- はじめに
- 1 非行に歯止めをかけるのは教師の仕事だ!
- /河田 孝文
- 一 子どもを非行に走らせないことも大切な心の教育である
- 二 「盗み」に歯止めをかけた実践
- 1 窃盗の具体的場面を提示
- 2 「盗み」を続けたらどうなるか話す
- 三 従来の道徳授業では歯止めはかけられない
- 四 「少年非行防止」という道徳授業の新分野
- 2 「喫煙」に歯止めをかける道徳授業
- 一 ライフスキルを教える禁煙の授業(小学) /八代 真一
- 二 人体への悪影響と断る勇気を教える(中学) /松原 大介
- 3 「シンナー吸引」に歯止めをかける道徳授業
- 一 「なぜ悪いのか」と「どうしたら断ることができるのか」の二点を学習する(小学) /新牧 賢三郎
- 1 資料を集める
- 2 「シンナー吸引は悪い」ことを教える
- 3 シンナーを誘われたときの断り方を練習する
- 二 自分の体と家族を思い起こさせる(中学) /長野 藤夫
- 4 「薬物中毒」に歯止めをかける道徳授業
- 一 薬物の危険性と断り方を教える(小学) /吉岡 剛
- 1 力のある資料とスキル
- 2 授業の実際
- 3 授業を終えて
- 二 薬物乱用の恐ろしさを知らせる授業(中学) /三浦 光俊
- 1 世界各国の最高刑
- 2 薬物乱用の影響
- 3 マリファナ乱用者の書いた手紙
- 4 誘いの手口
- 5 終わりに
- 5 「万引き」「盗み」に歯止めをかける道徳授業
- 一 万引きをさせない授業(中学) /大北 修一
- 1 万引きを授業にかけるにあたって
- 2 万引きは泥棒と同じ
- 3 万引きをするとどうなるか
- 4 万引きは自分を傷つける
- 二 教師のなりふりかまわぬ真剣な語りで歯止めをかける(小学) /青坂 信司
- 1 「体験・知見に支えられた語り」が効果がある
- 2 教師が裸になって指導する
- 3 私自身の体験談
- 4 教師の体験談をたたみかける
- 三 事実と語りで「盗み」を教える(中学) /木野村 寧
- 1 盗みが起こる原因
- 2 当事者意識に立てるか
- 3 事実と語り
- 6 「弱いものいじめ」に歯止めをかける道徳授業
- 一 「いじめを許さない!」(小学)─力のある資料が子どもの心に届いた!─ /河田 孝文
- 1 弱肉強食について知る
- 2 「いじめ」の作文を聞いて考える
- 3 「いじめ」の影響や悲惨さを知る
- 4 仲間を守るということを知る
- 5 授業の感想・今思っていることなどを作文に書く
- 二 人間の『獣性』と闘う(中学) /山根 恵子
- 1 資料とねらい
- 2 授業の流れ
- 7 「少女売春」に歯止めをかける道徳授業
- 一 犯罪であるということ・悲惨な結末が待っているということ(小学) /松岡 宏之
- 二 心と体はつながっている(高校) /水持 邦雄
- 8 「公衆道徳を守る」を教える道徳授業
- 一 電車の中のできごと(小学) /大賀 由里子
- 1 日本が失ったもの
- 2 授業プラン
- 二 「当事者性」を持たせる(中学) /長野 藤夫
- 9 「親を大切にする」を教える道徳授業
- 一 「親に助けられた自分の体験」を語る /平田 淳
- 1 「体験・知見に支えられた語り」を
- 2 授業プラン
- 二 親の視点に立たせると生徒はハッとする /山田 高広
- 1 理屈でわからせるには限界がある
- 2 生徒を親の視点に立たせてみよう(中三・中一での実践)
- TOSS道徳教育研究会のアピール
- 二十一世紀を生きる子どもたちのために!
- 機関誌「心の教育」は情報満載! /河田 孝文
はじめに
これまで、たくさんの道徳授業を見てきた。
校内の研究授業から文部省指定校の公開授業まで、様々な機会に様々な先生方が道徳授業を提案されている。
それらを拝見してつくづく思った。
「みんな様式化された道徳授業の枠から抜け出せないでいる」
「様式」とは、次のように固定化された組み立てのことである。
1.ねらいと直結した自分の経験を思い出す。
2.資料を読む。(感想を言う)
3.登場人物の気持ちを想像する。
4.どうしたらいいか話し合う。
5.教師の説話を聞く。
ほとんどの授業がこの枠にはめられていた。
どんな学級の場合も変わらない。どんな資料もこの枠に押し込まれていた。
効果があるならそれでよい。
大切な生き方が子どもの心に届くなら言うことはない。
しかし、しかしである。
授業中の子どもの顔は浮かない。
それでも子どもは健気だ。教師の期待する答えを必死で探そうとする。
教師の期待する回答が出ないときがある。
どうするか。何度も聞き返して意図した方向へ無理やり引きずり込む。そして、微かに引っかかる回答が出ると安心して次へ進む。
これで、大切な生き方は届くのだろうか。
授業後の感想からはそれはうかがえない。
授業をしなくても書けるようなことが綴られている。(必死に書いた子どもに罪はない。)
「道徳授業は、自分の生活を振り返る時間だ」と言う人がいる。
「道徳授業は、すぐに効果が現れるものではない」と言う人もいる。
学校の現状に目をやってほしい。
援助交際・陰湿ないじめ・校内暴力・学級崩壊…教え上げればきりがないほどの乱れよう。
しばらくしても、効果は現れていないことがうかがえる。
それでもこの様式は続けられてきた。
なぜか。とりあえず授業は最後まで流れていくからである。
授業の組み立てを批判されることもない。授業者が傷つくことはない。安全なのだ。
新教育課程にも、道徳の時間は存続される。
現行同様、年間三五時間配当である。
それぞれ数十時間削られる他教科とは対照的な措置である。
これだけでも、道徳の時間がいかに重視されているかがうかがえよう。
それだけではない。新学習指導要領には、指導内容の厳選・指導方法の工夫が明文化して謳われている。新学習指導要領は、現行指導要領の反省から搾り出されたエキスの結晶である。つまり、従来の指導方法ではダメだと、従来の道徳授業ではダメだという反省があったのである。その上で授業を改善せよと明示しているのである。
ここまで重視された道徳の時間が、従来の様式に縛られたままでいいのか。
いいわけがない。一刻も早く抜け出す努力をすべきだ。
子どもに大切な生き方を教え、子どもが変わる道徳授業を創造していくべきなのである。
TOSS道徳における「生き方を教える道徳授業」の定義を確認しておく。
「具体的な場面を通して」「断固として教える」こと 【学校の失敗】向山洋一著(扶桑社)より
ありきたりの資料を読んで、無責任にバラバラと発言をさせ、しまりのない教師のおしゃべりでしめくくるような道徳授業は、TOSS道徳の範疇に入らない。
向山先生の授業に対する主張は一貫している。
最後の決着をつけていくのは、子どもの事実と教師としての自分の生き方をかけた実感なのです。
そのことがある限り、どんなことを言われようと何を言われようがいいのです。
道徳の授業も同じである。
道徳の授業を経て子どもたちがどう変わったかが最大の論点にされるべきである。
TOSS道徳「心の教育」シリーズ第二期全五巻が発刊された。道徳授業の実践事例集である。
小学校低学年から中学高校までの道徳授業が収められている。内容・方法ともバラエティーに富む道徳授業がちりばめられている。子どもが変わる追試できる道徳授業が詰め込まれている。もちろん、すべての実践が生き方の原則を教えるという主張で貫かれている。
TOSS道徳「心の教育」シリーズだけで、年間三五時間の道徳授業はもれなく実施できる。
本シリーズを是非とも教室で役立てていただきたい。その手ごたえをご自分で確かめていただきたい。
そして、ご意見・ご批判をお寄せいただきたい。また、子どもが変わるよりよい道徳授業をお持ちの方、実践記録を私どもにお寄せいただきたい。それをもとに、続編、続々編を企画していく。
「当たり前のこと」がきちんとできる子どもを育てるために。
二十一世紀を生き抜く子どもたちのために。
2000年2月11日 TOSS道徳教育研究会代表 /河田 孝文
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- 明治図書