- まえがき
- T 学びを変える教材づくり(教材開発)
- 一 何のために教材開発するのか
- 二 努力と挑戦
- 三 学びを変える教材づくりへ
- 四 具体例
- 1 教材のおもしろさ
- (1)目の前の物を教材にする /(2)何のための新しい教材か /(3)指導案に必要な四つの観点 /(4)どこにでもある教材
- 2 教材開発
- (1)本当の学習とは /(2)便利さが招く物 /(3)授業でストレスがたまる? /(4)学校現場の現状と教材開発 /(5)最良の教材開発とは?
- 3 地図帳の学習
- (1)都道府県の記載は何色? /(2)地名のおもしろさ /(3)日本一低い山をめぐって /(4)地図帳での応用学習「国名は何色?」 /(5)四年生で行いたい地図帳の楽しみ方 /(6)地図のおもしろさ「国道」
- 4 教 科書の学習
- (1)指導の手順 /(2)重要な箇所は何度読めばわかるか? /(3)子どもが目を開く発問 /(4)次年度の教科書はどう変わる? /(5)発展学習の内容
- 5 子どもが学習意欲を出す教材
- (1)良い教材は食欲が湧く? /(2)教材開発のコツ /(3)企業秘密を調べる? /(4)食材に求められるもの /(5)意外なターゲット
- 五 教師の歩いた道を歩かせる
- U 教材づくりの具体例
- 一 「学校の歴史」を教材化する
- 1 ネ タを考える
- 2 田山修三氏への質問
- 3 田山氏からの返信
- 4 学校の歴史
- 5 区別・系統と配置図
- 6 授業の様子
- 二 ジャガイモ焼酎『北緯度』で町おこし
- 1 「北緯度」を知る
- 2 清里町焼酎醸造事業所取材
- (1)工場はジャガイモ畑のまん中 /(2)焼酎つくり /(3)『北緯度』誕生
- 三 八丈島を教材化する
- 1 八丈島へ取材に行く
- 2 教材になりそうな見どころ
- (1)宇喜多秀家 /(2)近藤富蔵 /(3)八丈歴史民俗資料館 /(4)八丈植物公園 /(5)黄八丈
- 四 霧島市福山町の純米黒酢造りの秘密をさぐる
- 1 クレオパトラの美しさの秘密
- 2 「黒酢」造りの条件
- 3 困難をのりこえて
- 4 ペストと四〇人の盗賊
- 〈魔法の壺のはたらきでできる「黒酢」〉
- 5 一つの壺が一つの工場
- 6 魔法の壺のはたらき
- 7 壺は薩摩焼・信楽焼が多い
- 〈二〇〇年造っても「黒酢」のルーツはわからない〉
- 8 「黒酢」造りの命は壺
- 9 問題児の壺
- 10 黒酢のルーツはわからない
- 〈黒酢造りの苦労と黒酢の効用〉
- 11 JAS規格認証食品第一号
- 12 黒酢とアマン
- 13 黒酢造りの強敵
- 14 黒酢の効用
- 〈手造りにこだわる黒酢と大量生産するミツカン酢〉――どちらも江戸時代から造り続けている――
- 15 絶えず研究している
- 16 黒酢の名のおこり
- 17 古い壺と新しい壺
- 18 手造りにこだわる
- 19 コンクリートの道の効用
- 20 ミツカン酢も江戸時代から
- V 学びを変える教材づくりの工夫のし方
- 一 防風林が見えなかった
- 1 見えないものに気づく
- 2 一つのことに気づくと他のものが見える
- 3 思い込みで見てはいけない
- 4 いい教材は応用が効く
- 二 電車の中で偶然資料をみつける
- 1 何でも見てみる
- 2 教材には数字が必要
- 三 土地の人の意表をつく教材
- 1 美しい写真から導入
- 2 防風林の総延長は?
- 3 何のための防風林か
- 4 防風林はいつ植えられたのか
- 5 防風林の効用
- 6 防風林を切る人がいる?
- 四 根釧台地の格子状防風林
- 五 「これだけは何としても教えたい」
- 1 授業はスイカだ
- 2 今の授業は1から食べている
- 3 授業はスイカで決まる
- W 社会科の「かけ算九九?」で学びを変える
- 一 社会科の「かけ算九九?」とは
- 二 県名指導の導入
- 1 何県の地図か
- 2 県名は何色で書いているか
- 3 国名は何色で書いているか
- 4 ABCは何という市か
- 5 県名と県庁所在地名
- X 学びをつくる基礎・基本を考える
- 一 タラントのたとえ
- 二 これからは教育の方法を変えるべきだ
- 三 教材の条件
- 四 教科書の使い方の例
- 五 発展学習
- 六 授業も変える
- Y [講演] 学びの基礎・基本を育てる授業のあり方
- 一 汗をかいた
- 二 子どもの学力低下の三つの原因
- 三 にもかかわらず、新教科書の状況は……
- 四 力をつける授業をするには1・「これだけは教えたい」ものをつかむ
- 五 力をつける授業をするには2・教えたいことは、教えてはならない
- 六 力をつける授業をするには3・教えたいことを、「学びたい、追究したいもの」に転化させる
- 七 転化させるための教育技術
- 八 地図帳の表紙を使った授業1
- 九 地図帳の表紙を使った授業2
- 十 「はてな?」の解決が、基礎・基本につながる
- 十一 子どもに育てなければならないのは「教えられたことを自ら倍増できる応用力」
- 十二 教師自らが生きる力を育てるために
- 十三 百聞があって、一見が生きる
まえがき
わたしは、教材づくり(教材開発)をライフワークと考え、常に教材づくりに気を配っている。
そこで考えてみた。一体何のために教材開発をするのか? と。
究極のねらいは、「追究の鬼」を育てるためである。「追究の鬼」を育てるためには、能力に応じて、どこまでも追究できる教材を準備し、子どもたちに提示しなければならない。それだけではない。追究しながら、子どもたちが「学びをつくり変え、新しいものに」していかねば発展しない。教材は、学びをつくり変えるためにも、そういう内容を含み込んだものを準備しなければならない、と考えた。
今までのように、「一教えて、一覚えさせる」ような授業法ではダメなのだ。学力低下が叫ばれたのは、「一教えて、一覚えさせる」方法の「一」が内容削減で、限りなく小さくなったからである。「一」が「〇・五」くらいに減ってしまった。薄い教科書を見れば、このことははっきりしている。
そこで、わたしが提案しているのは、「倍増する能力」をつける教材の開発と、指導法の改善である。
つまり、「五教えたら、子どもが自らの力で十に倍増できる」そういう「学び方」に変えることを提案しているのである。
「倍増できる力をつける」には、「応用できる」教材内容を提示しなければならない。「応用できる」ということは、基礎基本である。また、子どもが学びを変えたり、応用したりするには、教材が「面白い」ことが必要である。
天照大神が「天の岩戸」におかくれになったとき、神々は暗やみの中で相談した。そして、何か面白いことをし、笑い声が「天の岩戸」の中まで聞こえるようにすることだと考えた。それで、「天の岩戸」の前で大さわぎした。天照大神は、「暗やみの中で何を楽しんでいるのだろう。おかしいな?」と思い、ほんの少し岩戸をあけた。そこに待っていたアマノタヂカラオノミコトが、手をかけて岩戸をこじあけた。世の中は明るくなった。
神でさえ、楽しいこと、面白いことには関心を持つのだ。子どもたちも当然、面白くなければ学ぼうとしない。
本書の中で、どんな面白い教材・内容のある追究、しがいのある教材を提示していけば、子どもが動き始め、追究していきながら、いつの間にか「学びを変えていく」ようになるかということを、いろいろな角度から述べたつもりである。まだ十分ではないが、第一歩として本書を世に出してみることにした。
教材も最新のものを提示した。というより、本書のために開発したものを提案したのである。おかしいところや、未熟なところがあることは承知の上である。挑戦していかなければ伸びていかないと考えて出した。
一流の人、または一流になろうと一生懸命の人は、「何かに挑み続けている」ではないか。一流の人ほど努力し挑戦しているではないか。そして、人一倍勉強しているではないか。失敗にもこりずにやり続けている。
わたしもまた、何とか一流になりたいとひそかに努力と挑戦を続けている。その歩みは超ノロである。しかし、あきらめずに、挑戦してきたものをまとめてみた。一読して、御指導御批判をいただければこの上ない幸せである。
本書は、明治図書編集部の江部満編集長から「『修業双書』の続きを待ってますよ」というお言葉をいただき、力の限りをつくしてまとめたものである。記してお礼を申し上げたい。ありがとうございました。
二〇〇七年三月 /有田 和正
-
- 明治図書