生活指導 2011年10月号
東日本大震災と教師・子どもたち(1)―現地からの報告

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生活指導 2011年10月号東日本大震災と教師・子どもたち(1)―現地からの報告

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2011年9月7日
対象:
小・中
仕様:
A5判 123頁
状態:
絶版
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目次

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特集 東日本大震災と教師・子どもたち(1)―現地からの報告
特集のことば
東日本大震災と教師・子どもたち(1)―現地からの報告
高橋 英児
現地からの報告
岩手より・1/大震災の被災、仲間からの支援、そして現在の私たち
濱口 智
岩手より・2/勝手ながら…チーム「立ち上がれ!内陸!三陸を救え!」プロジェクト
澤野 郁文
宮城より・1/「学校って、本来何をしなければならないのか」―東日本大震災下で考えたこと
佐藤 昭彦
宮城より・2/町が消えたあの日のこと。そして、あの日からのこと
藤坂 雄一
福島より・1/分断された町・学校・家族―原発から30キロ圏内の現状―
数間 靖徳
福島より・2/震災後の対応と取り組み―いわき市からの報告
山口 智史
千葉より/3・11の学校の状況とその後
小林 豊
山形より/今、生きている私の命―考え、動き出すことの大切さを実感した大震災―
田中 洋子
近隣自治体より/過酷な現状から明日の希望へ―避難所の現場からA
おがわ せせらぎ
解説
自然の脅威に目覚めさせられた人間的自然
藤井 啓之
第2特集 小規模学校の魅力
実践報告
【実践報告1】やりがいと学びが詰まった、閉校目前の小中併置校
倉持 利江子
【実践報告2】一人一人に出番と輝きを―統廃合の前に考えたいこと―
鈴木 正
【実践報告3】ふるさとの学校―学校は地域の文化センター―
堀 逸郎
論文
個々の子どもに対応する小規模校の魅力と生活指導・学習指導の可能性
玉井 康之
今月のメッセージ
今、若い教師が生きやすい職場を
齋藤 修
私の授業づくり (第31回)
小学校〈国語科〉/子どもたちの疑問・思いが授業を創造する
伊藤 均
〜国語の読みとり〜
中学校〈家庭科〉/パワーポイントを使った調理実習の授業
中嶋 たや
〜調理手順をイメージしやすい授業のために〜
実践の広場
子どもの生活・文化・居場所
Aくんの願いから始まった平和学習
国澤 しずの
子どもをつなぐ活動・行事
進路の問題に取り組む中で…
大澤 博
いきいき部活・クラブ
サッカー同好会でエネルギー発散
柳田 良雄
手をつなぐ―教師・親・地域の人々
地域の歴史を子どもたちや大人に
河野 茂
私と集団づくりとの出会い
荒れた学校の生徒会指導を通して知った集団づくり
五十嵐 晋
〜能重先生との出会い〜
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
せつなに蝕まれる子ども達
玉木 博章
〜若者文化の教材化を通して〜
使ってみよう!実践グッズ (第6回)
学級内クラブをつくって、みんなで楽しもう
森 芽衣
若者の広場 (第6回)
私の実践紹介します
水木 優太
〜「ともだちや」を作る〜
北から南から
サークルだより・静岡
原田 光三
〜続けることが力に〜
読者の声
8月号を読んで
【震災関連特別寄稿】津軽っ子ネットワーク
三上 拓郎
全生研の窓
村越 規雄
編集室だより
井本 傳枝
編集後記
高橋 英児

今月のメッセージ

今、若い教師が生きやすい職場を

常任委員 齋藤  修


若い教師が倒れていく。厳しい教員採用試験を乗り越え、希望を持って正規採用の教師になった若者が、途中で教師を続けられないと職場を去っていく。

4月、大きな希望を抱き、担任として自分の学級を、自分の力でつくりだせる喜びを身体一杯に感じながら、教師としての第一歩を踏み出していく。しかし、4月の後半になると、提出文書の多さや会議の連続で教材研究も十分にできない状態になり、ストレスを抱え込んでしまう。年度当初はベテランの教師でさえ乗り切るのが大変である。教科や校務分掌の年間計画の作成、授業参観、保護者会の準備、クラスの連絡網や児童名簿の作成等、次々と提出日の締め切りが迫ってくる。

若い教師が職場に増えるにつれて、教育現場はベテラン教師と若い教師との二極化現象を生み出し、若い教師の仕事の負担が大きくなっている。多くの若者が部活動を担当し、朝は6時半には家を出て7時からの朝練を指導し、帰宅は10時過ぎ。そのために毎週土曜日は必ず出勤し、1週間分の教材研究や授業の準備をしなければ追いつかない。

さらに、若い教師を苦しめるのが学校体制である。子どもとの対話を大切にし、子どもの思いに寄り添える教師になりたいと思いながらも、学校体制は彼らの思いを受け入れない。教室の中から、子どもを恫喝し、力で支配しようとする大きな声が廊下に鳴り響く。職員室では同僚の陰口を耳にすることもあり、自分のことを言われているのではないかと恐怖さえ感じるという。指導教諭や学年の教師から「先生の指導は甘い、きちんと躾けてほしい」「子どもに寄り添うことより、強い指導が必要だ」と言われると、教師としての自信が大きく揺らいでいく。

ある若い教師は、5月の連休が明ける頃には子どもの前で笑うことがなくなっていったという。学年で集まると、自分のクラスの落ち着きのなさが目立つようになり、他の教師から注意を受けることが多くなり、気が付くと自分も子どもたちを注意する場面が増え、子どもをほめることがなくなったという。

授業のこと、子どものこと、保護者のことなど、教師の悩みは尽きることがない。しかし、若い教師の苦しみは、その悩みを話せる仲間がいないことである。ある教師は「子どもが起こす様々な問題には耐えられる。でも職場に悩みを話せる仲間がいなくて、ダメ教師かのように私を見る周りの眼差しには耐えられなかった。同僚の前に出ると身体が硬直してしまう自分がいた。また保護者との関係も重かった」と、そのつらさを話してくれた。

今、多くの若者が職場の中で孤立し、悩みを語れずに苦しんでいる。職場には自己責任の考えが深く浸透し、失敗が許されず、遅れることが許されず、常に緊張状態が続いている。また、それぞれが自分のことで精一杯で、お互いを認め合う関係が成立しにくいのである。教師の共同がずたずたに切り崩され、どんなに頑張っても認めてもらえない無力感が、身体全体を覆い始めていく感じがする。今、このような状況が若い教師を苦しめ、教師であり続けることを難しくしている。

今、私たち教師に求められていることは、若い教師にその頑張りを認めてあげる言葉を、日常の中でたえずかけていくことであると思う。たった一言でいいのである。「がんばっているね」「大丈夫だよ」の言葉かけが、教師としての自信をとりもどしてくれる。「私は、指導教諭から10回指導を受けたより、たった一回、用務員さんが自分の話をきいてくれ、『大変だね』と言ってお菓子をくれたことが、とても大きな明日への活力になった」とつぶやいていた新任教師の言葉を思い出す。

若い教師が安心して生きられる職場は、誰もが安心して生きられる職場なのである。今こそ、若い教師と語り合い、その悩みに世代の壁を乗り越えて、共同して応えていくことのできる職場を目指していこう。

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