著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
正しく、形のよい漢字が書ける子どもを育てよう
静岡大学教育学部准教授杉ア 哲子
2013/12/25 掲載
 今回は杉ア哲子先生に、新刊『小学校の全漢字1006字の「書き」ラクラク覚え方辞典』について伺いました。

杉ア 哲子すぎざき さとこ

三重県生まれ。静岡大学大学院教育学研究科修了。静岡大学教育学部国語講座所属。芸術文化課程書文化専攻教室代表。小学校から大学までの全ての教育経験をもとに、発達段階を考慮し学習者の立場を考えた「書く」教育を追究している。全国大学書写書道教育学会理事、静岡県大学書道学会会長、日本国語教育学会会員、小学校書写の検定教科書編集委員、読売書法会会友、謙慎書道会評議員、「書く学習の意義と可能性」など論文多数。

―子どもたちは、初めての漢字を覚える時に、どのようにして形をとらえるのでしょうか?

 ものの重なりを手掛かりに遠近を見分けられるのは6歳頃だといわれていますが、平面上に書かれた漢字を見ただけでは、何画で書くか、どう進めるかが分からず、点画を組み立てることができません。そこで子どもたちは、既に知っている漢字や、その部分の形を当てはめて、初めての漢字を構成していきます。しかも、目立つ長い画に意識が向くために、例えば横画と縦画との関係が交わっているのか接しているのかという点などは見落としてしまいます。

―本書では、漢字を覚えやすくするために、「チーム編成」という新しい指導法を開発していますが、今までの覚え方とどのように違うのか、簡単に教えて頂けますか。

 一般的な覚え方は、新しく単元の教材文を扱う時に、そこに出てくる漢字を扱うという方法です。でも本書では、誤答分析によって学年別配当漢字の相互関係を見直し、@筆使いや点画の種類、A比較、B流れや関連性、C仲間といった4つの視点で、「見方」を確かにするための「チーム編成」を取り入れました。また、「書き進め方」を印象づけるために、点画を足し算したり唱えたりして誤答を防ぐ工夫を示すとともに、書写的な内容も適宜加えています。

―本書は、小学校で習う漢字1006字を全て網羅していますが、本書の活用方法を教えてください。

 学校では、単元と単元の間に「漢字学習」の時間を設定して活用すると効果的です。新出漢字を扱う時には、事前の教材研究として誤答を防ぐポイントを確認してください。また外国人や帰国子女、特別支援や書字に悩みを抱える児童・生徒への対応のヒントが見つかります。家庭学習にも本書を使い、確かな「書き」習得を目指してください。書塾では、競書の課題にある漢字に関連づけて扱うと「書き取り」に生きて保護者に喜ばれます。

―各漢字には、「あるある誤答例」というコーナーが設けられ、子どもたちにありがちな間違った漢字の具体が紹介されているのが興味深いですね。全漢字の誤答を分析する中で、間違え方にどのような傾向がありましたでしょうか。

 点画の込み入った細かい部分をよく見ていないケースが多いですね。逆に込み入ったところに意識が集中してしまって、単純な構造の部分を見落とす場合もあります。全く無関係な漢字同士でも、字形の特徴が似ていると書き誤りますし、熟語の印象が強いために混同することもあります。昨今は、書いているところをみる機会が減っているのに文字情報が増えているので、記憶が曖昧で、実際には正しく書けないという困った現象が起こっています。

―最近は、スマホやパソコンの普及で、子どもたちは昔に比べて圧倒的に手書きの経験が減っています。子どもたちに手書きの楽しさを伝える工夫がありましたら、ぜひ教えてください。

 低学年へのお勧めは、「水」や絵の具を使って毛筆で書くことです。筆の使い方だけを伝えたら、絵や字を自由に書かせ、滑らかな運筆で動きを学ばせます。鉛筆での「なぞり書き」を多用すると手指に負担がかかり書くことが嫌いになってしまうので、「なぞり」の前にiPadや砂の上への「指書き」を取り入れます。好きな歌に合わせて、友達と一画ずつ交代で書き加えさせるのも楽しいですね。筆ペンを使うと、点画を丁寧に書くので効果的です。

(構成:木村)
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