- まえがき
- T 黄金の三日間
- 一 服装:身だしなみは心のあらわれ! 子どもが一番素敵だと思える先生に
- 二 教室で子どもを迎えない:教室に向かうことで三文の徳がある
- 三 朝の会:短い時間でサッと終わる
- 四 配布プリント:プリントに追われなくなるシステム
- 五 教室環境:すっきりと清潔な教室を保つ
- U 授業―これだけはしてはいけない
- 一 導入の挨拶:子どもをひきつけてすぐに授業を始める
- 二 叱り方:短く個々に合った叱り方を教師が見つけ出す
- 三 授業中の説明の仕方:子どもがイメージできるように短く説明する
- 四 トイレに行きたがる子へ:トイレに行きたがるには理由がある
- 五 テスト:あらかじめ目を通して、つまずきそうな部分に対応する
- 六 先生に訴えに来る子へ:教師が代わりに謝ってあげる
- 七 忘れ物をしてくる子へ:忘れ物をしてきたことを叱らず対応する
- 八 ノートチェック:列を作る教師はそれだけで学級を崩壊させるあやうさをもっている
- 九 チャイムを守らない:チャイムを守らない先生のクラスであれば、子どもは絶対に守らない
- 一〇 間違った答えを言った子への対応:笑顔で対応し、挽回のチャンスを与えよう
- 一一 笑顔で対応しない:七割主義で笑顔で対応できている子をほめ続ける
- 一二 体育の準備:着替えない子を放置してはいけない
- 一三 絶対に一緒にさせようとする:それぞれの子に合った対応が成長を促す
- 一四 保健室に行きたがる子へ:簡単な治療は教室で行う
- 一五 不要なものを置きっぱなしの子へ:教師が一緒に片づける
- V 学級経営
- 一 職員室でくつろぐ:すぐに教室に向かう人・お茶を飲む人・座ってお話しする人
- 二 怪我をした子への対応:低学年の怪我は「保健室」と「保護者への連絡」が大切
- 三 けんかをしたとき:けんかは「両成敗」で短く叱るが基本的な対応である
- 四 教室での遊び方:遊び方を教え、できたらほめる
- 五 休み時間の遊びの中で:小さなトラブルはすぐに解決してあげよう!
- W 給食・掃除当番のさせ方
- 一 自分の仕事の内容や順番を理解させる
- 二 給食を無理やり食べさせる:給食指導は、あせらず励ましながら、時間をかけて
- 三 おかわりの方法:給食のおかわりは子ども任せにしない教師が仕切り、システム化することで給食時間が安定する!
- 四 終わった後にすること:空白の時間を作らない
- 五 掃除をしない子への訴えの裁き方:訴えた子も納得し、言われた子もがんばって掃除をするようになる指示
- X 帰りの会
- 一 先生になってよかったあ! とよく言われるのは帰りの会が早いから!
- 二 長い長いお残り勉強:「居残り勉強は基本的にしない」が原則
- 三 汚れや乱れをそのまま放置:汚れや乱れを整えている子を思いきりほめる
- 四 靴箱のチェック:靴箱の表情を見続ける
- 五 欠席児童への連絡:担任が出張でも連絡が届くシステム+家庭訪問のチャンス
- Y 学校行事
- 一 運動会の時数:時数を超えることなく、計画どおりに進めよう
- 二 行事指導で子どもを怒鳴り続ける:個別評定をしながら、ほめ続ける
- 三 作品展の時数:教師が余裕をもった指導計画をもつことにより、子どもも作品も生きてくる
- 四 学芸会:ほめてほめて、全員が目立つ演出をする
- 五 研究授業:教師の見栄のための授業行為をすてる
- Z 保護者への対応
- 一 初めの挨拶には禁句がある
- 二 連絡帳の返事:保護者へ感謝、同意、そして共感をすること
- 三 家庭訪問:子どもの悪いことは伝えず、アルバムを見ながら話す
- 四 全体懇談会:子どものよいところを目に浮かぶように話す
- 五 保護者対応個人懇談:保護者の言い分をよく聞く、共感する、事実を伝える
- 六 参観:子どもの活動する場面をたくさん作ろう
- 七 宿題を増やすように言う親:保護者の話はよく聞いて、即答はしない
- 八 けんかの対応を親に任せてしまう:子どものけんかに親が出るとややこしい
- 九 怪我をしたときの連絡:即対応・即連絡が低学年の場合の鉄則である
- 一〇 電話対応全般:保護者の話を聞ききり、慎重に言葉を選んで話す
- [ トラブル対応
- 一 ものかくし:子どもの不安をとりのぞく
- 二 いじめ:教師の態度がそのまま反映される!? してはいけない対応例はこれだ
- 三 万引き:再発防止のためには、親の姿勢が決め手
- 四 相手が大怪我をするようなけんか:基本はけんか両成敗けんかの原因を解決してから、危険なことについて指導せよ
- 五 落書き:歯止めをかけ、次に起こさないようにすること
- \ 職員室での対応
- 一 学年間の協調を保つため、プリントの印刷一つをとっても大切である
- 二 力仕事は率先してする:力仕事は、まず自分から 常に周りに対する「気配り」を怠らない行動が自分自身を高める!
- 三 悪口は言わない:口は災いのもと、天に向かってつばを吐くな
- 四 連絡なしに授業を進める:同学年の先生には必ず授業経過をホウ・レン・ソウしよう
- 五 会議:話は短ければ短いほどよい
- あとがき
まえがき
学生のときからサークルに参加し、一緒に勉強してきたT先生が教壇に立つ日がきた。
初任で五年生を担任した。「最初の三日間が大切だ! うまくいくかな?」と不安を胸に、でもしっかり準備して、子どもたちとの出逢いの日を迎えた。
多くの先生から教えてもらったとおりに、学級を組織し、ルールを教え、知的で楽しい授業をした。分からないことや、大変なこともあっただろうけれども、ひとつひとつ乗り越えていった。
隣の先生は教師二年目の先輩、A先生だ。でもT先生が見てもやってはいけないと思えることをつぎつぎにやっていた。初日、集合写真を撮るときに、逃げだした子一人を追いかけていった。まずは、全体に何をしておくのかを指示しておかなければならなかった。
二日目、体育の授業開きでドッジボールをしていた。もっとも大事な一時間を遊んで終わりにしてしまったのだ。
さらにA先生は、最初からずっと子どもを下の名前かあだ名で呼んでいた。授業中も。A先生は、子どものことをいつも一生懸命考えているとってもいい先生だという。しかし、学級はだんだんくずれ、運動会が終わってしばらくしたころ、「子どもが荒れて荒れてしかたない」とつぶやくようになっていた。
T先生はずっとサークルに参加し、多くの具体的な指導法を教えてもらった。また自分でも模擬授業に挑戦し、それを学級で実践し、たりないところを直していった。一年目の終りに、学級の子どもがお手紙をくれた。
「5年2組 笑いあふれる 楽しいクラス」
T先生は子どもからたくさんのお手紙をもらい、「ああ、教師になれてよかったなぁ」と心から思うことができた。
多くの教師は、心ある真面目な人だ。
でも、多くの教室で授業がうまくいかずに悩んでいる教師がいる。
子どもたちが言うことを聞かず、毎日の生活指導に疲れ果てている教師がいる。
T先生とA先生はどちらも若くやる気いっぱいの教師だった。子どものことを真っ先に考える誠実な教師だった。この二人の教師の何が違ったのか。
T先生は「やってはいけないこと」を学んでいた。だから、学級を荒らすことなく、子どもたちと楽しい一年を過ごすことができた。
A先生は「やってはいけないこと」を知らなかった。だから、真面目に一日一日を過ごしていたのに、教室はだんだん荒れていった。
T先生は言う。「私も、もしTOSSの先生たちに出逢っていなかったら、確実に同じ轍を踏んでいました」
荒れた教室は本当に本当に苦しい。子どもたちの前に立つことすら、つらくて怖くて、逃げだしたくなる。
私たちもまた同じ道を歩んできた。その中で向山洋一氏とTOSSの仲間に教えてもらいながら、何をしてはいけないのか、何をこそすべきなのかを少しずつ学び、身につけてきた。
そのひとつひとつの事実をまとめたのが本書である。私たちの失敗したこともありのまま正直に書いた。今学級経営がうまくいかずに悩んでいる方、これから大きな夢をもって教壇に立つ若い先生たちにぜひ読んでいただきたい。
二年目の四月を目前にしたある日、T先生は言った。「明日、担任が発表されます。楽しみです」
どの先生も子どもたちとの新しい出逢いを楽しみにし、教室に忘れられない「ドラマ」を創ってほしいと願う。そのために、本書がほんの少しでもお役に立てたらさいわいである。
TOSS大阪なみはや代表 /奥 清二郎
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- 明治図書