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巻頭論文
算数授業へのこだわり
「百マス計算」の検証は,公明正大に!
向山洋一
1.百マス計算は「害悪が極めて多い」という実践報告,調査報告が全国各地,北海道から沖縄までの各県から寄せられている。
私は,4つの「教育雑誌」での「徹底検証」を呼びかけた。それは,全国各地で「テレビ報道」に惑わされた親たちが,家で「百マス計算」で子どもを駆りたてている状況が生まれているからである。その結果は,悲惨だ。子どもはいやがり,親が途方にくれる状態が続出している。教育界の一員として,このことを見のがしておいたら,後悔すると考えている。
私の仮説は次の二つである。
(1) 百マス計算は害の方が,はるかに大きい。
〈そのことの全国規模での調査と理論的解明〉
(2) 宣伝塔の役割りをしている蔭山実践に信じられぬ点がある。
・例えば本当に多数の国立一流合格者が蔭山学級から出たのか。
・例えば勉強のできない子ができるようになったのか。
・例えば「こんなことができないのか」とどなったり,たくさんの宿題を出したり,やってこない子をきびしく叱ったり,時に体罰をしたことはなかったのか。
〈これらのことは,「学会」「専門家」による聞きとり調査をすれば,明らかである。
蔭山実践をたたえ,広める中心になってきた方々は,上記にかかわる責任を持つ。
とりあえず,上記の「検証」に反対の方は投稿をいただきたい。雑誌の誌面をあけて掲載することをお約束する。
2.「百マス計算」の実践には,重要な不透明の部分がある。
(1) 百マス計算の発生についてである。
現在,多くの人は蔭山先生が考えたのだと思っている。そう思わせる言動が蔭山先生の中にあった。もちろん違う。
(2) 落ち研の岸本先生が考え出したのだと思っている人も多い。これも違う。
(3) 岸本学級の生徒が考え出したという人も少しいる。岸本先生が,後に著書で書いているからだ。子どもが考え出したのでもない。
向山は,かなり昔から,「朝日新聞」の連載に40年以上も前に載ったものだと主張してきた。朝日新聞の連載記事に大きく載ったのであるから,「知らなかった」ではすまされない。
大阪,神戸の先生方の中では,40 年前にはよく知られた方法だったのだ。
これは,後に『勉強力をつける』として,出版もされた。
昭和38年7月の発行である。ベストセラーになった本だ。算数は50回近く連載された。
執筆者は左の通りである。
黒松先生は,「大阪書籍」の算数教科書の中心的な執筆者だ。関西地区で大阪書籍の算数が最も使われている。他社は,まるで「入れない」ほどなのだ。
「朝日新聞で連載された」「出版され,ベストセラーになった」「執筆者の中心は黒松先生であり大阪書籍教科書の指導者だった」,その結果としての「百マス計算」である。
このことを,関西の「落ち研」や「蔭山先生」が知らないではすまない。
研究にとって,これは極めて重要なことなのである。
自然科学者の世界で,このような重要なことを,「知らなかった」り「かくした」りして長い間,「自分たちの発明」として発表を続ければ,学問の世界から追放されることなのだ。
「百マス計算」は,「誕生のいわれ」からして不透明なのである。
3.40 年前,朝日新聞に発表された「百マス計算」は,次のようであった。
かけ算九九は,一応の理解ができたら,あとは一にも二にも練習です。いまの算数は,たしかにこどもたちの理解と納得の上に立って学ぶのですが,それだけに練習では,徹底してこどもの力を鍛えねばなりません。九九はとくにそうです。家庭でしていただける効果的な練習法を申上げましょう。
@ A図のようにます目を入れた紙に,上と左横の数字を,毎日順序をかえて書き,あいたます目に答えを全部入れさせる。
A B図のようなカードを作って,できたものから区別していく。
B C図のように,細長い紙に2から9までの数字を適当に書込んで,隣同士の数の九九の答えをいわせる。これには,誤りやすい4や7や8を多く書込む。
黒松先生たち,大阪書籍教科書執筆グループの算数教育の能力の高さは,蔭山先生の比ではない。さすがに,教科書を書く人だったと思う。
(1) 百マス計算を「かけ算九九」の練習に限定している。
これは,極めて大切なことで,「足し算」「引き算」をやると,「害」が多発するのである。体験した先生方も,いっぱいいると思う。
(2) 百マス計算は,「かけ算九九の一応の理解ができた後」でやることと限定している。
つまづきは,個々の子どもによって原因が違う。その一つ一つを,正してやるのが教師の大切な仕事だ。
ところが,「百マス計算」では,「つまずきのある子」「かけ算九九が十分でない子」にも,とり組ませている。
つまずいている子に何十回やらせても時間の無駄だ。
「答えあわせをしない」と蔭山先生は言ってるが,間違いは,そのままになる。
(3) かけ算九九の三つの練習方法の一つとして紹介している。
かけ算九九の練習方法は様々ある。現在は,「TOSSランド」を活用した「かけ算ファイター」が,全国で大人気だ。アクセス数もうなぎのぼりで,多くの学校で活用している。
「かけ算ファイター」と「百マス計算」どちらが良いか,どちらが勉強になるか,子どもに聞けば一発で分かる。
朝日新聞の3つの練習方法の中では,2つ目の「カード式」をすすめる。
それは,すぐに「答えあわせ」ができるからだ。これなら間違った子も自分で直せる。
(4) ストップウォッチで,子どもを駆りたてることをしてない。
百マス計算は,「勉強のできる一部の子」は喜ぶ。しかし「勉強のできない子」はいやがり,拒否するようになる。
それのみが,「競争にさらされ」て,自信をなくし,やる気をなくしていく。
反抗的な態度が,教室で見られるようになる。多くの先生方が,体験していることだ。
それは,「間違えた子への対応」や「五の合成分解」「十の合成分解」などの計算の基本に全く対応してないからである。「百マス計算」の練習帳は驚くほどに「算数計算指導の定石」に無知である。
「あかねこ計算スキル」は,もちろん「五の合成分解」「十の合成分解」を,サクランボ分解,ブロック合成,百玉そろばんなどで十分に練習するよう作られている。
(5) 学校でやるのではなく,母親が教える一つの方法としている。
百マス計算は,できる子なら2,3分で終る。しかし,できない子は20 分やっても終わらない。できる子はあきて,できない子はつっぷす。
これを教室でやると,授業のアンバランスが激しい。個人対応でやるべき教材なのである。
学校でやれば,「貴重な授業時間」が大幅にカットされる。極めて非効率なのだ。
「勉強ができない子」が,「できるようになった」「算数大好きになった」「テストで初めて百点をとった」「クラス平均が90 点を超えた」という事実は百マス計算からは生まれてこない。
勉強のできない子に,とことん冷たい方法なのである。
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