「説明力」を高める国語の授業

「説明力」を高める国語の授業

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すべての言語活動の基盤である説明の力をどう育成するか提案。

何事にも「説明」が求められる時代となったが、国語科では、「説明力」育成の重要性は理解されていても、具体的な実践が追いついていない状況である。本書は、「説明力育成」の必要性と、その具体的な方法を、著者のこれまでの授業実践を通して述べたものである。


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ISBN:
4-18-307019-8
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
中学校
仕様:
A5判 168頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 国語科で高める「説明力」
1 「説明」という言語行為の特性
(1) 「説明」とはどのような言語行為か
(2) 説明を必要とする「問い」には何があるか
(3) 表現活動としての「説明」
(4) 理解活動としての「説明」
2 「説明力」とは何か
(1) 「説明力」という用語が示す範囲
(2) 「説明力」の分析
3 「説明力」を付けることの必要性
4 「説明力」と「伝え合う力」との関係
5 「言語活動例」と「説明」
(1) 言語活動の特性を明らかにする
(2) 言語活動の特性から育成できる能力を明らかにする
(3) 育成したい能力にふさわしい言語活動を選ぶ
U 「説明力」を高める授業プラン集
1 「説明力」を高める「話すこと・聞くこと」の指導
第2学年 分かりやすく話す―ちょっと気になるこんな日本語
第2学年 報告や説明を聞く―ちょっと気になるこんな日本語
第3学年 パネル・ディスカッションをしよう―「ら抜きことば」を考える
2 「説明力」を高める「書くこと」の指導
第1学年 類義語の違いを説明する文章を書く―「ニギル」と「ツカム」はどう違う?
第2学年 読書報告文を書く―私が薦めるこの一冊
第3学年 校章を説明する文章を書く―自分の学校を知る
3 「説明力」を高める「読むこと」の指導
第1学年 音読・朗読を生かして読む―説明的文章教材「自然の小さな診断役」
第1学年 語句の意味に着目して読む―説明的文章教材「フシダカバチの秘密」
第3学年 文法的事項に注意して読む―説明的文章教材「民族と文化」
4 「説明力」を高める「選択国語」の指導
第2学年 現代の文化を話し合う―擬音語・擬態語の不思議な世界
第3学年 郷土教材を生かした選択国語―単元「ふるさとを見つめる〜
奈良 現在、過去そして未来〜」の試み
主要参考文献
初出一覧
あとがき

まえがき

 何事にも「説明」が求められる時代となった。「アカウンタビリティ(説明責任)」、「インフォームドコンセント(納得診療・説明と同意)」などの語が人々の口にのぼり、「説明」がさまざまな場面で実際に行われている。しかし、「説明」を求められたときに、いわゆる「説明」という言語活動さえ行えばよいというのではない。少なくとも相手に「分かる」ことをめがけて「説明」を行っているかを常に反省する必要がある。

 「分かりやすい説明」「説明が分かる」とはよく言うことばである。「説明」の最大の目的は相手が「分かる」ことである。和語で「分かる」と言ってしまうとさまざまなレベルのものが入る。「理解」も「分かる」である。「納得」も「分かる」である。さらには「翻意」「行動」も「分かる」という心理作用の表現された行為である。場合によりレベルはいろいろであるが、少なくとも「理解」の伴わない「説明」は「説明」になり得ない。

 世の言語活動は、すべて「説明」を基盤にして成り立っている。狭義の「説明」はもちろんのこと、意見・説得・解説・報告・記録など、そこには的確な「説明力」が求められる。

 学校教育もまた然りである。学校教育では日常的に「説明」という言語活動が行われている。各教科の授業はもちろんのこと、授業以外のさまざまな場面でも、指導者も学習者も「説明」という言語活動を繰り返している。

 しかし、「説明」が本来の機能である相手の「理解」「納得」を実現しているかと言えば、それはいささか疑問が残る。書店に「分かりやすい説明の仕方」に関する書物があふれているのを見れば、私たちがいかに「説明」に苦労しているかが分かるのである。あるいは、世の分かりにくい「説明」をみれば、そのことはすぐに了解できるであろう。

 学校教育の国語科においては、「説明力」育成の重要性は十分承知しながらも、具体的な実践は不十分な状況である。それにはさまざまな原因が考えられるが、そもそも「説明力」とは何なのか、どのような能力のことを指すのかが明らかでないことが大きい。また、実践を行うにあたっては、学習者に何を説明させるのかという話題・題材の問題、どのような手順と方法で「説明力」を付けるのかという指導過程の問題、どんなワークシートやモデルが有効なのかという学習資料の問題など、課題が多い。

 本書は、著者のこれまでの実践を「説明力育成」の観点から整理し直し、「説明力育成」の必要性を、実践を通して述べたものである。今改めて読み返してみると、この実践で学習者に「説明力」を付けることができたのか、甚だ心許ないが、読者の皆様の少しでもお役に立てれば、こんなにうれしいことはない。

 本書をなすにあたり、巳野欣一先生からは心温まるご指導やご助言をいただき、また、身に余る序文もいただいた。巳野欣一先生から受けた学恩は計り知れない。心から深謝申し上げるとともに、いただいた学恩をさらに発展させるべく研究・実践の精進をお誓い申し上げる。

 末筆ながら、明治図書の江部満氏、大場亨氏には、このような執筆の機会を与えていただき、 また、著者の遅れがちな筆を温かく励ましていただいた。深く感謝申し上げる。


  二〇〇六年一月   /米田 猛

著者紹介

米田 猛(こめだ たけし)著書を検索»

富山大学人間発達科学部教授

1953年生まれ。奈良教育大学卒業。奈良県内公立中学校教諭,奈良教育大学教育学部附属中学校教諭,奈良県教育委員会事務局管理主事,同指導主事を経て,現職

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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