- 1 向山洋一全集全一〇〇巻刊行へのまえがき
- /向山 洋一
- 2 二〇年後 世界遺産になるか
- /根本 直樹
- T 技量検定が生んだ教師力成長のドラマ
- 1 D表検定にいどむ─敗北感が教師力を育てる
- (1) サークル内での模擬授業(校内での研究授業)一〇〇回を突破して……
- (2) 強烈な敗北感 今から再出発する
- (3) 笑顔で授業したと思っていた…。─記憶そのものが間違っていた 自分自身を知ることができたD表授業検定
- (4) 授業の五つの観点は達成できたか!
- (5) 自分のどこがよくて、どこがだめなのか─成長するための機会がライセンス
- 2 検定の緊張が教師を飛躍させる!
- (1) 緊張が言葉を削った
- (2) すべては自分にかかっている
- 3 学級崩壊のクラスで授業を成立させる力量がD表の25級
- 「五分間の授業検定」で自分の「我流」を知る
- 4 若き女教師が授業技量検定に挑みつづける理由
- (1) 見栄からの脱却
- (2) 検討を重ねてから受検しなくては─。
- 5 衆議院文部科学委員会「向山洋一講座の質疑」
- (1) TOSS授業技量検定に向けて
- (2) 教室の子どもたちのために
- 6 より価値ある教師になる道標
- (1) 教科書を開いていることをまずほめた
- (2) スモールステップで教えた
- (3) 問題の答えを赤鉛筆でうすく書き、なぞらせた
- (4) 九九表をもたせた
- 7 毎時間の授業開始の儀式を強要する校長・指導主事の判定能力とは
- 個々についての把握があってこそ目線が効く
- 8 学級崩壊を一週間で建て直す技量
- 9 すぐれた技術を皆のものにしよう!!
- 10 中教審議事要旨でも取り上げられた授業技量検定
- 11 新卒教師を守り育てる教育文化
- 12 上達のシステムはこうだ!
- 13 自分の授業が変わる実感とは
- 14 検定は皆で、あきらめないで挑戦しつづけることから─授業技量検定5段への挑戦(上)
- あると信じて探す! TOSS A表検定の資料集めの極意
- 15 体験者の手記に思う─授業技量検定5段への挑戦(中)
- (1) 一段を上げる苦労とは
- (2) 一つのことを確定するのに一週間かかった
- (3) あきらめない
- 16 根拠のない「教育技術の猿真似」─授業技量検定5段への挑戦(下)
- (1) 高段者の闘い─軍団の将同士、がっぷり四つの闘い
- (2) 現象としての授業 自覚としての授業
- 17 参加者をわしづかみにする授業とは─NHKテレビ、TBSテレビ、読売新聞が取材に入った
- 18 口語の授業技量検定の実際─五度目のB表受検 岡惠子先生の指導案
- 国語指導案「ひらがな」
- 19 演習があって教師力は上がる─「すぐれた技術・方法をしっかりと読み」「ライブをじっと見てノートする」
- 子どもの事実を見つめる
- 20 ある実践家の修業を追って─一〇年の無駄をとり戻すべく片道一四〇キロの道をオホーツクへ通う
- 21 技量検定の原則六ヶ条はこれだ─一秒でもオーバーすれば授業技量検定失格
- 22 教室実践の先にあるものを見据えて
- (1) 往復二〇〇キロメートルかけてオホーツクに通う魅力─学び続けることの意味を実感している
- (2) 「サークルに入る前と入った後」授業中、私はどこを見てきただろう
- 23 授業評定は教育界でどう行われてきたのか
- あとがき
- /松崎 力・甲本 卓司
1 向山洋一全集全一〇〇巻刊行へのまえがき
/向山 洋一
向山洋一全集全一〇〇巻が刊行されることになった。
これは、日本の教育界で初めてのことであり、他の分野でもほとんど耳にしない出来事である。
私が、小学校で三十二年間実践したことのすべて、千葉大学、玉川大学で十年余にわたって教えたこと、NHKクイズ面白ゼミナール、進研ゼミ、セシールゼミ、光村、旺文社、正進社、PHP、サンマーク出版、主婦の友社などで発刊した教材群(その多くは、日本一のシェアをとった)などが入っている。
すべての子どもの学力を保障するために、とりわけ発達障がいの子の学力、境界知能の子の学力を保障するために、慶応大学など多くの専門医と協同研究をしてきた成果でもある。
教育技術の法則化運動は、結成して一年で日本一の大きな研究団体となり、二十一世紀にそれをひきついだTOSSは、アクセス一億、一ケ月で七十七ヶ国からのアクセスがあるなど、ギネスものの無料のポータルサイトとなって、多くの教師、父母の方々に情報を提供するようになった。
TOSS学生サークルも全国六十大学に広がり、TOSS保護者の支援サークルも生まれている。
総務省、観光庁、郵便事業会社と全面的に協力した社会貢献活動もすすめてきた。例えば、「調べ学習」として、全国一八一〇自治体すべての「観光読本」(カラー版)を自費で作り、八〇〇余の知事、市、町村長からのメッセージをいただいている。
このような大きな教育運動の中で、多くの方々と出会い仕事を共にしてきた。波多野里望先生、椎川忍総務省局長はじめ、幾多の方々の応援に支えられてきた。
また、こうした活動を普及していく多くの編集者とも出会ってきた。
とりわけ、お世話になったのが、向山洋一全集全一〇〇巻のほぼ全部を創ってくれた江部・樋口編集長である。多くの方々に心から御礼の意を表したい。
この一〇〇巻が完成する時、二〇一一年三月一一日、一〇〇〇年に一度といわれる巨大地震が日本をおそった。
東北地方太平洋岸が壊滅的な被害をうけた。
向山洋一全集全一〇〇巻と共に、この東日本大震災のことも、この全集に含めておきたい。
どこよりもはやく、東日本復興の企画会議を招集し、今回百数十人から寄せられた「復興企画」の中から寄稿をお願いしたものである。
「TOSSの活動、願い、実行力」を具体的に示すものとして、後世に長く伝えられていくことと思う。
2 二〇年後 世界遺産になるか
/根本 直樹
チェルノブイリの原発事故から二五年、フクシマで原発事故が起きた。地震と津波の影響による事故である。
この事故による被害は甚大だ。
放射線の被害は意外に少ないことが、時を経るに従って明らかになるだろう(現在二〇一一年四月二九日)。
甚大なのは風評被害である。農作物、畜産、漁業、観光産業はおろか、工業生産物にまでその被害は及んでいる。
さらに、いじめまで起こっている。無知はおそろしい。
しかし、その無知の実態を作ってきた主因は、間違いなく教育にある。エネルギー教育、原子力教育、危機管理教育があまりにも足りなかったことが主因である。
観光立国と言いながら、外国人観光客は激減した。
このマイナス状態をいかにしてプラスに転じることができるか、これを考えるのが教師の大切な仕事である。
「負の遺産」として世界遺産に登録できるか、という視点が必要になる。
「負の遺産」原爆ドームは次の「基準」によって登録された。
(6) 顕著で普遍的な価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または明白な関連があること(ただし、この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
フクシマの原発は、次の基準も条件を満たすだろう。
(2) ある期間、あるいは世界のある文化圏において、建築物、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展における人類の価値の重要な交流を示していること。
(3) 現存する、あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する独特な、あるいは稀な証拠を示していること。
(4) 人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体または景観に関する優れた見本であること。
人類史上、特筆すべき大災害なのである。
フクシマ原発の事故は、天災が引き金ではある。しかし、事故の原因は「人」にある。
三月一一日、地震発生から数時間の初期対応のまずさ(危機管理の低さ)、建屋の中に使用済み核燃料プールを作るという設計の問題、災害に弱いマークT型という四〇年前のタイプを当初の予定を延長して使用したこととそれを許可した国、「福島第一原発は津波に弱い」という国会での質問のスルーなどが重なっていた。
どれか一つでも対応がよければ、これだけの災害にならずにすんだ。
そのことを後世への教訓にするためにも世界遺産への登録を、教育界から訴えたい。
また、「負の遺産」という視点だけではなく、「大災害を短時間に克服した」人類の証としても残していきたい。千年に一度の災害による事故を克服できれば、これまでにないレベルでの安全性が保障されることにもなるからだ。
二五年たって、ようやくチェルノブイリに観光客が訪れるようになったと言う。しかし、石棺の老朽化が進み、まだまだ世界遺産登録どころではないだろう。
日本は、日本と世界中の技術と英知を結集して、この事故を早期に終結させることが可能であると信じる。
これらの地域は必ず復興する。関東大震災も東京大空襲も、ヒロシマもナガサキも、阪神・淡路大震災もすべて復興してきた。今回も必ず復興する。その復興の広がり、スピード、被災地の人々の秩序ある行動、組織の強さは、世界に驚きを与えていくことと思う。
世界遺産になることで、マイナスを受けたこの地域は、大きな活力を得られる。
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- 明治図書