生活指導 2007年11月号
「困っている子」が生きる教室・学校を

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生活指導 2007年11月号「困っている子」が生きる教室・学校を

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2007年10月5日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 「困っている子」が生きる教室・学校を
「困っている子」が生きる教室・学校を
井本 傳枝
実践・小学校
ユウスケへの指導を振り返る
猪野 善弘
実践・中学校
「負けたのは僕のせいだ。」
岸田 幸雄
実践・養護学校高等部
どんな人でも変われるか
渡辺 実生
分析
「困っている子」の自立と共同を紡ぐ教師の役割
湯浅 恭正
論文
「困っている子」の発達権保障と子ども集団づくりの課題
楠 凡之
第2特集 学校が壊れる―いまこそ、教師の同僚性を
教務主任の立場から
守る、生かす、育てる
松原 憲治
臨時教師の立場から
“同僚性”の一番大事なこと
千葉 純一
主幹の立場から
仲間とつながるために
笠松 和洋
教諭の立場から
ロマンと初心と誇りを思い起こして
奈良 光一
論文
教師の人間形成と同僚性
間宮 正幸
今月のメッセージ
千の風になって、こころの中に生きている。
篠崎 純子
私の授業づくり・道徳 (第8回)
小学校/島小子どもの権利憲章と道徳教育
植田 一夫
中学校/大事にしている道徳の定番授業
川辺 一弘
実践の広場
学級のイベント
休み時間の学級レクを班で交替して企画してみよう!
今泉 教秋
学年・学校行事
自治の力をちょっぴり育んだ2学年“親子夏祭り”
瀬成田 実
学びの素材
日本国憲法を学ぶ
石井 幸雄
子どもの生活を見る
学年お楽しみ会から見える子どもたちの文化
柳田 良雄
部活動・クラブ活動の工夫
たかが部活動、されど部活動
野村 紀子
心に残る子どもとの対話
「俺ばかり注意する」と訴えたマー君
相馬 幸夫
手をつなぐ―親と教師
特別支援学級の担任として
武上 譲二
掲示板Y・O・U
荒木 綾おがわ せせらぎ
ホッと一息・コーヒータイム
私のオフタイム
高橋 敬二
マンガ道場
猪俣 修
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
教員免許更新制議論の現在
藤井 啓之
風の声―この人に聞く
子どもたちと若い世代に「戦争体験」を伝えたい
釋 鋼二
読書案内
『〈民主〉と〈愛国〉』『日本の大国化は何をめざすのか』
鈴木 和夫
読者の声
9月号を読んで
シリーズ/各地の実践
北海道
戸田 範子
〜「ぼくは、じゃま者みたいだから……」〜
全生研の窓
編集室だより
編集後記
井本 傳枝

今月のメッセージ

千の風になって、こころの中に生きている。

常任委員 篠崎 純子


「コーチがノック中に倒れました。」という電話を受けて、まさかと思いながら病院に急ぎました。ユニホームのままベッドに横たわっていたのは、あの人一倍元気なコーチでした。意識は戻らず痛ましい姿でしたが、その荒い呼吸は、死と必死に闘っているいつもの強いコーチでした。

彼は私がかつて受け持った荒れたクラスのゲンやシオン、力也達の少年野球チームの「鬼コーチ」です。普段はとても穏やかで楽しいお茶目な人なのに、野球の時には妥協を許さず、ゲン達も「コーチ」というと背筋がぴんと伸びる、そんな迫力のある人でした。

ある時偶然、ゲンたちの担任が私だと分かると、彼は熱っぽく子どもたちのことを語り始めました。コーチ歴二十数年の彼も、教師歴三十年の私も、一致したのは「未だかつてみたことのないような指導が大変な子どもたち」ということでした。

コーチ「ゲンはまだ野球を始めたばかりなので、技術的にはまだまだなのはあたり前なのに、すぐキレる。」

私  「そうなんですよ。まったく。」

コーチ「でも、あれは仲間にあたっているように見えるけど、へたな自分にいらついてキレてるように思えるんだよ。刃向かうように見えるけど甘えかも知れないな。何でもいい。何かをやりぬいて自信をつけてやりたいんだ、ゲンに。」

ゲンの暴力に疲れていた私はそのことばに答えることもできず、きっと暗い顔をしていたのだと思います。するとコーチは「先生も大変だな。もし、ゲンが暴れたら『コーチに言う』と一言言ってみな。」と励ましてくれました。果たしてその通りで、何度それで蹴ったりなぐったりの暴走するゲンを止めることが出来たかわかりません。

しかし、そのことばを言わなくてもよくなったかなと思い始めた頃、ゲンたちは自主練をグループを組んではじめたのです。夕焼けの光の中、力也や翔たちにボールの捕り方や撃ち方を教わるゲンの姿はひたむきで、私はそーっとそーっとかげで見つめていました。

しばらくすると、ゲンがどうして友達をなぐってしまったのかを代わりに言ってくれる翔や力也たち友達ができたのです。ゲンはそのとき初めてみんなの前で泣きました。ありのままの自分をさらけ出しても分かってくれる居場所ができたのだと私は思いました。それは「決して見放さない」というあたたかく厳しい指導のスタンス、多様な練習方法を監督・コーチが討議しながら繰り返して取り組むという集団的な指導法、何よりチームの子どもたちの関係づくりを大切にしていることなど、多くのことを学びました。保護者・地域、そして子どもたち自身、たくさんのものに支えられて子どもたちを巡るドラマが創られていくということも……。そのプロデュースが教師の仕事の一つということも……。ゲンたちが六年の時、全国大会に出場するチームになっていきましたが、野球を通してかっこ良いのも悪いのも、幸せも不幸せもすべてひっくるめて「生きる」すばらしさということを、コーチは一番語りたかったのではないでしょうか。

夏休みの最後の日、コーチは千の風になりました。今もこころの中でいろいろなことをささやいている風になりました。

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