- まえがき
- 本書の使い方
- 第T章 短くはっきり、心をこめて書く手紙作文の授業創造
- 一 手紙文で思考し判断し「表現・行動」する子供を育てる
- 1 二一世紀に生きる子供像と手紙文
- 2 科学化・情報化・国際化に対するミニ実用手紙文
- 3 表現技術を鍛える短手紙文ステップ学習
- 二 生涯学習に連動する手紙作文教育を推進する
- 1 書き手の思いがこもる、共感・感動の手紙文
- 2 手紙文指導による「心の教育から行動の教育へ」の転換
- 第U章 手紙作文をいつ・どこで書かせるか
- 一 手紙作文のよさ
- 二 いつでも・どこでも手紙文を書く習慣をつける
- 三 手紙作文コンクール等のチャンスをつかむ
- 四 教科書教材と関連させて書く
- 五 手紙文で、人の和・心の輪を広げる
- 六 年間指導計画を作成して、作文好きの子供に育てる
- ★「手紙作文をいつ・どこで書かせるか」についての指導のポイント
- 第V章 優しい心を的確に伝えるミニ手紙文
- <各学年──指導のねらいと授業の特徴/ミニ手紙文の事例>
- 一 第一学年のミニ手紙文
- 「先生、がんばっているよ」/ 「母の日のプレゼントだよ」/ 「大好き! お父さん」
- 二 第二学年のミニ手紙文
- 「おじいちゃんの話」/ 「がんばりやのおばあちゃん」/ 「元気になってね」
- 三 第三学年のミニ手紙文
- 「転校した友達との思い出」/ 「がんばってね、トッコちゃん」/ 「はじめて知ったよ、ありがとう」
- 四 第四学年のミニ手紙文
- 「植物へ」/ 「動物へ」/ 「外国の方へ」/ 「被災地の方へ」
- 五 第五学年のミニ手紙文
- 「お世話になったあの人へ」/ 「ボランティアの人へ」/ 「尊敬する人へ」
- 六 第六学年のミニ手紙文
- 「両親へ」/ 「自分へ」/ 「科学者へ」
- ★「優しい心を的確に伝えるミニ手紙文」における授業のポイント
- 第W章 めきめき上達する手紙文ステップ学習
- <各学年──指導のねらいと授業の特徴/ステップ学習でめきめき上達/長い手紙文を書く活動への連結>
- 一 第一学年のステップ学習の実践例
- 「たのしいな おてがみ」/ 「おへんじ まっててね」/ 「ありがとう おにいさん おねえさん」
- 二 第二学年のステップ学習の実践例
- 「二年生になって」/ 「七年目の母の日(父の日)に」/ 「○○にいるおじいちゃん、おばあちゃんへ」
- 三 第三学年のステップ学習の実践例
- 「会話の文を書こう」/ 「会話の文で様子をくわしく」/ 「学芸会、見に来てね」
- 四 第四学年のステップ学習の実践例
- 「思ったことを」/ 「被災者の気持ちを考えよう」/ 「被災者に励ましの手紙を書こう」
- 五 第五学年のステップ学習の実践例
- 「あの時はごめんね」/ 「先生にお願い」/ 「未来の自分へ」
- 六 第六学年のステップ学習の実践例
- ★「めきめき上達する手紙文ステップ学習」における授業のポイント
- 第X章 低学年の共感・感動の手紙作文
- <主題・構成──手紙作文の分析──/言葉の精選・言葉のひびき合い──手紙作文の優れた表現──/共感・感動の手紙作文へ──優れた手紙作文を書かせる指導──>
- 一 第一学年「ぼくのじてんしゃ」の手紙作文の分析と再構成
- 二 第二学年「オランダのみなさんへ」の手紙作文の分析と再構成
- ★「低学年の共感・感動の手紙作文」における指導のポイント
- 第Y章 中学年の共感・感動の手紙作文
- <主題・構成──手紙作文の分析──/言葉の精選・言葉のひびき合い──手紙作文の優れた表現──/共感・感動の手紙作文へ──優れた手紙作文を書かせる指導──>
- 一 第三学年「やさしいおばあちゃんへ」の手紙作文の分析と再構成
- 二 第四学年「おじいちゃんへ速達です」の手紙作文の分析と再構成
- ★「中学年の共感・感動の手紙作文」における指導のポイント
- 第Z章 高学年の共感・感動の手紙作文
- <主題・構成──手紙作文の分析──/言葉の精選・言葉のひびき合い──手紙作文の優れた表現──/共感・感動の手紙作文へ──優れた手紙作文を書かせる指導──>
- 一 第五学年「お母さんありがとう」の手紙作文の分析と再構成
- 二 第六学年「残された日々」の手紙作文の分析と再構成
- ★「高学年の共感・感動の手紙作文」における指導のポイント
- あとがき
まえがき
心と心を結ぶ手紙文を書く意欲を高める
――目的や必要に応じて表現技術を鍛える――
――「…ポトンとポストで音がした。胸がドキンとなった。待っていた友達からの手紙だった。何回も読んだ。なつかしさが広がった。…」
手紙やはがきには心と心を結ぶ不思議な力があります。手紙を書くと優しい心、思いやりの心が芽生えてきます。多くの人との心のつながりもできて楽しくなります。新しい時代には、優しい心、思いやりの心と共に、確かな表現力、たくましい行動力を備えた人間が必要とされます。手紙文を書くことによって文章が上手になり、親しい人が多くなり実行する力がつきます。――これは子供たちに贈る私たち教え人・育て人のメッセージではないでしょうか。
新しい教育は「豊かな心を持ち、たくましく生きる子供を育てる」ことを理念に掲げています。
豊かな心を養うには「心の教育」の推進が必要です。たくましく生きる子供を育てるには、精神的にも強靱になるような心の錬磨を重視した「行動の教育」がなされなければなりません。現代は「心の教育から、行動の教育へ」を目指して「生き方の教育」を構想することを真剣に考えることが大切だと思います。
手紙文は、書く相手があり、はっきりした目的があります。正しい文字、きれいな文・文章で心をこめて書き、ポストに投函します。返事がきたら、また書きます。何回も継続して便りをする回数が増え、心のつながりも益々深くなっていきます。生活も充実し、生きることに喜びを感じ楽しくなります。
具体的な目的があり、書く必要を感じたとき、子供たちは意欲的になり表現行動は活発になります。
生活文・感想文・記録文・日記文・説明文…等のジャンルがありますが、この中で手紙文は、喜んで文章を書き、しかも作文力が定着する最適のジャンルではないかと考えます。
作文力向上が強調されている今日、手紙作文の学習を国語の授業の中に積極的に取り入れたり、日常生活の中で必要に応じて書く活動を設定し、実用文としての手紙文の機能を明確にしたり、家庭生活においても電話ばかりに依存せず手紙文を気楽に書くことを習慣化することは、優しくたくましく行動する子供を育てるためにも極めて重要であり、すぐに実行に移すことができます。
新しい教育は、子供一人一人が自分のよさや特性・個性を発見し、その可能性を信じ伸ばして二一世紀を主体的・創造的に生きるために必要な資質や能力の獲得を目指しているのです。その中心的なキーワードは、いうまでもなく「自ら思考し、判断し表現・行動する人間の育成」です。また、これからは世界の中の日本人として「美しい日本語で国際社会に伍していく」ことも欠かせない条件です。日本国内だけでなく、世界各地の友達と心の交流や情報交換・文通活動で果たすことができます。つまり、手紙作文の指導の徹底は、国際教育にも連動します。わが国の教育の今日的課題であるばかりでなく、地球的課題であるといっても過言ではありません。
本書は、手紙を書く活動を通して文章力が定着し「作文大好き」の子供を育て、わが国の国語教育の重要課題である表現力の育成・作文指導の充実徹底のために企画編集したものです。
明治図書出版企画開発室代表の江部満様には、企画から出版まで温かいご支援を賜りました。わが国の教育の未来を展望し、新しい国語教育の道を拓くための高い理念追究と遠大な構想実現の一環として、本書を位置づけていただきましたことに心から敬意を表し厚くお礼申し上げます。
中京女子大学教授 /瀬川 榮志
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- 明治図書