- はじめに
- 第1章 2つの立場
- 1 比の発展とみる立場
- 2 関数の初歩とみる立場
- 3 2つの立場の違い
- 4 初歩の関数の仲間
- 5 どちらの立場をとるか
- 第2章 概念の指導と個別指導
- 1 概念をつくる指導の定石
- (1) 1つのまとまりとして認める
- (2) 共通点をみつける
- (3) ことばを正しく使える
- 2 個別指導
- (1) 個別指導の必要
- (2) 個別指導のときの目標
- (3) 教師が見て回る
- (4) 見て回るときに教師がすること
- 第3章 指導案
- 1 時間配当と各時間の概要
- 2 第1時 伴って変る2つの量(その1)
- (1) 時間のはじめに
- (2) 見本を作る
- (3) 例を考える
- (4) 発表と検討
- (5) これで終り
- (6) 学習到達点
- 3 第2時 伴って変る2つの量(その2)
- (1) 対応の表を書いてなかまを作る
- (2) 発表
- (3) 検討
- (4) 第2時の学習到達点
- 4 第3時 比例
- (1) 観点の整理
- (2) 表現の工夫
- (3) 発表とまとめ
- (4) 確かめ
- (5) 練習
- (6) 第3時の学習到達
- 5 第4時 反比例
- (1) 観点の整理
- (2) 表現の工夫
- (3) 手びき
- (4) 第4時の学習到達点
- 6 第5時 比例の式
- (1) ことばの式を書く
- (2) 式の特徴
- (3) 第5時の学習到達点
- 7 第6時 反比例の式
- (1) ことばの式を書く
- (2) 第6時の学習到達点
- 8 第7時 ここまでの練習
- 9 第8・9時 関数のグラフ
- (1) 具体例は第2時のもの
- (2) グラフのかき方の説明
- (3) グラフをかく
- (4) グラフの特徴を知る
- (5) 第8・9時の学習到達点
- 付録 1
- 付録 2
- 付録 3
はじめに
この指導案は比例・反比例を関数の初歩とみる立場で作ってあります。比例・反比例は,2つの立場からみることができます。1つは比の発展とみる立場で,他の1つは,関数の初歩とみる立場です。この2つの立場については後で説明します。
1つの物を2つの立場から見ることは珍しいことではありません。たとえば,1つの家を二階建と見ることもありますが,木造建築と見ることもあるでしょう。二階建と見るのは,何階建かという立場から見たのです。階数を数えることを知らないと二階建かどうかはわかりません。木造建築と見るのは,材料は何かという立場から見たのです。建築材料の知識がなければ木造建築かどうかはわかりません。こういうわけで,1つのものをある立場から見たときには,この立場から見るとこのように見られると説明する必要があるのです。
ところが,教科書によっては,比例・反比例を扱うときに,この2つの立場のどちらに立つかをはっきりせずに,結果だけを並べて書いてあることがあります。しかし,この2つの立場は全然違うものですから,どのような立場から見るとこのように見えるということを教師が自覚して指導しないと,こどもたちがわからなくなるのは当然でしょう。
この本では,第1章で2つの立場について説明します。第2章で概念の指導と個別指導について説明します。個別指導について御存知の方はそこを飛ばして第3章にすすんでください。
個別指導はいままでの一斉指導と全然違いますから,これに慣れるのに努力が要ると思いますが,個別指導の仕方を身につけることができると,どの教科の指導にも適用できますから,非常に価値があると思います。
個別指導をするとこどもたちの学習態度が変ります。どの子も熱心に学習するようになります。落ちこぼれる子がいなくなります。
第3章で指導の具体案を説明します。この指導案は普通の教科書に書いてあるのとは,指導の順序も,方法も違いますから,そのつもりで読んでください。この指導案のとおりに指導すると教科書から離れて指導することになります。内容は全く同じですが,順序と方法がちがうのです。
この指導案では,教師が比例・反比例を説明するのではなくて,教師の指導によって,こどもたちの頭の中に比例・反比例の概念をつくりあげてゆきます。こどもたちが具体例を操作しているうちに,頭の中に概念がつくられてゆくのです。
それには,まず最初に関数の概念をつくります。その関数の中でなかまを作って,その1つが比例,別のなかまが反比例,という感じで比例,反比例をとらえます。その後で,それらを表す式,グラフという順序で指導します。
この指導案は既に多くの教師によって実施され好結果を得ています。それでわたしたちは自信を持ってお勧めしますが,教科書を離れて指導することを気にされる方は実施されない方がよいと思います。
この指導案のとおりに指導したつもりでも,うまくゆかないときがあります。それは,あなたの指導のどこかに欠陥があるのです。それで,指導のようすを詳しくお知らせくださると原因を解明して対策をたてます。そうすると必ずうまくゆきます。わたしたちは,数多くの指導事例を持っていますので安心してお任せください。