“スポーツ医学科学的トレーニング”を入れた新しい体育の授業づくり

“スポーツ医学科学的トレーニング”を入れた新しい体育の授業づくり

最新の医学・科学的根拠に基づいた指導で体育授業を変える。

子ども達が楽しく運動できるようになるためのスポーツ医学・科学的トレーニングの基礎知識を本書で紹介。実践として体力向上や空間感覚を育てる指導方法を挙げながら運動の科学的な仕組みに基づいて、子ども達が運動の楽しさ、面白さを体験・上達できる授業づくりを提案。


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ISBN:
4-18-767619-8
ジャンル:
保健・体育
刊行:
対象:
小・中
仕様:
B5判 136頁
状態:
在庫僅少
出荷:
2018年8月20日
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もくじ

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まえがき
T 運動生理学の基礎知識を生かす授業づくり
1 「澤口俊之 身体運動的知性論」を現場でどう生かすか
・鉄棒「こうもり振り下り」で子どもの好奇心を刺激する /加藤 真一
・幼少期に絶対身につけたい運動感覚はこれだ! /表 克昌
2 「池谷裕二 運動神経と脳の働き論」を現場でどう生かすか
・ちょ〜気持ちいい! 海馬の刺激が運動の楽しさを生む /佐藤 真健
・スモールステップを仕組んで達成感とやる気を生みだす! /藤澤 芳昭
3 「吉福康郎 スポーツが上達するバイオメカ二クス論」を現場でどう生かすか
・頸反射を利用して,はさみ跳びの記録を伸ばす /岩田 史朗
・ポイントを分かりやすい言葉にして,動きを引き出す /村田 正樹
4 「西原康行 センス・オブ・ワンダーとトレッキング論」を現場でどう生かすか
・ソフトバレーボールや身体ほぐしの運動にこう生かす /高橋 恒久
・関わる楽しさを味わわせるキンボール /太田 健二
5 「石井喜八 走運動のバイオメカニズム論」を現場でどう生かすか
・変化ある繰り返しで運動能力を高める /松崎 力
・バイオメカニズムを意識して走力を伸ばす /菊地 亨
6 「山本貞美 8秒間走論」を現場でどう生かすか
・―外国での実践に絞って― /山本 貞美
・コオーディネーショントレーニングを体育授業へどう導入するか /上田 憲嗣
7 「スポーツビジョン」を現場でどう生かすか
・運動種目に合った「目の動き」と「瞬間観」トレーニング法 /東田 昌樹
U身体感覚の基礎知識を生かす授業づくり
1 「杉山勝行 動体視力を磨くトレーニング論」を現場でどう生かすか
・周辺視野の認識力を広げる /前島 康志
・ビジョントレーニングから秘められた運動能力を引き出す /桑原 和彦
2 「小林寛道 走る科学論」を現場でどう生かすか
・教師の確かな知識が子どもを育て守る /寺本 聡
・小林寛道氏の走る科学論を5つのポイントで授業化する /後藤 一則
3 「齋藤孝 身体感覚と呼吸法論」を現場でどう生かすか
・よさこいソーランで,腰肚文化再生 /割石 隆浩
・『失われた身体感覚』をTOSS体育よさこいソーランで取り戻す /高橋 真
4 「織田淳太郎 古武術の動きとスポーツ論」を現場でどう生かすか
・古武術の「踏ん張らず」を「剣道の面打ち」に生かす /太田 輝昭
V 科学的トレーニングの基礎知識を生かす授業づくり
1 「白石豊 スポーツ上達論」を現場でどう生かすか
・低学年体育の重要性を認識せよ /根津 盛吾
・効果のある3つの事例 /松本 光男
2 「浅見俊雄 スポーツトレーニング論」を 現場でどう生かすか
・動きづくりを意識する〜よく動く身体の基礎をつくる〜 /佐藤 政臣
・合理的科学的にスポーツしよう /松澤 正仁
3 「立花龍司 個性を引き出すスポーツトレーニング論」を現場でどう生かすか
・「個性を引き出すトレーニング」を中学校の部活動に生かす /山本 真吾
・子ども達が夢中になって取り組み,神経系を鍛える運動 /辻岡 義介
4 「宮下充正 運動能力を高めるトレーニング論」を現場でどう生かすか
・運動は適時性に合わせて /渡辺 喜男
・「何を」「どのように」働きかけるかに生かすことができる! /浜井 俊洋
5 「高岡秀夫 身体意識を鍛えるトレーニング論」を現場でどう生かすか
・「ゆる体操」で心も身体もリラックス! /黒瀧 耕治
・「ゆる体操」と「センターづくり」が身体意識を高める /石橋 健一郎
あとがき

まえがき

 運動を一方的に行っても効果はない。医学的,科学的トレーニングを通して,指導していくことが求められている。

 本書では,子ども達が楽しく運動できるようになるための,スポーツ医学・科学的トレーニングの基礎知識が紹介されている。

 例えば,「『澤田俊之氏の身体運動的知性論』を現場でどう生かすか」では,人間の脳の働きからどのように運動を指導すれば効果的なのか,澤田氏の身体運動的知性論をもとにして具体的な実践例が紹介されている。

 また「『白石豊氏のスポーツ上達論』を現場でどう生かすか」では,子どもの運動神経や体力の発達からどのように指導すれば,効率よく運動や体力が上達していくのか,白石氏のスポーツ上達論をもとにして具体的な実践例が紹介されている。

 本書では理論に基づいて,医学的,科学的トレーニングを実際に行い報告されている。教師の勘や経験で指導するのではなく,正しい医学的,科学的な根拠に基づいて行っていくことが大切である。医学的,科学的トレーニングとしては,次のような実践が考えられる。


1.体力向上の指導方法

 子どもの「体力」で今問われていることは体力の低下である。体力は毎年低下しているという報告がされている。文部科学省は2002年10月,2001年度の体力・運動能力調査報告書を発表した。

 その結果,「走る」「跳ぶ」「投げる」といった基礎運動能力は男女共低下傾向にあることが分かった。特に6〜17歳で過去最低記録を更新したのは次の種目である。

 50メートル走は7歳男女,9歳男女,10〜11歳男子が過去最低である。ソフトボール投げ・ハンドボール投げは6歳女子,15〜17歳女子である。立ち幅跳びは6歳男女,7歳女子,8,9歳男女である。これらの種目の運動能力は特に低下していることが分かった。小学生の体力が低下しているのである。なぜ低下しているのであろうか。

 昔は集団での外遊びが中心であった。泥棒と警察,エスケン,陣取り,石けり,缶けり,ゴム跳び,馬跳び,かくれんぼなどの遊びが日常的であった。それらの遊びを通して体力が培われていた。

 最近の子どもは少子化に伴い,屋内でのテレビ,ゲームが多くなった。テレビの視聴時間との間に相関関係があるという。7〜8歳と10歳の女子以外は,視聴時間が長いほど運動能力が低いという。テレビにより戸外での運動が減り,その分,家の中で過ごすことが多くなった。そのために体力が低下しているのである。

 それでは医学的,科学的トレーニングによる体力向上はどのように行ったらよいのであろうか。

 小学校で特に落ちている投能力で考えてみる。筑波大学の高橋健夫氏は次のように述べている。

 投能力の低い原因として生活経験が少ないことがあげられる。昔はめんこ,釘さしなどの遊びによって,投げる運動に必要なアナロゴンが培われていた。現在の子どもは,投げる準備局面ができていない。手首とひじだけで投げている。遠くに投げるには体全体を使わなければならない。このように昔の遊びにはそれらの要素が入っていた。例えば落下傘投げ,河原投げ,石投げなどである。上に投げることで準備局面ができ投能力が培われていた。現在はことごとくそれらが遊びの中から消えている。そのために投げる能力が落ちてしまったのである。

 高橋氏が紹介してくれた運動遊びは次の内容である。これらを体育の授業,生活科,総合的な学習の時間に取り入れていく中で投能力が高まっていくようにする。

 @ドスコイ投げ 足を上げて,片足ケンケンで投げる。

 Aロケット投げ 15メートルくらいの長さを1メートル毎に黄・赤の目印をつけておく。短時間でおもいっきり投げる経験をさせる。どれだけ伸びたかの競争をさせる。

 Bトルネード投げ

 ア 体をそらせスローインする。

 イ 横にねじる。肘は伸ばしたまま 肘が下がらないようにして投げる。

 Cバトン投げ スナップの練習をする。

 D遠投投げ 体育館の上にロープを張り,それを越すように高く投げる。以上のようなゲームは,遠くに投げられないと楽しめない。ドリルが必要なのである。楽しく何回でも繰り返していく。

 北海道知床中学校の大石貴範氏は,夏の甲子園に出場した高校の監督に次の質問をしたという。

 「監督さん,ボールを強く投げるために小中学生に教えるべきことは何ですか。」

 「スナップの使い方。肘と手首だけで投げる方法を身に付けることです。これの練習方法分かりますか。」「分かりません。」

 「ダーツだ。ダーツ。100円均一で一杯買った。」

 大石氏は「めんこ,ダーツ,遊びの中に投力を鍛えるヒントが隠されている」と述べている。

 そのために,学校では運動の楽しさ,体力を高めていく楽しさを体験させていく必要がある。体育の時間で基本的な動きや体力を高める方法を指導していく。

 遠くに投げるためにはどんな原理・原則があるのか。どんな方法があるのか。どんな遊びや動きがあるのかをきちんと科学的に指導していく中で体力を高めていくのである。


2.空間感覚を育てる指導方法

 上越教育大学で大田昌秀氏から一輪車となわ跳びの指導を受ける機会があった。大田氏は,スポーツで大切なポイントを3点述べられた。

 1.ステップ   2.リズム   3.バランス

 スポーツの基本はステップであり,足のステップから全ての動きが出てくると強調された。ケン・パー,スキップ,ギャロップなどの動きづくりが大切なのである。

 次はリズムであるという。緊張と弛緩のリズムがあり幅が大きいほど一流選手であると話された。

大事な時だけ力が入り,一瞬力が入るという。

 最後はバランスである。その中でも一輪車はバランス感覚を作るのに優れているという。一輪車が一番難しく,一輪車が出来れば出来ない種目はないと言われた。空間感覚を育てていく必要があるのである。

 上越教育大学の体育館には,運動の器具・用具が豊富に設置されていた。大田氏の手作りのものも多くあった。その中で大田氏が空間感覚を育てるために行っている運動を3つ紹介された。

 1.逆立ち   2.跳び箱のよじ登り   3.吊輪

 肋木にセーフティーマットが立てかけてあった。その下の床にマットが敷いてあり,セーフティーマットに向かって逆立ちができるようになっている。

 セーフティーマットに向かって逆立ちするので,壁に足があたるという恐怖心がなくなる。柔らかいので背中をぶつけても痛くない。思い切り足をけり上げていくことができるのである。

 いつでも練習できるようになっているので,学生が普段から使用しているという。大田氏は逆立ちと逆上がりについて次のように話された。

 「逆立ちのできる子どもは,逆上がりができます。逆立ちのできない子どもは,逆上がりができません。」

 「どうしてですか」と聞いた。

 「逆立ちによって脇がしまるのです。それが逆上がりに必要な力になるのです」しかも逆立ちの時につま先をつけることが大切であると指導された。

 つま先をつけることによって脇がしまり,上体が引き上げられるのである。逆立ちを行ったら,必ずつま先を合わせて上体を引き上げていく練習によって,逆上がりに必要な脇のしめができていくのである。

 このように運動の科学的な仕組みに基づいた指導をしていくことが,運動の上達につながり,子どもに喜びをもたらしていく。本書を活用して,運動の楽しさ,面白さを体験させていってほしい。


  2005年11月20日 TOSS体育授業研究会代表 /根本 正雄

著者紹介

根本 正雄(ねもと まさお)著書を検索»

1949年茨城県生まれ。1972年千葉大学教育学部卒業。

現在,千葉市立蘇我小学校教頭。

『楽しい体育の授業』(明治図書)編集長。TOSS体育授業研究会代表。全国各地で講座,セミナーを開き,体育の授業づくり法&指導技術の伝授に活躍中。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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