- まえがき
- T 一学期の授業参観
- [1] 全員が活躍する出会いの参観授業
- 国語・テンポのある楽しい授業
- 国語・楽しい授業参観を実現する―だれでもできる言葉遊び・群読・暗唱の授業―
- 国語・漢字文化の授業―易から難へ―
- 国語・慣用句の授業
- 算数・全員が分かる・できるを保障する向山型算数の授業―小数のかけ算(小数×小数)―
- 算数・学びのシステムを保護者と共有する参観授業―小数のわり算(小数÷小数)―
- [2] 一学期二度目の参観日はこんな演出を
- 国語・「あかねこ漢字スキル」で家庭学習の大切さを伝える
- 国語・教室爆笑・作文指導で参観授業―「熟語作文の授業」―
- 算数・パズルで楽しむ算数の授業
- 算数・体積の求め方の工夫と教科書チェック―グーグルスケッチアップの活用―
- U 二学期の授業参観
- [1] 親子で楽しみ、保護者を巻き込む参観授業の具体例
- 国語・名句百選かるたで伝統文化に親しむ
- 国語・参観日に考える日本の伝統文化と自分の目標―言葉書道の作品づくり―
- 国語・楽しく力がつく詩文の授業―参観日に楽しく一字題一行詩―
- 算数・難問に挑戦・中学入試レベルの問題に挑む!―難問一問選択システム―
- 算数・誰が勝つのか! 親子で挑戦! ペーパーチャレラン
- [2] 子どもの主体的な動きを見せる参観授業の具体例
- 国語・全員が筆者になれる一時間の説明文指導
- 算数・親子で算数の文章題に強くなろう
- 算数・算数的活動を取り入れた授業―台形の面積の求め方―
- V 三学期の授業参観
- 一年間のまとめを見せる参観授業の具体例
- 国語・クラス全員が「冬休みの思い出を語る」30秒スピーチ
- 国語・親を巻き込む詩文「りんご」で討論の授業
- 算数・全国学力テストA問題を楽しくやってみよう
- あとがき
まえがき
年間数回の参観授業があります。
貴重な時間を割いて、保護者は参観授業に来てくださいます。
参観授業は、「親が授業を見に来ているという特別の場合」です。普段の授業とは、明らかに様相が違います。
TOSS代表向山洋一氏は、参観授業を「普段と同じ授業をする」という教師のことを「不感性」と言い切っています。
低学年の参観授業。開始十数分前から、いや朝から、子どもが落ち着きません。
窓から、学校へ向かって歩いてくる大人の姿を見ては、「○○ちゃんのお母さんだ。」と叫びます。それを聞いた近くの子たちは「え〜どこどこ?」と窓側に殺到していきます。
子どもにとっても、参観授業は、「家の人に見られる」という普段とは違う状態なのです。
授業が始まっても、子どもの視線はなかなか教師に向きません。自分の親が来たかどうか、確かめなければ安心できないのです。
だから、私は次のように言います。
「家の人が来たかどうか探していいよ。見つかったら、手を振ってあげてね。」
子どもは、嬉しそうに手を振っています。
親がまだ来ていない子は不安そうです。家ではよく叱られているクラス一やんちゃな子だってそうでした。
高学年でも同じでしょう。低学年の子ほど落ち着かないということはないと思います。しかし、今日ばかりは、家の人にいいところを見せようと思って学校に来ます。手を挙げようと思って学校に来ています。
だから、教師はこういう子どもの願いに応えるような参観授業を演出しなければならないのです。
普段の授業とは違う「演出」をする必要があります。
以前、授業参観は「親が教師のことを見に来ると思っていた」という先生がいました。
もちろん、四月、わが子の担任の先生がどんな先生かは気になるでしょう。
しかし、それ以上に、親は授業参観の時に、わが子の様子を見に来るものなのです。
ちゃんとやっているだろうか。授業についていけるだろうか。手を挙げているだろうか。
ということが、心配で、心配で、見に来るのです。
自分の子どものことを「できない子」と思い込んでいる親なら尚更です。
他の子と比べてはいけないと知りつつも、「うちの子は手が挙がらないな…」「分かっているのかしら…」などと思ってしまいます。これは親心として仕方がないことでしょう。だから、保護者のこのような思いを、教師はきっちり受け止めて授業参観を演出しなければなりません。一部の子どもだけが活躍する授業ではだめなのです。
全員の子どもが笑顔で楽しく取り組める授業。子どもに力がつく授業。親も思わず考えてしまうような知的な授業。
本書は、このような授業を多く紹介しています。全国津々浦々の教室で、授業参観が子どもと親と教師の笑顔であふれることを願っています。
本書執筆にあたっては、明治図書樋口雅子編集長から企画をいただき、執筆中は何度も何度も励ましていただきました。感謝申し上げます。ありがとうございました。
二〇〇九年九月 TOSS甲府サークル風代表 /山口 正仁
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- 明治図書