向山型算数教え方教室 2003年9月号
TT・少人数・習熟度別学習の「混乱」克服の手立て

V050

«前号へ

次号へ»

向山型算数教え方教室 2003年9月号TT・少人数・習熟度別学習の「混乱」克服の手立て

紙版価格: 943円(税込)

送料無料

電子版価格: 848円(税込)

Off: ¥95-

ポイント還元20%

ファイル形式

PDF
ジャンル:
算数・数学
刊行:
2003年8月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
出荷:
ダウンロード
定期購読

目次

もくじの詳細表示

特集 TT・少人数・習熟度別学習の「混乱」克服の手立て
自己満足の不勉強教師が担当することで起こる混乱を工夫で乗り越える
赤石 賢司
子どもの事実を最優先すれば,必ず道は開ける
戸井 和彦
子どもの事実を作っていくのが私の仕事
山川 花子
ベテラン教師の指導教官型TT
中野 慎也
子どもの事実で共通理解を図る
井田 惠
TTを進める3つのポイント
□□□□□
子どもの事実は何よりも強し!
上杉 圭子
ミニ特集 ズシンと手応えを感じた「このワンシーン」
みんなと同じに出来る喜び
乙津 優子
どんな子にも笑顔を生み出す向山型算数
木村 伸一
赤鉛筆をなぞらせる指導は,温かい
藤田 貴也
向山型算数は,説明しない,教えない
三浦 一心
事実から目を反らすまい
加藤 延啓
1年後も子どもの心に残る向山型算数
尾形 はじめ
グラビア
グラフ,表のかきかたはスモールステップの原則で
村田 斎
向山型算数キーワード
子どもの視線
木村 重夫
論文ランキング
6月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
「百マス計算」の検証は,公明正大に!
向山 洋一
学年別9月教材こう授業する
1年
10より おおきい かず
白井 朱美
20までのかず
水野 彰子
2年
ひっ算のしかたをかんがえよう
細井 俊久
ひっ算のしかたをかんがえよう
尾上 知生
3年
わり算
八巻 貴義
あまりのあるわり算
小松 和重
4年
式と計算
河野 健一
三角形のなかまをしらべよう
馬場 慶典
5年
小数の掛け算とわり算(2)
齋藤 強
小数のかけ算とわり算を考えよう
堤 緑
6年
単位量当たりの大きさ
竹森 正人
平均
中山 孝志
向山型算数に挑戦/論文審査 (第46回)
あくまでシンプルにスッキリと
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第48回)
垂直・平行の作図を向山型で授業する
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第48回)
具体的にイメージさせることお金は極めて効果的な方法である
尾崎 文雄
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第17回)
向山型算数は同僚の意識も変える
杉原 進
向山型算数WEBサロン (第42回)
商の修正があるわり算の筆算の教え方のチェックポイント 前半
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第42回)
「できる」ことを基に「できない」ことを「できる」ようにさせる
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第6回)
親と教師が授業論で盛り上がる空前絶後の指導法,それが向山型算数
松崎 力
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
低学年/数の不思議発見「知的なたし算」
中橋 利之
中学年/学級がシーンとなり,どの子も集中する数字の魔法
畑屋 好之
高学年/全員が燃えたえんぴつころがしゲーム
山本 純
中学/根号を使わなければならない場面を設定する
佐々木 章子
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第48回)
低学年
太田 健二
中学年
八巻 修
高学年
野崎 隆
衝撃のライブ体験「向山洋一の介入模擬授業」を受けて
3秒での介入3連発で初めて見えたこと
根本 直樹
模擬授業は子どもを想定して行え!=教科書研究を怠るな=
木村 孝康
向山型算数セミナー
2004年の算数セミナー会場が決定しました!!
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
転機は1ヵ月目に訪れた
深野 美保
実感!赤えんぴつ指導の威力
高田 寛道
「赤鉛筆思想」の優しさを実感
高橋 和夫
子どもの集中力が違う!
木田 庄継
わかる・できる・楽しい向山型算数
御子神 由美子
向山型算数は心地よく流れる
田中 公男
先生,算数っておもしれぇ
斉藤 維人
自由投稿フリーページ
木村 重夫乙津 優子
実物ノートと指導のポイント
1マスに1文字ずつ書かせる
細羽 朋恵
読者のページ
百マス計算と向山型算数の徹底対比!
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第48回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

「百マス計算」の検証は,公明正大に!

向山洋一


1.百マス計算は「害悪が極めて多い」という実践報告,調査報告が全国各地,北海道から沖縄までの各県から寄せられている。

 私は,4つの「教育雑誌」での「徹底検証」を呼びかけた。それは,全国各地で「テレビ報道」に惑わされた親たちが,家で「百マス計算」で子どもを駆りたてている状況が生まれているからである。その結果は,悲惨だ。子どもはいやがり,親が途方にくれる状態が続出している。教育界の一員として,このことを見のがしておいたら,後悔すると考えている。

 私の仮説は次の二つである。

(1) 百マス計算は害の方が,はるかに大きい。

 〈そのことの全国規模での調査と理論的解明〉

(2) 宣伝塔の役割りをしている蔭山実践に信じられぬ点がある。

  ・例えば本当に多数の国立一流合格者が蔭山学級から出たのか。

  ・例えば勉強のできない子ができるようになったのか。

  ・例えば「こんなことができないのか」とどなったり,たくさんの宿題を出したり,やってこない子をきびしく叱ったり,時に体罰をしたことはなかったのか。

 〈これらのことは,「学会」「専門家」による聞きとり調査をすれば,明らかである。

 蔭山実践をたたえ,広める中心になってきた方々は,上記にかかわる責任を持つ。

 とりあえず,上記の「検証」に反対の方は投稿をいただきたい。雑誌の誌面をあけて掲載することをお約束する。

2.「百マス計算」の実践には,重要な不透明の部分がある。

 (1) 百マス計算の発生についてである。

  現在,多くの人は蔭山先生が考えたのだと思っている。そう思わせる言動が蔭山先生の中にあった。もちろん違う。

 (2) 落ち研の岸本先生が考え出したのだと思っている人も多い。これも違う。

 (3) 岸本学級の生徒が考え出したという人も少しいる。岸本先生が,後に著書で書いているからだ。子どもが考え出したのでもない。

 向山は,かなり昔から,「朝日新聞」の連載に40年以上も前に載ったものだと主張してきた。朝日新聞の連載記事に大きく載ったのであるから,「知らなかった」ではすまされない。

 大阪,神戸の先生方の中では,40 年前にはよく知られた方法だったのだ。

 これは,後に『勉強力をつける』として,出版もされた。

 昭和38年7月の発行である。ベストセラーになった本だ。算数は50回近く連載された。

 執筆者は左の通りである。

 黒松先生は,「大阪書籍」の算数教科書の中心的な執筆者だ。関西地区で大阪書籍の算数が最も使われている。他社は,まるで「入れない」ほどなのだ。

 「朝日新聞で連載された」「出版され,ベストセラーになった」「執筆者の中心は黒松先生であり大阪書籍教科書の指導者だった」,その結果としての「百マス計算」である。

 このことを,関西の「落ち研」や「蔭山先生」が知らないではすまない。

 研究にとって,これは極めて重要なことなのである。

 自然科学者の世界で,このような重要なことを,「知らなかった」り「かくした」りして長い間,「自分たちの発明」として発表を続ければ,学問の世界から追放されることなのだ。

 「百マス計算」は,「誕生のいわれ」からして不透明なのである。

3.40 年前,朝日新聞に発表された「百マス計算」は,次のようであった。

 かけ算九九は,一応の理解ができたら,あとは一にも二にも練習です。いまの算数は,たしかにこどもたちの理解と納得の上に立って学ぶのですが,それだけに練習では,徹底してこどもの力を鍛えねばなりません。九九はとくにそうです。家庭でしていただける効果的な練習法を申上げましょう。

 @ A図のようにます目を入れた紙に,上と左横の数字を,毎日順序をかえて書き,あいたます目に答えを全部入れさせる。

 A B図のようなカードを作って,できたものから区別していく。

 B C図のように,細長い紙に2から9までの数字を適当に書込んで,隣同士の数の九九の答えをいわせる。これには,誤りやすい4や7や8を多く書込む。

 黒松先生たち,大阪書籍教科書執筆グループの算数教育の能力の高さは,蔭山先生の比ではない。さすがに,教科書を書く人だったと思う。

(1) 百マス計算を「かけ算九九」の練習に限定している。

   これは,極めて大切なことで,「足し算」「引き算」をやると,「害」が多発するのである。体験した先生方も,いっぱいいると思う。

(2) 百マス計算は,「かけ算九九の一応の理解ができた後」でやることと限定している。

   つまづきは,個々の子どもによって原因が違う。その一つ一つを,正してやるのが教師の大切な仕事だ。

   ところが,「百マス計算」では,「つまずきのある子」「かけ算九九が十分でない子」にも,とり組ませている。

   つまずいている子に何十回やらせても時間の無駄だ。

   「答えあわせをしない」と蔭山先生は言ってるが,間違いは,そのままになる。

(3) かけ算九九の三つの練習方法の一つとして紹介している。

   かけ算九九の練習方法は様々ある。現在は,「TOSSランド」を活用した「かけ算ファイター」が,全国で大人気だ。アクセス数もうなぎのぼりで,多くの学校で活用している。

   「かけ算ファイター」と「百マス計算」どちらが良いか,どちらが勉強になるか,子どもに聞けば一発で分かる。

   朝日新聞の3つの練習方法の中では,2つ目の「カード式」をすすめる。

   それは,すぐに「答えあわせ」ができるからだ。これなら間違った子も自分で直せる。

(4) ストップウォッチで,子どもを駆りたてることをしてない。

   百マス計算は,「勉強のできる一部の子」は喜ぶ。しかし「勉強のできない子」はいやがり,拒否するようになる。

   それのみが,「競争にさらされ」て,自信をなくし,やる気をなくしていく。

   反抗的な態度が,教室で見られるようになる。多くの先生方が,体験していることだ。

   それは,「間違えた子への対応」や「五の合成分解」「十の合成分解」などの計算の基本に全く対応してないからである。「百マス計算」の練習帳は驚くほどに「算数計算指導の定石」に無知である。

   「あかねこ計算スキル」は,もちろん「五の合成分解」「十の合成分解」を,サクランボ分解,ブロック合成,百玉そろばんなどで十分に練習するよう作られている。

(5) 学校でやるのではなく,母親が教える一つの方法としている。

   百マス計算は,できる子なら2,3分で終る。しかし,できない子は20 分やっても終わらない。できる子はあきて,できない子はつっぷす。

   これを教室でやると,授業のアンバランスが激しい。個人対応でやるべき教材なのである。

   学校でやれば,「貴重な授業時間」が大幅にカットされる。極めて非効率なのだ。

 「勉強ができない子」が,「できるようになった」「算数大好きになった」「テストで初めて百点をとった」「クラス平均が90 点を超えた」という事実は百マス計算からは生まれてこない。

 勉強のできない子に,とことん冷たい方法なのである。


    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ