著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
生徒の元気の素は先生の元気、先生の元気の素は音楽です!
島根大学教育学部附属中学校指導教諭小村 聡
2018/10/4 掲載

小村 聡おむら さとし

島根県出雲市生まれ。島根大学教育学部特別教科(音楽)教員養成課程声楽専攻卒業。1989年から島根県公立中学校、2006年から島根大学教育学部附属中学校に勤務。DVD「心が動けば、身体が動く!生徒のやる気を高める合唱指導」(ジャパンライム)全3巻発売。2011年6月から2年間、『教育音楽 中学・高校版』(音楽之友社)にて「おむさんの歌唱指導」を連載。その他、同誌及び『授業力&学級統率力』(明治図書)の特集記事などを執筆。主な著書に『スペシャリスト直伝!中学校音楽科授業成功の極意』(明治図書)がある。

―ズバリ、合唱の魅力は何でしょうか?

 まずは人という楽器から音楽が奏でられることですね。その楽器は十人十色なのに、それらの声が合わさったときに一色になることもできます。次に場所を選ばずどこでも声を合わせて音楽を奏でることができることです。決してハモらなくてもいいです。同じ音をみんなで歌っただけでも心が合わさります。もう一つ、合唱には歌詞・言葉があることです。普段思っていても言えない思いを合唱は代弁してくれます。

―音楽苦手!歌うこと苦手!の先生が合唱コンクール指導に取り組むにあたって、これだけは身につけておくべきということは何でしょうか。

 「音楽的なことはわからないけど、うちの演奏は言葉がす〜っと入ってきて、胸が熱くなりましたよ」これは本校コーラス部が出場する合唱コンクールを聴きに来てくださる保護者の方や先生たちからよく言われるフレーズです。合唱の魅力の一つは言葉です。詩やその中の一つ一つの言葉の語感や質感、温度感などを感じることができるようになりましょう。言葉のセンスは、日常の生徒たちとの言葉のやり取りにも生かされていきます。

― 根性論や精神論だけでは今どきの中学生は動かない、ということで、本書は中学生からも一目置かれるような「うんちく」が満載なのが特徴ですね。うんちくの活かし方は、「3K(感、観、勘)」と本書にはありますが、ここを読んでいる先生だけに、もう少しヒントをいただけますか。

 3K…「感」=気持ち、感じ方。「観」=見方、様子。「勘」=第六感。
 「感」は担任の思いです。担任としてこのクラスをどう舵取りしたいのか。「観」は日々の生徒たちの様子のとらえです。そして「勘」。人間の五感は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚ですね。理屈では説明しがたい、鋭くものごとの本質をつかむ心の働きが「第六感」です。「勘」は先生方の経験から感じる「今でしょ!」のタイミングです。

―学級担任以上に、音楽苦手!歌うこと苦手!という生徒がいた場合…言葉かけのアドバイスをお願いします。

 「苦手」とは、技能面での自信の無さが原因であることが多いです。でも「苦手」であって「嫌い」ではないかもしれません。こんな生徒に担任としてどんな言葉かけができるか。これは超難題です。人それぞれ「苦手」なものはあります。それを強要することはできません。だからと言って練習に参加しないことを容認はできません。こんな生徒に対する言葉かけは、すばり「苦手は個性の一つ、でもやってみないとわからない世界もある。だからがむしゃらにやってみる価値はあると思うよ」

―これから秋の合唱シーズン。全国の学級担任の先生方に向けメッセージをお願いします。

 学校の元気は日本の元気になります。ですから学校は元気であらねばなりません。学校が元気であるためには、そこに暮らす生徒たちと先生たちが心身ともに元気であらねばなりません。生徒たちの元気は先生たち、特に現場最前線にいる学級担任の先生の元気から生まれてきます。先生を元気にするのは何か? そうです、音楽です。「音楽は心のスタミナ定食!」です。古今東西、音楽は人の暮らしの中に寄り添ってきました。その原点に思いをはせてください。音楽は、決して特別なことではないんです。

(構成:木村)
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