生活指導 2010年8月号
子どもの生きづらさから希望へ

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生活指導 2010年8月号子どもの生きづらさから希望へ

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2010年7月7日
対象:
小・中
仕様:
A5判 123頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 子どもの生きづらさから希望へ
特集のことば
子どもの生きづらさから希望へ
高橋 英児
子どもの生きづらさから希望へ
小学校
ようこそ、あやかワールドヘ
佐藤 順子
生きづらさの向こうに何が見えたのだろう〜相談室に通う子どもたちのつながりのドラマ〜
安原 昭二
分析コメント・小
子どもの今を生きる課題と要求に応答すること
鈴木 和夫
中学校
昌男と歩むクラスを
渡辺 一樹
ホームレス問題をどう考えるか
柏木 修
分析コメント・中
「包摂/排除」の枠組みを越える
船越 勝
第2特集 全生研第52回全国大会基調提案 〈反貧困〉に取り組む子ども集団づくりの課題を明らかにしよう
基調の課題
栗城 順一
基調提案
〈反貧困〉に取り組む子ども集団づくりの課題を明らかにしよう
基調提案小委員会
関連論文
反貧困に取り組む生活指導・子ども集団づくり
鈴木 和夫
今月のメッセージ
困っている子・困っている保護者・困っている教師〜対立から共同へ
大和久 勝
私の授業づくり (第17回)
小学校〈指導法〉/気持ちよく、授業をしよう
柳田 良雄
中学校〈国語科〉/物事の本質を洞察する力を
後藤 義昭
実践の広場
子どもの生活・文化・居場所
子どもを取りまく『環境』
坂本 太郎
子どもをつなぐ活動・行事
子どもがのってくる活動を
加藤 和男
いきいき部活・クラブ
やりたいことをみんなで決めて、みんなで楽しく活動するクラブ!
高尾 和伸
手をつなぐ―教師・親・地域の人々
Aの母親の助けを借りながら
手島 淳
私が教師を続けるわけ
家族と全生研の支えがあって
安原 房子
案内板 集会・学習会のお知らせ
追悼・城丸章夫/横川嘉範
元・全生研常任委員の城丸章夫さん、横川嘉範さんを偲ぶ
竹内 常一
〈発達障害〉の理解と支援―学級・学校・地域を育てる (第5回)
発達障害児の指導をめぐる論点
湯浅 恭正
子ども集団づくりの今がわかるQ&A (第2回)
子ども集団づくりと貧困(子ども集団づくりの方向性)
照本 祥敬
教育情報
コミュニティ・スクール(学校運営協議会)について―地域と学校の連携の可能性を探る―
釋 鋼二
読書案内
数の世界に触れる
子安 潤
若い教師からのメッセージ (第2回)
ともに学び支えあうつながりを!
岩本 訓典
〈できる教師像〉への憧れを乗り越えろ!
中嶋 淑也
地域生活指導へのアプローチ (第6回)
ひまわり学校の灯は消えず
前野 哲也
〜父母・子ども・教師で守り続けて38年〜
読者の声
6月号を読んで
全生研第52回全国大会案内
編集後記
高橋 英児

今月のメッセージ

困っている子・困っている保護者・困っている教師〜対立から共同へ

全生研常任委員 大和久 勝


◆「困った子は困っている子」=子ども観の転換

発達障害を持つ子の指導をめぐって、「困った子」は「困っている子」だという子ども観の大事さが広がってきていますが、「困った子」は発達障害を持つ子だけではありません。暴力をふるう、ものを壊す、ルール違反を繰り返すなど、数々の「困った」行動をとる子どもたちがいます。多くの子は「困った子」として見られています。時には、学校に行けない子、学習についていけない子なども「困った子」に見られたりもします。そして、教師とのすれちがい・対立を作り出しています。文科省の報告では、生徒間暴力、器物損壊だけでなく、対教師暴力も年々増えています。暴力・荒れの中に、自分の行き場を求めざるを得ないような子どもたちがいるのです。そんな子どもたちの声に耳を傾けてみることが大事ではないでしょうか。思いや願いを聞きとること、感じとること、そして、出会い直すことです。「困った子」は「困っている子」なのだという「子ども観」の転換は、子どもとの出会い直しを作りだす上で大事です。

◆困った保護者も困っている=保護者観の転換を

教師と保護者とのすれちがい・対立、保護者同士の対立・トラブルもよく聞きますが、そんな保護者も実は困っているのではないでしょうか。子育ての悩みを抱えている保護者は多いのです。家庭の責任、親の責任、自己責任を強調され、孤立する子育てのなかで「困っている親」は大勢います。子どもが抱える問題は、子ども自身はもちろんのこと、一家庭の問題ではありません。社会が子どもの変化や生きづらさをつくっているのですから、学校や教師に対する苦情(クレーム)は願いや期待の表現だと考えられます。モンスター、クレイマーなどと呼ばれる「困った親」は、実は「困っている親」なのだということです。「困った親は困っている親」という保護者観の転換によって、どの保護者ともつながっていけるようになるのではないでしょうか。子どもの後ろにいる保護者と向き合う上で、保護者の見方は重要です。困った子の後ろに困った親がいることが多いので、両方の見方の転換が同時に大事になります。

◆教師観や同僚観の転換も

多くの教師は、気になる困った子たちをどう指導したらよいか戸惑っています。ですから、「困っている教師」も多いのです。学校現場に支配的な成果主義と管理主義の中で、先生同士の同僚性(たがいに支え合う)が崩され、悩みを自らの中に閉じ込めてしまいがちです。保護者や子どもとのすれ違いや対立を起こしてしまう「困った教師」(子ども・親にとって)の多くは、「困っている教師」なのです。また、同僚として「困った」言動を持つ人たちも、実は「困っている同僚」なのではないでしょうか。教師としてどのように生きたらよいのか、どのように子どもや保護者と接したらよいのか悩んでいるのです。私たちが教職員の共同を考える時、そのような「教師観」「同僚観」への転換が重要なカギを握っています。閉塞した状況に直面している職場づくり・学校づくりを切りひらく上で大事です。

◆共感から対話、そして共同へ

以上のことをまとめて言えば、私たちに求められているのは、「困っている子」「困っている親」への共感と「困っている教師(同僚)」への共感です。しかし残念ながら、私たちの身の回りでは、様々な形のすれちがい・対立が起きています。対立から共同へ転換することは、けっして簡単なことではありませんが、ここで大事なのが粘り強い対話です。子どもとの対話はもちろんですが、どのような親とも同僚教師とも、子どもをまん中にして考え、対話するなら、つながりあうことができます。共に育ち合うこともできます。「共感」「対話」「共同」―それがおとな、子どもに共通した、未来を拓く力です。

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