インクルーシブ教育時代!支援のあるクラスづくり
ちょっと気になるあの子に着目すれば、どの子も願う「あるといいな」の配慮がわかる。居心地のよい、みんなのクラスづくりを始めましょう♪
支援のあるクラスづくり(5)
たたいちゃだめ!
子ども同士のトラブル
帝京大学大学院教職研究科客員准教授吉本 裕子
2013/10/20 掲載
  • 支援のあるクラスづくり
  • 特別支援教育

 今回は、子どものけんかに悩むまみ先生が相談にいらっしゃいました。

まみ先生

 発達障害の診断が出ているA君は、友だちとトラブルがあると、すぐに手が出てしまいます。その都度、「暴力はいけない」と注意をするのですが、繰り返します。また、保護者の方にもそのことをどう伝えていったらよいか悩んでいます。

裕子先生からのアドバイス

 発達障害の中でもADHD傾向にある子どもは衝動的な行動に出る場合があります。ADHDのある子は、エネルギッシュで人とのかかわり好きなどよい面が多いのですが、それをコントロールする力が不足していて、トラブルになることが多いようです。

トラブルがあったら…A君に気をつけたいこと

穏やかに丁寧な言葉で話しかけましょう

 大きな声や強い指導では、A君は怒られたことに反応してしまい、注意されている内容が、理解しにくくなってしまいます。

×「どうしてそんなことをしたの」→○「どうしたかったのか」を聞きましょう

 本人なりの理由があるはずです。
 別の事例ですが、突然、友だちを倒してしまったC君によく話を聞くと、「友だちのそばに大きな蜂が飛んできたので、助けなければと思って友だちを倒してしまった」と説明できました。C君には「友だちを助けようと思ったことはとてもよかった。でも、何も言わずに突然倒してしまったら、誰でもびっくりしていじわるをされたと思うよ」と話すと、「あーそうか」と気づきました。その後C君は「びっくりさせてごめんね」と素直にあやまることができました。

「どんな理由があっても暴力は絶対にいけないこと」と伝えましょう

 トラブルの中で暴力を振るったり、人を傷つけたりすることはだめだということを、まず理解させ、次にそれぞれの言い分を聞き取るようにしましょう。これは一人一人の心を受け止めることにも通じる大切なことです。

両者の家庭に連絡しましょう

 A君も相手の子も、当事者本人が客観的にけんかの内容を家庭に伝えることは難しいものです。それぞれ自分の目線で自分に都合の良いように話すと、家庭でも「またA君が乱暴を…」「また、うちのAを責めてばかり…」と誤解を生みます。担任が「学校では両者の言い分は受け止めており、このように解決しました。」と丁寧に説明しましょう。

クラスのルールを日頃から話し合って決めましょう!

 トラブルがもしも起こってしまったら、まず両者の言い分をよく聞くところから始めます。どの子にも丁寧に接することが大切です。
 けれど、日頃からクラスでよく話し合ってクラスのルールを決め、トラブルを未然に防ぐクラスづくりも大切です。
 たとえば次のようなルールについて話し合ってみませんか?

  • 心が優しくなるふわふわ言葉を使う。
  • 友だちのいいところを見つけよう。
  • 友だちを傷つけたり、いやがったりすることはしない。ちくちく言葉は使わない。
  • 友だちにもし、いやなことを言ったり、してしまったりしたら、素直にあやまる。

まみ先生

 早速、学級会を開いて子どもたちと話し合ってみます!

子ども同士のトラブルを防ぐための鉄則!

  1. ルールはクラスの一人一人が守ります。
  2. A君には「特別」ということがないように。特別扱いは「えこひいき」と感じて、クラスが崩れる原因となります。

吉本 裕子よしもと ゆうこ

特別支援学級(知的障害学級)の担任として29年、その後管理職として11年、公立小学校に勤める。特別支援学級担任時代は東京キの個別の指導計画作成に携わった。校長時代は「特別支援教育の考えを基盤とした4つの教育改善」のテーマの下、通常の学級の担任と通級による指導担当者たちと研究発表を実施。平成25年3月に小平市立鈴木小学校の実践をまとめた『特別支援教育の視点で授業改善』を明治図書より出版。
現在 調布市教育委員会教育支援コーディネーター、清瀬市特別支援教育巡回指導員等。

(構成:佐藤)
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