たいち先生直伝!新任教師のためのインプット&アウトプット術
教育系YouTuber「たいち先生」こと深見太一先生が、教師の成長に不可欠なインプット&アウトプットの秘訣を伝授!学びの効率をグンと上げるアイデアを紹介します。
新任教師のためのインプット&アウトプット術(7)
子ども問題行動に対するインプット
LCA学園グループ 瀬戸SOLAN小学校深見 太一
2020/12/5 掲載
  • インプット&アウトプット術
  • 教師力・仕事術

 今回は、教室の中で問題行動が起きた場合の対応について考えていきます。先生なら必ず出合うシチュエーションですが、特に新任のうちは悩ましい場面ですね。こんな時にも「インプット」の視点を持っていると、対処法が変わってくるはずです。

問題行動が起きたら「インプット」が大事!

AさんがB君を1週間毎日叩いている

 この状況を見つけた時、先生はどのように指導するといいでしょうか? もちろんいろいろな状況が考えられると思いますが、まずはこれだけの情報から、「私ならこう指導するぞ!」という自分なりの答えをどこかに考えてから、読み進めてみてください。

…さて、本当なら皆さんがどう指導するのか、いろいろな考えを聞き、対話をしてみたいところなのですが、ひとまず先に進めます。
 一般的には、二人を呼び出し、お互いの考えを聞いた上で、叩いたAさんを注意するというのが一番オーソドックスな指導方法ではないでしょうか。
 大事なのは、この時、AさんとB君の思いを先生がしっかり聞く時間(=インプットの時間)が取れるかどうかです。そうした時間を取ることで、二人の気持ちはすっきりして、その後同じ問題が起きることは少なくなるでしょう。反対に、時間がないからといって、先生が一方的に「叩くのは良くないよ」と注意して終わりにしてしまえば、AさんもB君もモヤモヤが残り、他の子に被害が及んでしまう可能性もありますね。
 また、このような時は、まずは先生が問題行動に対するインプットの方法を1つにしないことが大切です。先生が見た状況以外にも、他の児童からのヒアリング、保護者への状況確認、保健室の先生やスクールカウンセラーからの情報収集など、いくつもの方法を使っていろいろな情報を集め、インプットします。時には、昨年までの指導履歴を見てみたり、去年の担任から話を聞いたりしてもよいでしょう。

どこまでインプットしていますか?

 皆さんは、タンポポと言われて何を想像するでしょうか? 頭に浮かんだものを簡単に描いてみてください。
 以前、大学生に向けて同じ質問をしたら、10人中8人は黄色い花の部分を描いていました。残りの2人はというと、綿毛の部分を描いていました。
 では、1年間のうちタンポポの花が咲いているのはどれくらいか知っていますか? 実は、タンポポの花は平均1週間ほどしか咲いていないそうです。残りの358日は葉っぱを伸ばすか、根っこを下に伸ばしているのです。7÷365=約2%だけの印象なのにもかかわらず、ほとんどの人は花を描くのです。

図1

 では、私たちが子どもの問題行動を見るとき、花以外の葉っぱや根っこを見る努力をしているでしょうか。目に見えている問題行動が「花」であるとすれば、「葉っぱ」は、例えば家族・友人関係であり、「根っこ」は育ってきた歴史や、問題の背景、抱えている思いなどにあたります。先生が、そういったものを丸ごと含めてインプットしようという気持ちがあるかどうかが、非常に大切なのです。もちろんそんな時間が取れないとか、なかなかゆっくり話を聞けないというのもよくわかります。けれども、見えている花の部分以上に、葉っぱや根っこは大きいという意識を持ち、「どこまでインプットできているかな?」という気持ちを持つことが大切です。

自分に置き換えてインプットする

 今度は視点を変えて、自分が職場で問題を起こした時のことを考えてみましょう。例えば、自分の思いが十分に伝わっておらず、保護者からクレームがきてしまったとします。その時に、管理職から頭ごなしに叱られたら、あなたはどう思うでしょうか? 理由も聞かれずに「なんでそんなことになっているんだ!」と言われれば、あなたの管理職への信頼はガタ落ちだと思います。
 しかし、同じことを子どもに対してやってはいませんか? 自分に置き換えて考えてみると、起こった問題だけでなく、それまでにどういう指導をしていたのか、いつから問題が起こっているのか、これからどうしていくのかをじっくり話をして、解決までの道筋を一緒に考えてくれることがいかに大切かがわかるはずです。
 もちろん時間がなかったり、他のことをやらなければいけなかったりすると思います。そんな中でも、「その子が聞いてもらえて嬉しいこと」をイメージして、インプットをしていくことが大切です。「この先生はきちんと話を聞いてくれる」「自分のことを理解しようとしてくれている」というのは、子どもにとって何よりも安心感に繋がります。きっと自分が子ども時代に好きだった先生もそういう先生だったのではないでしょうか? もちろん、子どもに好きになってもらうために指導を行うのではありませんが、子どもとの良好な関係は、学級経営上非常に大切になります。一度関係が崩れると、何を言っても指導がうまくいかないですし、反対にお互いに気持ちの良い関係が築けていると、思っていることがとてもスムーズに伝わり、学級経営もうまくいきます。料理と同じで、手間隙をかけるからこそ美味しいものが出来上がるのです。

今月のポイント

  • インプットの方法が1つだけにならないようにしよう
  • 花(=目に見える部分)だけでなく、葉っぱや根っこも含めてインプットしよう
  • 子どもを自分に置き換えてインプットしよう

深見太一ふかみたいち

LCA学園グループ瀬戸SOLAN小学校所属。
愛知県の公立小学校教員を13年経験した後、現職となる。クラス会議を世の中に広め、日本を幸せ大国に・日本の自殺をゼロにするというミッションを掲げて活動中。著書に『対話でみんながまとまる!たいち先生のクラス会議』がある。
教育系YouTuber「たいち先生」としても活動、チャンネル登録は1300人を超える。Twi tterでも教育関連のツイートを発信、フォロワーは7000人を超える。
著書に、『対話でみんながまとまる!たいち先生のクラス会議』(学陽書房)、『教職1年目の働き方大全』(明治図書、共著)など。
●YouTube たいち先生「日本中の先生を勇気づけたい」
https://youtu.be/X7Z_iYNh4qs
●ブログたいち先生の学級経営
https://fcrown.fun/

(構成:大江)
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