- まえがき
- T 向山洋一は「詩」の授業をどうつくっているか
- 1 雪≠フ授業
- 1 授業の導入をこう構成している
- 2 詩≠ェ表現していることの確認発問
- 3 理由を書かせる指示
- 4 突っ込む場面展開でのゆさぶり発問
- 5 太郎と次郎を眠らせたのは?
- 6 雪≠フ授業を読み解くポイントはここ=@/小貫 義智
- U 向山洋一は「俳句」の授業をどうつくっているか
- 1 上海の俳句の授業
- 1 子どもたちとの出会い
- 2 五言律詩と七言絶句
- 3 日本語と中国語の音
- 4 俳句の約束ごと
- 5 色についての発問1(導入)
- 6 色についての発問2(中心)
- 7 色についての発問3
- 8 芭蕉の俳句と中国の詩
- 9 上海の「俳句」の授業を読み解くポイントはここ=@/根本 直樹
- 2 俳句(松尾芭蕉)の授業
- 1 内部知識を引き出す導入指導
- 2 使われている言葉≠追究させる
- 3 ここで入れる! 芭蕉についての語り
- 4 芭蕉俳句の真髄に迫る発問群
- 5 「俳句(松尾芭蕉)」の授業を読み解くポイントはここ=@/村野 聡
- V 向山洋一は「物語」の授業をどうつくっているか
- 1 「大造じいさんとガン」(椋鳩十)の授業
- 1 練習―大造じいさんは何歳? 手がかりは?
- 2 練習―問題づくりと発表
- 3 「問題」を答えられるように直させる
- 4 問題―物語から年齢を推理する
- 5 問題―大造じいさんとガン―相手をどう見ているか
- 6 問題―書いている根拠を探させる
- 7 「大造じいさんとガン」の授業を読み解くポイントはここ=@/松藤 司
- 2 「やまなし」(宮沢賢治)の授業
- 1 「やまなし」で言いたかったことを話し合う
- 2 討論の後をこう指導する
- 3 「やまなし」の授業を読み解くポイントはここ=@/平松 孝治郎
- あとがき
まえがき
この本には向山洋一氏の代表的な国語の授業が五つ入っています。詩が一つと俳句が二つ、物語文が二つです。
それぞれについての授業分析も書いていただきました。向山氏をずっと追いかけ続けてきた実力派の先生方に執筆していただいています。参考にしていただけると思います。
この本に収めた向山氏の授業は、いずれも、他の実践者には類を見ないものです。
通常では考えつかないような発問・指示であり、独特で予想を裏切る授業展開で組み立てられています。
中でも上海で実施された俳句の授業は私にとって衝撃的でした。漢詩から入り、漢字と仮名の音に触れ、俳句へとつなげていく流れ。それは圧倒的としか言いようがありません。この授業を知ったことで、国語の授業に対するイメージが一八〇度くつがえったと言っても大げさではありませんでした。
新卒時代。私の国語の授業は「気持ち」のオンパレードでした。
「人物の気持ちを考えよう」「登場人物の気持ちを想像しながら読もう」「気持ちの変容を心情曲線に表そう」……。
国語の教科書を毎日一ページくらいずつ順番に進みます。段落を読んでは、思ったことなどを発表させます。優等生の子が発言し、教師が板書し、だらだらと授業が進むのです。
一言で言えば「最初から最後までどうでもいいことばかり」やっていたわけです。
もちろん、授業は盛り上がりません。国語の勉強なんてそんなものかなと思っていました。それで不自然だと感じていなかったのです。
サークルの仲間に聞いてみると、今でもそのような授業は多いと言います。
向山洋一氏の国語授業に出会っていなければ、私も、こういう授業をしていたに違いありません。
向山氏は言います。
私は教師になってから、一度も「あたり前の言葉をあたりまえにおきかえる授業」をしたことがないと思う。(『国語の授業が楽しくなる』)
その後、私も少しだけ子どもたちが「先生、国語楽しい!」と言ってくれるような授業ができるようになりました。子どもたちの国語の力の伸びにある程度の実感も持てるようになりました。
やったのは向山氏の授業をトレースし、追試してきたことだけです。こうした楽しくて力がつく授業を目指す先生方が、本書を手にとってくださるなら幸せです。
本書の構成等について多くの指針をくださった明治図書の樋口雅子氏に心より感謝申し上げます。
/谷 和樹
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- 明治図書