- 『場面サインを見逃すな! 通常学級担任用:特別支援教育対応シート』を使われるみなさんへ
- T あなたは,こんなときとっさに体が動きますか?
- [1] 予定や手順が変わって「やってられない」と言い出したり,暴れ出したりしそうなとき
- [2] 授業中にふらふら歩き回りそうになるとき
- [3] A君が100点や1番になれそうにないと思ったとき本人にとっておもしろそうな言葉に反応して
- [4] しゃべりだそうとしたとき
- [5] 子どもが混乱しそうになったとき
- [6] 友達の嫌がる言動を取りそうなとき「ありがとう」「ごめんなさい」が言えなくて
- [7] トラブルになりそうなとき
- [8] 鍵盤ハーモニカの音などで大きな声を出そうとするとき
- [9] 給食当番の活動を避けようとしたときそうじ用具をふりまわしたり,おしゃべりしたり,
- [10] 清掃当番を避けようとするとき
- [11] 友達に注意されて暴れ出したりしそうなとき
- [12] 嫌いなものを食べないことを注意されて怒り出しそうなとき
- U あなたの授業でこうなったら対応できますか?
- [1] 子どもがなかなか席につきそうもないとき
- [2] 説明した直後に,「先生,何するの?」と聞かれたとき
- [3] 板書や教科書をノートに写すことができそうもないとき
- [4] 授業中に個別指導をしたいとき
- [5] 机間指導をしたいと思ったとき
- V あなたの授業でこんなときどうしますか?
- 国語[1] 書いてある文のとおりに読めそうにないとき
- 国語[2] 作文を書くことに困難を感じているとき
- 国語[3] 文章の視写に困難を感じているとき
- 算数[1] 繰り上がりや繰り下がりの計算に困難を感じているとき
- 算数[2] 文章題が解けないとき
- 算数[3] 分度器の使い方に困難を感じているとき
- 社会[1] たくさんの資料があって混乱しそうなとき
- 社会[2] 写真の読み取りで困難を感じているとき
- 社会[3] 見学で学習のねらいからはずれそうな行動をしそうな子どもがいたとき
- 理科[1] 実験セットを勝手に組み立ててしまいそうなとき
- 理科[2] 実験のやり方とは違うやり方をしようとするとき
- 理科[3] 観察対象でない物に関心をもったとき
- W あなたの教室環境はこのようになっていますか?
- [1] 黒板周りは,シンプルにしましょう
- [2] 整理整頓については,モデルを示しましょう
- [3] マス目黒板を使いましょう
- [4] 机上には使用する学習用具のみを出させましょう
- [5] 子どもが使う文房具は指定しましょう
- [6] 一目で分かる板書をしましょう
- [7] 話は短く,目と耳で分かるようにしましょう
『場面サインを見逃すな!通常学級担任用:特別支援教育対応シート』を使われるみなさんへ
本書は,次のコンセプトでできています。
1 このようなことはありませんか?
□にチェックを入れてみてください。おそらく,一つは当てはまるのではないでしょうか。□は,ADHD,LD,広汎性発達障がい,それぞれの場合を想定して作ってあります。
2 どうして?
ここは,医療面・教育面からどうしてに答えています。
3 まず,すること
「まず,何をするか」は,一番知りたいことです。このことを端的に示したのがここです。こここそ教師の知りたいことですので,眺めただけで分かるように工夫をしてみました。
4 このようになってしまったら
まず何をするかを詳細に書いたのがここです。手順を示せるところは手順も示してあります。また,例示できるところは例示するようにしました。
5 このようになる前に
ここでは,「はじめ論」を述べています。
「まず,すること」は,「これから論」です。
あることが起きてしまったのです。
起きてしまったことにどのように対応するのかを教えてくれる研修会は,ほとんどありません。読者のみなさんも痛感されていることだと思います。
私もまた研修会のたびに痛感していました。「具体的にどのようなことをしたらよいのでしょうか?」と質問しても,「それは,現場人であるみなさんが考えることでしょう」などと言われたこともありました。
しかし,どんなに細心の配慮をしても「起きてしまう」のです。これが,現場の現実です。「まず,何をしたらよいか」は現場にいる教師には,何よりも重要かつ切実です。これらに,少しでも応えようとして本書が作られました。
「このようになる前に」は,「はじめ論」です。
研究者のほとんどが「はじめ論」です。つまり,発達障がいの特性を理解し,初めから対応を誤らなければ,そのような問題は起きないという前提で書かれています。ですから,「起きてしまったこと」には対応できないのです。
「起きてしまったら」の対応で最も大切なのが次です。
全体を相手にしてから,個別指導をする。
すぐに個別対応しなければならないのは,危害が想定される場合です。そうでない場合は,個別対応は次をしてからです。
作業指示を全体に出す。
作業指示というのは,次のような指示です。
・読む・書く・調べるなどのようにすることの指示です。
このようにすれば,子どもにはすることがあるのでそれに取り組むことができます。子どもが取り組んでいる間に個別対応をするわけです。
なぜこのようにするのでしょうか?
個別指導をしている間,子どもを待たせると何が起きるのでしょうか? 「先生は,えこひいきをしている」。これならまだしも,「あの子はめんどうをかけているのにかわいがられている」となり,羨望が「いじめ」の原因にもなったりするのです。
発達障がいのある子どもにもそうでない子どもにも不幸な状態を生む素地にもなりかねないのです。
再度,言います。
全体を相手にしてから,個別指導をする。
本書の「まず,すること」は,「全体を相手にしてから,まずすること」
という意味です。
このことを承知してください。
通常学級の担任にも,ようやく研修も充実し,コーディネータも配置されたりしてきています。学校の体制もそれなりに動き出しています。
しかし,です。
まだまだ,通常学級の担任がどうしたらよいのかと思い悩む状況は改善されているとは言えません。
本書が,通常学級担任の思い悩む状況を軽減する手助けができることを願っています。通常学級の担任が思い悩まなくなる状況は,発達障がいのある子どもが喜々として学校生活を送っている状況と同じだからです。
最後に,私たちの提案を『場面サインを見逃すな!』という刺激的なロゴでこのような形にしていただいた樋口雅子明治図書取締役にお礼申し上げます。
新潟特別支援教育研究会代表
長岡造形大学 /大森 修
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