生活指導 2007年10月号
困ったとき、悩んだときの指導・8つのヒント

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生活指導 2007年10月号困ったとき、悩んだときの指導・8つのヒント

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2007年9月6日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

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特集 困ったとき、悩んだときの指導・8つのヒント
困ったとき、悩んだときの指導・8つのヒント
井本 傳枝
授業中の私語、立ち歩きに悩んでいる
小学校/子どもの生活からしみでる要求を授業に生かす
志賀 廣夫
中学校/先ずは冷静な分析。そして仲間の力を借りて
橋本 尚典
掃除・給食当番をやらないので困っている
小学校/子どものやる気を引き出して
松田 圭一
中学校/困っているのは…
菅原 浩敬
男女の対立に悩んでいる
小学校/困った時は、一からやり直し
磯野 眞弓
中学校/対立から和解へ
西原 祐一
学級のいじめ問題が深刻である
小学校/いじめのないクラスに
青山 翔
中学校/「生きる」ことの困難な子どもと共に生きる
篠田 涼子
登校しぶり・不登校の子どもがいる
小学校/「安心していいんだよ。みんな、待ってるよ。」
松下 敦子
中学校/他者に対する信頼の回復を
森 拓人
話し合いができずにいて困っている
小学校/どうして黙っているの?
滝 研一
中学校/時間と仲間を保障して
佐藤 くみ子
保護者とのもめごとに悩んでいる
小学校/共感的に聞き、つながりをつくっていこう
佐藤 さく子
中学校/教師は親のターゲット?!
松本 聖子
学年の先生とうまくいかない
小学校/いつか戦友に変わるかも?
奈良 光一
中学校/「うまくいかない」があたりまえ
上木 洋一
第2特集 “学校外”の子どもの生活と文化―大人の知らない子どもたち
レポート・小学校
放課後の事件が問いかけていること
原田 真知子
子どもの側からのぞいてみること
橋元 義文
レポート・中学校
放課後―それは携帯コミュニケーション??
加納 昌美
ゲームセンターやスーパーで過ごす休日の子どもたち
中村 英輔
論文
学校と家庭・地域との「あいだ」を問う
鈴木 庸裕
今月のメッセージ
変身のときに立ち会う
赤羽 潔
私の授業づくり・道徳 (第7回)
小学校/教えた子らに送る道徳(メッセージ)
豊田 健三郎
中学校/子ども達の生活現実から出発した道徳の授業
高桑 敦子
実践の広場
学級のイベント
学級担任じゃない人も
沼山 隆一
学年・学校行事
クリスマスフェスティバル
相模 津
学びの素材
力を合わせて全員リレー!
澤野 郁文
子どもの生活を見る
中学生とブログ
中西 潤
部活動・クラブ活動の工夫
部活動って難しい
千坂 朋広
心に残る子どもとの対話
何ごとも楽しみましょう
おだ まり
手をつなぐ―親と教師
「参加」と「共同」の学校づくり
後藤 義昭
掲示板Y・O・U
小林 福太郎梅木 和美
ホッと一息・コーヒータイム
私のオフタイム
田中 隆司
マンガ道場
猪俣 修新田 行雄
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
分断・崩壊する社会と教育
藤井 啓之
北から南から
各地の基調提案 愛知
池田 憲一
〜憲法・47教育基本法の理念に学び、子ども集団づくりを共同で進めよう〜
読者の声
8月号を読んで
指標の改正について
折出 健二
全生研の窓
編集後記
井本 傳枝

今月のメッセージ

変身のときに立ち会う

山口県立大学 赤羽  潔


木の葉が色づきはじめる季節がやってきた。実りの秋を彩る木々の葉も実も、次第に旅立ちの準備を整えてきているようだ。変身のとき、新しい自分を誕生させるとき。そんなときへの思いに、一人の学生の姿が重なった。ある日、一人の学生Sさんが『退学届け』を持ってきた。

「先生に言ってなかったのですが、実はいままで二回退学届けを出したことがあります。その都度、『せっかく大学に入ったのだから』とチューターに言われて、ひっこめてきました。でも、やはり自分がここにいる理由がわからないんです。だから、けじめをつけたいんです。」

「そうか、知らなかった。だらだら行くのがいやなんだ。私も大学だけが生きる場所じゃないと思う。だから、あなたの結論と決断に拍手したい。よし、ゼミ生と『お別れ会』をしよう。」

「えっ、『お別れ会』ですか?」

「そう。だって、あなたが自分の人生を納得いくものにしようとして出した結論。新たな一歩を踏み出す決断をしたのだから、ステキなことじゃない?笑顔で送り出すのは当然と思うよ!」

「先生って、変な人ですね。止めるのが普通なのに。」

Sさんは、明るいトーンの中で、「もうちょっとだけ、がんばってみようかな…」と言った。

彼女とかかわって三ヵ月、徐々に過去と現在のつながりが見えてきた。「人とかかわることがつらい」「積極的に活動する友だちのことが怖い!」「小学校の時にはとても明るかった。が、いつの間にか自分を閉ざすようになった」「小・中・高と、不登校や保健室登校を重ねてきた。そのスタイルの歩みが今も続いている」「これからもそんな状態が続くのではないかと思うと不安」という。

一ヶ月前のある日、パニックを起こしたSさんが電話をかけてきた。泣きじゃくっていた。私は「出張から帰ったら話そう」と返した。その時間が、彼女のふりかえりの時間になることを期待して。そして、話してみて分かった。その揺れの中には、それまでとは違うSさんがいた。仲間への魅力を感じはじめた彼女である。誕生会を自分たちで企画し、学習の進め方についても自分たちで考え、合宿の際には地域の方々と「よさこい」を競演しようとプログラムを組む仲間たち。そんな仲間たちに魅力を感じ始めた自分に戸惑っていたのだ。明らかに、それまでのパニックとは違っていた。

二週間後、一時預かりとなっていた『退学届け』は正式に提出された。彼女ははっきりと言った。

「みんなとやっていきたい気持ちはあります。が、からだが講義に耐えられません。でも、この三ヵ月間で自分は変わったと思います。いろいろ考えても言葉にならなかった。それが、ずいぶん言葉にできるようになりました。自分の出会った事実、自分の考えた事実、その中で大事にしたいものを、ノートに整理していくことにしました。この間話したときのメモも、貼ってあります。(笑顔)」

現実の中にこそ未来はある。その視点に立って書かれたノートは、コンパクトに、ポイント明確に整理されていた。希望に向かっての自己内対話が始まっていた。提出された『退学届け』は、大学という権威に対して未練がましい自己への決別の宣言であろうか。同時に決別できる自己への誇りの表現でもあろうか。もちろん、涙はなかった。代わって、笑顔があった。その笑顔は、大学生活最後の日の記念写真として残された。Sさんの今後の行方はわからない。だが、形式化された教育場面に決別して、自らの生を活かす学び手への変身を遂げられる者は、幸せではないか。幸せのかたちは、いろいろあっていい。が、競争主義の教育は、このような対話や決断を容赦なく封殺する。そう思う。

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