッカーでも,野球でも,大学受験でも,「実力日本一」になる裏には,必ず「すぐれた指導者のすぐれた教育システムが存在する」ことが理解できよう。

 このような視点で,世の中のできごと,世界のできごとを見るようになった教師は,あらゆる分野から学びとることができるようになる。教える師,教師は,学ぶ者,学者でもあるのだ。

 ただし,学ぶべき対象は,一流のものからだ。口先だけの,一時的な流行現象のことがらからは,「批判的」に検討することが大切だ。

 教師1人1人がもつ「志の高さ」こそが,教師のたどる道を決めていくのである。

 さて,分かりやすい例として「幼児への本の読み聞かせ」を例にとった。

 たった,これだけでも,明確にすべきことがある。

1)いつ読み聞かせるのか。時間帯は安定していた方がいい。学校の時間割も安定していた方がいい。簡単に変更するのはだめ教師だ。

読み聞かせは,普通は就寝前だろう。

2)誰が,読むのか。我が家は家人が担当し,水曜日と休みの日は私であった。

3)時間はどれくらいするのか。

 気合が入ったときは1時間も読み,全然読まないときもある――のは避けるべきだ。毎日,無理なく,繰り返せる時間を設定しなければならない。

 我が家は3冊と決めていた。15分から30分くらいである。

4)3冊を決めるのは誰か。子どもである。子どもは,好きな本を毎日持ってくる。これが「こだわり」であり,「子どもの秩序」なのである。

 大切にしなければならないことだ。

 大人は,「今日は別の本にしよう」と簡単に変更するが,避けるべきことだ。

5)我が家にある本は,どうやって購入したのか。

 本を選ぶのは,大切なことだ。「すぐれたテキスト」が必要であり,それは「親」「教師」の大切な役目だ。

 これがよいと下見をしていて本屋に行く。

 そして,子どもがその本を選択するよう上手に働きかけるのである。

6)本を読むとき,どのような「区分け」をするのか。

 これこそ,教師の最も大切なことだ。

 何かを教えるとき,どこで「区切るか」は,その教師の力量を如実に表す。

 だめな教師は,「区分け」を考えていないのだ。棒グラフに,1年分の雨量を記入させるとしよう。

 だめな教師は,「では,記入しなさい」と言って,全部をやらせて,のほほんとしている。当然,早くできる子,遅い子,やり方の分からない子などが続出して,教室は混乱する。

 作業をさせて,10分,15分してから説明に入るが教室は混乱したままだ。

 力ある教師は,最初の1月の棒グラフを記入させたら,持って来させる。

 できた子には,「よし」「よしできた」と言いながら,赤鉛筆で丸をつける。

 8割の子は,一度でできるだろう。この子たちは残りも全部できるはずだ。

 多くの子が,できなかったら,最初の説明が悪いのであり,全体をストップして,修正する必要がある(しかし,修正は,1回目の説明の何十倍も難しい。だから教師は,一度の短い説明で,分かりやすく工夫することが大切だ)。

 1回棒グラフを書いて「教師にほめられる」のである。

 すぐれた教師は,1時間の授業で,何回もほめる場をつくっている。

 間違えた2割の子には,「おしい,もう一度」などと言ってやり直しさせる。

 間違えた子のかなりの子が,正しく書き直してくる。友達に教えてもらう子もいる。「間違い直し」を,教師は「よくできたね」と,ほめながら丸をつけるのである。

 残った2,3人には,教師が書いてやったり,赤鉛筆で薄く書いてやったりして,指導するのである。

 このように,教育では「区分け」をすることが大切だ。

 本を読むときも「タイトル,作者」を読むのか?そこで,一言説明するのか。

 段落ごとにストップするのか,最後まで通して読むのか?「会話」の部分をどう表現するのか。このくらいのことは,準備しなければならない。

7)「読み聞かせ」の発展の方法をどうするのか。

 同じ本を何日も読んでいると,子どもは親と一緒に読むようになる。

 「一緒に読んでみよう」ということになることもあろう。

 「お父さんが読んだところを,恵理子が1人で言ってみて」と,いうこともあろう。

 文字は読めなくても,口伝えでまねをするようになるのである。

8)最後は,1人で読ませて,ものすごくほめてやることになろう。

 これらの「本の読み聞かせ」は,「1つのシステム」である。「読み聞かせ」をしてもらった子どもは,こうして「文字」を覚え,「ストーリー」のおもしろさを覚えていく。

 お手本としての両親のまねをしながら,身につけていくのである。

 こうしたことを,何年か続けていくうちに子どもは「自分で本を読む」ようになる。さらには,「自分で物語をつくる」ようにもなっていくのである。

 向山型算数で授業をすると,子どもたちは学び方を身につけていく。

 単元ごとに「1つのまとまりの内容」を学習することを理解する。

 「単元」は,「3つか4つの小さな部分」から成り立っていることも分かる。

 「1つの小さな部分」は,「1回の授業で完了」することもあるし,「2回か3回,少しずつ難しくなっていく」ことも分かる。

 そして,大切なことは毎時間の学習の方法を身につけることだ。

 授業の最初に「例題」という典型問題を学習する。

 それを解くためのヒントが,イラストや線分図,吹き出し等で教科書に書いてある。

 問題文を読み,式を書く。分からなければ,式は教科書に書いてある。

 計算をして,答えを書く。

 「3点セット」は,大切なまとまりだ。

 例題を解くと,ほとんど同じような練習問題が出てくる。

 今,解いたのと同じだ。すぐできる。

 その後に,問題が並んでいるのである。

 1問は先生に丸をつけてもらい,早くできた子は,黒板に書く。分からなければうつしてもいい。

 この一連のシステムが,教科書を使った学習であり,これを身につけることで,学力も学習方法も向上するのである,向山型は方法記憶まで踏み込む。

 これが,子どもに満足感をもたせ,安定感を与えることになる。

 向山型算数では子どもが熱中し,問題解決学習では教室が乱れるのも「子どもの充足感」によるのである。

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