知的追求「向山型社会」の展開 小学3年

知的追求「向山型社会」の展開 小学3年

好評6刷

再現する学習を軸にしたTOSS社会研究会の実践。

体験を絵地図に表す、航空写真の読み取りとインターネットの活用、エネルギー授業、KJ法を使って情報を再構成する、見学で得た情報を再構成するなど向山型社会の授業例


紙版価格: 1,800円+税

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-424411-4
ジャンル:
社会
刊行:
6刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 160頁
状態:
在庫僅少
出荷:
2019年9月19日
新学習指導要領解説書籍
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目次

もくじの詳細表示

はじめに
T 見てきたこと(体験)を絵地図(記号)に表すというシンプルな活動を繰り返してつくる「学校まわり」の授業
一 教科書の課題は適切か
二 体験と記号
1 「学校まわり」の授業
(1) 校舎内の地図を描く(一時間)
(2) 学校の西側を見学する(二時間目)
(3) はじめての絵地図づくり(三時間目)
(4) 学校の南側をグループで見学(四時間目)
(5) 学校の南側を絵地図にする(五時間目)
(6) 学校の北側と東側の見学の計画を立てる(六時間目)
(7) 学校の北側と東側の絵地図をつくる(七、八、九時間目)
(8) 言葉によるまとめ(一〇時間目)
(9) 道路と量販店(一一時間目)
(10) 絵地図から地図記号を使った地図へ(一二時間目)
三 指導の原理に沿って反復を行う
U 航空写真の読み取りとインターネットを活用した「市のようす」
一 間接体験の記号化
二 地形の違い
1 「市のようす」の授業
(1) 航空写真で見る海辺の土地(一時間目)
(2) 国見地区と清明地区の違い(二時間目)
(3) 写真類読み取りの指示(雪小モデル)に挑戦(三、四時間目)
(4) 「向山一字読解」の授業に挑戦(五、六時間目)
(5) 福井市の地形と小学校の分布(七、八時間目)
(6) 吉田先生とパソコンをしたい(九、一〇時間目)
(7) 福井市の自慢探し(一一時間目)
(8) パソコンと格闘してできた福井市の地図(一二、一三、一四時間目)
三 インターネットの活用は三年生でも可能である。
V 授業にはモノを準備せよ。中学年のエネルギー授業「電気を届ける」
一 エネルギー教育の必要性
二 モノを準備する
1 「電気を届ける」の授業
(1) 電気をつくる(一時間目)
(2) 電気が届くまで(二時間目)
(3) 保守作業の苦労(三時間目)
三 教材は簡単に入手できる
W KJ方を使って情報を再構成する 「スーパーマーケットで働く人」の授業
一 見学を中心とした授業を組み立てる
1 「スーパーマーケットで働く人」の授業
(1) 見学の準備――見学の視点をもたせる――(一、二時間目)
(2) スーパーマーケットの見学一回目(三時間目)
(3) 見学してきたことをカードに書き、それを整理する(四、五時間目)
(4) 「先生の問題」を考えさせる(六時間目)
(5) 「裏で魚を焼いているのは売るための工夫か」を討論する(七時間目)
(6) アンケート集計「新鮮な物」がトップ(八時間目)
(7) 二回目の見学の計画を立てる(九時間目)
(8) 一番たくさん撮ってきた班が一番いい班です(一〇、一一、一二時間目)
(9) 二回目のスーパーマーケット見学(一三時間目)
(10) 見学のまとめをパソコンでつくる(一四、一五、一六時間目)
X 見学で得た情報を再構成して作文にまとめる「かまぼこ工場」の授業
一 認識の変化を知るために作文にまとめさせる
1 「かまぼこ工場」の授業
(1) 教科書を使って情報を蓄積する(一時間目)
(2) おいしくて安全なかまぼこをつくる工夫(二時間目)
(3) かまぼこ工場の見学(三、四、五時間目)
(4) 最高九六行の見学メモ(六時間目)
(5) フォーマットに合わせて作文を書く(七、八時間目)
Y 学習上・行動上に困難さを抱える子たちへの指導を意識した「火事を防ぐ」の授業
一 写真読み取りの授業に熱中するA君
二 学習上・行動上の困難さをもつ子どもたちへの指導についてMLで議論する
三 グレーゾーンの子どもたちを視野に入れながら「火事を防ぐ」の授業に取り組む
1 「火事を防ぐ」の授業
(1) 火事の現場の写真読み取りから授業を始める(一時間目)
(2) 学校内の消火器探し(二時間目)
(3) 「発問は、発見させる言葉で問え」(三時間目)
(4) 火事を消すときに水はもっていきますか(四時間目)
(5) 消防署を見学する(五、六、七時間目)
(6) 消火栓を見に行く(八時間目)
(7) パソコンを使った紙芝居をつくる(九、一〇時間目)
(8) 発表会(一一、一二、一三、一四時間目)
2 A君の作った「お話」
『知的追求「向山型社会」の展開 小学3年』の解説
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はじめに

 一八年ぶりに社会科の授業を担当した。

 「楽しかった」の一言に尽きる。

 何を見せても感動する。

 授業中の反応もいい。

 何より自分自身が新鮮だった。

 そして、気がついたら一年間の授業記録を書き上げてしまっていた。

 こうしてできたのが本書である。

 もちろん単なる勢いだけで、実践してきたのではない。

 私が、一貫して追い求めたのは、向山洋一先生の社会科実践である。向山先生が主張されている「再現する学習」を、常に念頭において授業を組み立てた。

 では、再現する学習とは何か。

 例えば、学校のまわりを調べてきて、絵地図に表すという学習がある。見てきたことを、絵地図という形に表す学習である。おそらく日本中のどこでも行われているはずである。

 向山先生は、こうした学習を「再現する学習」と呼んだ。

 かつて低学年の社会科があったころ、盛んに行われていた郵便やさんごっこもみな「再現する学習」である。見学をしたり、話を聞いたことをノートや新聞にまとめるのも、もちろん「再現する学習」である。このように考えると、中学年の社会科学習は、そのほとんどを「再現する学習」で行っていると考えることができる。

 社会科の授業の目的は、社会認識を育てることである。社会認識を育てるとは、簡単に言えばものの見方、考え方を育てることである。

 ものの見方や考え方を育てていく上で、体験は欠かせない。向山先生は、それを「雪」を例にして説明している。例えば、「雪」を説明するときに「白い」「空から降ってくる」「積もる」「冷たい」というような言葉による説明をいくら積み重ねても、雪をまったく見たことのない人に雪というものを理解させるのは難しい。雪を実際に見て、さわってみて、あるいは積雪地にしばらく生活してみて「雪」という言葉が指すものを理解できるようになる。

 三年生ではじめて学習する地図も同じである。地図が読めるということは、その裏にある数多くの体験情報と地図上の記号とが一致するということである。例えば、地図上で、市街地を表す赤の斜線を見れば、私の頭には、ビルやずらっと立ち並ぶ商店などの映像が表れてくる。時には駅の映像も表れる。これは、いくつもの市街地の様子を私が実際に見ているからである。

 地図上の情報はすべて記号情報である。記号情報は、それだけでは意味を成さない。体験情報と結びついて初めて意味を成す。だから、三年生の地図学習は、校区内を歩いて見学をし、それを絵地図にまとめるという順で学習が進むのである。スーパーマーケットの見学に行くのも、工場の見学に行くのもみな同じである。

 もちろん、体験をさせるだけでは、「再現する学習」とは言えない。

 再現するとは、体験活動によって得た情報を「ある方向に沿って、再整理する」ことである。例えば、絵地図をつくるという活動は、見てきたことをすべて記号にしていく作業ではない。見てきたことの中から必要な物を選択し、それを記号化していく作業である。

 体験学習で得る情報は莫大である。校区内を歩けば、横断歩道もあるだろうし、信号もある。電柱や電線もある。飼われている犬や猫に気を奪われたりする子もいるだろう。しかし、地形のようすや土地利用のようすを理解させるためには、これらの情報は不必要である。地図へと再現していく過程で削除しなければならない。

 反対に、水田が広がっているところや住宅地になっているところは、きちんと再現させなければならない。こうした情報の取捨選択を常に意識させることが、「再現する学習」なのである。


 「三年生の社会科は、何をやっていいのかわからない」という話を聞く。

 例えば、三年生の最初の単元は「学校まわり」である。この単元のねらいは、学校のまわりの地形や土地利用のようすを理解させることである。

 これを私が現在勤務している清明小学校にあてはめてみる。清明小学校は、福井市の市街地のはずれにある。単元のねらいに即して考えれば、清明小学校のまわりの地形は平地、土地利用は住宅地と水田となる。つまり、清明小学校のまわりは、平地であり、土地は住宅や水田に使われているということを理解させればいいのである。

 文章にしてしまえば、たったこれだけのことである。ところが、これだけの内容を理解させるのに一〇時間以上の時間が配当されている。とりあえず活動させなくてはならない。指導要領にも、「観察調査したり、白地図にまとめたりして調べ」とある。そこで、子どもたちを連れて学校の周囲を歩く。地図をつくらなければならないので、メモを取らせる。

 しかし、子どもたちに取らせたメモは、そのほとんどがでたらめである。それどころか、通りを一つ曲がっただけで、地図上のどこにいるのかさえわからなくなってしまう。仕方なく、模造紙を張り合わせてつくった巨大な校区の白地図に子どもたちに描かせた建物の絵を貼り付けておしまいとなる。実は、私も若いころ同じような体験をしている。「こんなことをしていったいどんな力がついたのだ」と思ったものである。

 子どもたちを連れて学校の周囲を歩くことは間違いではない。メモを取らせることも絵地図をつくらせることも間違いではない。重要なのは、それらの活動を、どういう筋に沿って組み立てていくかということである。

 中学年の社会科では体験活動が多い。そうした体験活動をどのようにして組み立て、そこから得た莫大な情報をどう整理するか。どの筋道を明確に示しているのは「再現する学習」以外にはない。

 本書は、この「再現する学習」を軸にして一年間取り組んだ実践を紹介している。ごく普通の小学校で、行った実践である。明日からの実践に必ずやお役に立てると思う。


 本書は、TOSS社会研究会の五年にわたる研究実践の中から生まれてきました。TOSS社会研究会は、向山先生の社会科実践に学ぶことを柱とした研究会です。向山先生には、日頃から温かいご指導をいただいています。本書も向山先生のご指導があって生まれたものです。

 また、明治図書の江部満編集長には、本書の企画から執筆に至るまで細かくご指導いただきました。ありがとうございました。


  二〇〇三年三月二十日   /吉田 高志

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