- 1 向山洋一全集全一〇〇巻刊行へのまえがき
- /向山 洋一
- 2 特別支援の子どもへの配慮事項一〇ヶ条
- /小嶋 悠紀
- T 教材研究と授業技量は別モノである
- ─技量検定は在来線と新幹線の違い!─
- 1 漢字セミナーでライセンスに挑戦!
- 2 批判され傷つくから伸びるのだ
- U 附属小・有名校公開研がする技量検定
- 1 F表ランクの実践はこうだ!
- 2 授業のリズム・絶対テンポ116って何だ?
- V むずかしいあの子≠ェ変化した!
- ─技量検定の効果は毎日の授業にあらわれる─
- 1 「できない」と鉛筆を投げ出した子に笑顔が戻った
- 2 テストで十点、二十点しかとれなかった子が、九十点、百点をとる
- W 授業上達の極意は、やはりこれしかない!
- 1 あらゆる場での模擬授業研修
- 2 授業は最初の一五秒が一つのポイント
- 3 コメントを受け入れることから始まる!
- X 子育て最中の女教師・技量検定に挑む
- 1 C表の授業技量検定の受検物語
- 2 検定結果を自己分析する!!
- Y 高校教師が語る学びの効果
- 1 県立高校国語教師の受験体験記
- 2 高校理科教師の歩み
- Z すべての上達論と同じく、受検しないと授業力も落ちる
- 1 プロとは一日も休まないことなのだ!
- 2 A表検定指導案のレベル紹介─「ビオトープから鎮守の森へ」─
- [ 中国上海師範大学実験校レベルを意識したら
- ─勉強否定論からの脱却の一歩─
- \ その道の達人たちが見た技量検定
- 1 達人たちが注目したのはここだ!
- 2 未来の教師たちもこう語る
- ] できる教師の授業研究第一歩≠ヘここから始まる
- 1 授業をテープにとり、記録し、いらないことばを削除する
- 2 「言葉を削る」は授業を確かに変化させる
- XI 大学の講義と技量検定の違いはどこか
- 1 経験則を学ぶ大切さを学ぶ
- 2 どん底から脱出出来た!
- XU 授業と主張を公開する場がなぜ必要か
- 1 研究は「体力主義」でよいはずがない
- 2 若い教師が「先行研究から学ぶ」スキル紹介
- XV 「権力」をよりどころに「指導」するとどうなるか
- 1 実力なき人が指導するとき崩壊が始まる
- 2 「ガイド学習」実力者の実態レポート
- XW 教師評定を評定するメタ認知システムが必要だ
- XX 授業名人≠ヘどう誕生していったか
- XY 教育委員会に広がる授業力向上≠ヨの取組み
- 1 都教委「授業力の向上策」を示す
- 2 ほとんどの教師は最下位のレベル
- 3 わずか五分の模擬授業なのに
- 4 評定項目「目線」の威力
- 5 都教委「統率力」と「審判する人」
- あとがき
- /松崎 力
1 向山洋一全集全一〇〇巻刊行へのまえがき
/向山 洋一
向山洋一全集全一〇〇巻が刊行されることになった。
これは、日本の教育界で初めてのことであり、他の分野でもほとんど耳にしない出来事である。
私が、小学校で三十二年間実践したことのすべて、千葉大学、玉川大学で十年余にわたって教えたこと、NHKクイズ面白ゼミナール、進研ゼミ、セシールゼミ、光村、旺文社、正進社、PHP、サンマーク出版、主婦の友社などで発刊した教材群(その多くは、日本一のシェアをとった)などが入っている。
すべての子どもの学力を保障するために、とりわけ発達障がいの子の学力、境界知能の子の学力を保障するために、慶応大学など多くの専門医と協同研究をしてきた成果でもある。
教育技術の法則化運動は、結成して一年で日本一の大きな研究団体となり、二十一世紀にそれをひきついだTOSSは、アクセス一億、一ケ月で七十七ヶ国からのアクセスがあるなど、ギネスものの無料のポータルサイトとなって、多くの教師、父母の方々に情報を提供するようになった。
TOSS学生サークルも全国六十大学に広がり、TOSS保護者の支援サークルも生まれている。
総務省、観光庁、郵便事業会社と全面的に協力した社会貢献活動もすすめてきた。例えば、「調べ学習」として、全国一八一〇自治体すべての「観光読本」(カラー版)を自費で作り、八〇〇余の知事、市、町村長からのメッセージをいただいている。
このような大きな教育運動の中で、多くの方々と出会い仕事を共にしてきた。波多野里望先生、椎川忍総務省局長はじめ、幾多の方々の応援に支えられてきた。
また、こうした活動を普及していく多くの編集者とも出会ってきた。
とりわけ、お世話になったのが、向山洋一全集全一〇〇巻のほぼ全部を創ってくれた江部・樋口編集長である。多くの方々に心から御礼の意を表したい。
この一〇〇巻が完成する時、二〇一一年三月一一日、一〇〇〇年に一度といわれる巨大地震が日本をおそった。
東北地方太平洋岸が壊滅的な被害をうけた。
向山洋一全集全一〇〇巻と共に、この東日本大震災のことも、この全集に含めておきたい。
どこよりもはやく、東日本復興の企画会議を招集し、今回百数十人から寄せられた「復興企画」の中から寄稿をお願いしたものである。
「TOSSの活動、願い、実行力」を具体的に示すものとして、後世に長く伝えられていくことと思う。
2 特別支援の子どもへの配慮事項一〇ヶ条
/小嶋 悠紀
二〇一一年三月一一日。この大震災が教育界に投げかけた課題は大きい。とりわけ震災時に特別支援を要する子どもたちをどのように支援していくかは緊急の課題である。
大震災になると最も混乱する子どもはまぎれもなく「発達障がい」の子どもである。避難していることが理解できずに、自宅に何回も帰宅しようとする発達障がいの子ども。避難所に入れず車で避難生活を続ける親子。さまざまな困難点が生じている。このような事態でも発達障がいの子どもに対する適切な対応が教師には求められる。今回の大震災をもとに特別支援の子どもへの代表的な配慮事項七個をまとめた。
1 とにかく避難をさせよ
特にアスペルガーなどの子どもたちは「周りの雰囲気をつかむ」ことが苦手な子どもが多い。地震が発生し、周りが避難をしていても自ら避難をしようとしない子どももいる。自分の興味のある世界にこだわりそこから戻ってくる事ができないのだ。一人で部屋に残ってしまい慌てて教師が迎えにいったという事例も報告されている。こだわりがあり、そこから引き離そうとするとパニックになってしまう場合もある。しかし、まずは「避難させる」ことが最重要課題だ。パニックとなり泣いて叫ぼうがその場から連れて行かなくてはならない。命を守る事が先決である。
2 教師のそばで待機させよ
ADHDの子どもも同様に「指示が入っていかない」ことがある。「ワーキングメモリー」が少ないために、「校舎に戻ると危険である」ということを忘れ、「あ! ランドセル持ってこなきゃ」と校舎に戻ろうとしたADHDの子どももいる。教師は全体掌握をすることが必要なので、常にADHDの子どもに支援ができるわけではない。教師のそばで待機させ、とっさの衝動行動に対応できなければならない。
3 個別に声をかけよ
発達障がいの子どもたちは「全体での指示を、自分への指示と捉えられない子ども」もいる。「校庭まで走ります」と言ってもすぐに行動できないのだ。しかし、個別に声をかける事で「自分に指示されたのだ」と理解できる。
4 大声で叱らずに穏やかに伝えよ
どうしても全体の指示通りに動く事ができないことで発達障がいの子どもたちを大声で叱ってしまうことがある。運動会の練習でマイクを使い「お前! なんで言う通りにできないんだ!」と発達障がいの子どもを叱りつける場面もある。不勉強も甚だしい。震災のような大混乱の状態で、発達障がいの子どもはいつも以上に混乱し不安な状態になっている。このような状態の時、大声で叱る事は逆効果である。混乱しているからこそ、穏やかに伝えることが重要だ。
5 ケガなどがないか確認せよ
発達障がいの子どもの中で「感覚が鈍感な子ども」も多い。けがをしているにもかかわらず「いたくないです」といったり、頭を打っていても「大丈夫です」という子どももいる。避難し、ある程度落ちついたところで、確認することが大事である。
6 明確な予定・指示を伝えよ
学校でたった一つ予定変更があっただけで、パニックを起こす子どもがいる。しかし、震災時は「予定変更・予定が確定しないこと」の方が多い。さらに「ちょっと待って」などのあいまいな表現の理解が難しい子どももいる。その中でも「二時に配給でおにぎりが食べられます」「朝七時に電車は動きます」など明確な予定・指示を伝えることが必要である。
7 テレビを見せるな
震災時は繰り返し「地震」「津波」などの映像が流される。これを見た子どもがあのような地震・津波が何度もやってきているのだと思い込んで不安になってしまうことがある。できるだけテレビは見せないようにする。
以上、特別支援の子どもへの配慮一〇ヶ条である。教師の日常における発達障がいの理解と対応が震災時にも彼らを適切に支援する力となる。
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- 明治図書