英語教育ユニバーサルデザイン 指導に役立つ教材・教具
「がんばっているのに英語が覚えられない…」読み書きが苦手な子どもたちの英語指導に役立つ教材・教具を紹介。 学び方を変えれば、英語はできるようになる!
英語教育ユニバーサルデザイン 指導に役立つ教材・教具(10)
話すことの指導
神戸山手短期大学准教授村上 加代子
2019/3/5 掲載

今回のねらい

 今回はこれまでのボトムアップ的な学びではなく、トップダウンのスピーキングについて、教材を紹介したいと思います。「話すこと」って、大人にとっても難しいですよね。言いたい言葉が浮かばない、単語をどう並べて良いかわからない…。これは障害のある/なしに関わらず、誰でも外国語を学ぶときに感じることではないでしょうか。ただ、「伝わった」喜びがあると、もっと話そうと思えます。そこで大切なことは、「正しく話そう」ということにこだわりすぎず、コミュニケーションができることを楽しめることでしょう。ではどのように単語レベルから文章のレベルまで、スピーキングを伸ばしていけるのでしょうか。
 今回は、「遊びながら繰り返しているうちに、文の構造が身についていく」「自分の言いたいことが言えるようになっていく」カードとして知られている『B.B.カード』をご紹介します。親子で楽しめるカルタでもあるため、英語の先生でなくても大丈夫です。

B.B.カード

教材画像
教材名
「カードで遊んで英語大好き!!B.B.カード LETTERS & SOUNDS 64」
著者
難波悦子
出版社
セルム児童英語研究会
対象年齢
幼児〜
時間
15分〜

 このカードは「ビンゴ遊びをしながら英語力をつけていく!」というとても面白い教材です。学習障害のあるお子さんや、読み書きが苦手なお子さんにも効果があり、中学校レベルの文法の気づきまでつなげることができると感じるポイントがいくつかあります。
 例えば、
(1)いきなり読ませない/書かせない
 いまは小学校の教科書でも文字がたくさんあります。ペアワークでも子どもたちはまだ読めない英語の文を暗記するような活動をしていませんか。なかなか難しいですよね…。
 ですが、B.B.カードでは、「最初から正しく言えなくてもOK」です。
 トップダウン的な自然な学びでは、初めはたくさん間違えるのが当たり前で、徐々に自分の音声との違いや、文に含まれる語の単位に気づき、調整していくようになります。
 「音」と「意味」の出会いを大切にし、徐々に音声的な発育を促すことが重要です。
 カードには、ほとんど文字がありません。子どもはCDから聞こえる音声を、まずはそのまま口にするだけ。それで十分です。

図1

カード(写真提供:セルム児童英語研究会)

(2)意味を推測しながら音声とつなぐ
 カードを見ると「あれ?どういう意味だろう」と思います。
 CDを聞きながら、「このカードのことかな」「/butter/って、バターのことかな?」という想像(推測)をしながら文を少しずつ理解していきます。最初から一語一句訳すのではなく、意味を推測しながら理解する力は口頭コミュニケーションにも必要です。

(3)CDには「呪文」がある
 実はCDの「呪文」は小学校のころはあまり意味なく唱えているだけなのですが、実は、動詞の活用になっています。go-went-gone-goingのように、聞こえてくるのをこれもリピートするだけです。ですが、ご存じのように、動詞の不規則活用などは一度にたくさん覚えられません。ですがいわば、九九のように、必ず暗記せねばならない項目です。そのため、早い段階で「耳に慣れ親しんでおく」「聴覚記憶のどこかに入れておく」くらいの気持ちで取り組むと良いでしょう。

 上記の(1)、(2)が小学校や中学校の教科書と違う点は、とにかくビンゴなどカードゲームで遊びながら何度も繰り返すため、暗記してしまえることです。そして暗記した文は、応用ができます。教科書は、Unit1が終わるとUnit2に進み、文章は残らず消えていきます。しかし、B.B.カードは続けることで、文章の動詞を過去形にする、疑問文にしてみる、主語を代名詞や一人称、二人称にするなど、実はレベルアップしていく「土台」になりえます。

図2

ビンゴゲームの様子(写真提供:セルム児童英語研究会)

 そのため、数回遊んで終わりではなく、少なくとも年単位で活用されると良いでしょう。ビンゴの様々なやり方などは、書籍も販売されていますのでご参照下さい。

 今後、英語の試験ではスピーキング、リスニング、ライティングが一層重視されるようになります。もし「読み書きが苦手」でも、話せる、書ける(ICTツールなどを使って)は武器になるかもしれません。

 最後に『B.B.カード』の製作者でいらっしゃる難波悦子先生の資料から引用させて頂きます。

 英語学習の初心者でも中学卒業程度の短文の口真似から始めます。ゲームをしながら何度も繰り返し口ずさむうちにB.B.カード64枚の基本構文(型)を覚えていきます。この型をもとに単語の代入、時制の変換、文法の転換などすべて遊びの中で繰り返すうちに、単なる記憶維持ではなく、「気づく」、「分かる」、「出来る」へと導きます。日常生活で英語学習の土台を築けない日本の子ども達にとって、B.B.カードは英語の土台づくりの役割を果たすことを目的としています。

図3

難波悦子(2017)英語教育ユニバーサルデザイン研究学会研修資料より

【参考】
「カードで遊んで英語大好き!!B.B.カード LETTERS & SOUNDS 64」

*URLや教材の情報は掲載時点でのものになります。

村上 加代子むらかみ かよこ

米国ウィスコンシン大学マジソン校卒。
神戸山手短期大学准教授。英語教育ユニバーサルデザイン研究会代表。
学習障害のある児童生徒対象の「チャレンジ教室」を主催。英語教科における特別支援やユニバーサルデザインの啓発活動に積極的に取り組んでいる。教員間の情報交換のプラットフォームづくりを目指している。

(構成:佐藤)

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