- はじめに
- Chapter1 道徳授業にかかせない指導スキルのポイント
- 1 道徳授業の「質的改善」を促す指導スキル
- 2 指導スキルを生かすための大原則
- 3 指導スキルを生み出す15のポイント
- Chapter2 道徳授業の指導スキル70
- 教材研究
- 1 道徳的問題をとらえるスキル
- 2 中心価値や関連価値を考えるスキル
- 3 原作・他社教科書を読み比べ生かすスキル
- 4 事実関係を調査するスキル
- 導入
- 5 興味・関心をもたせる工夫をするスキル
- 6 教材に関する補足情報を伝えるスキル
- 7 授業開始時の考えを整理させるスキル
- 8 話し合いへの雰囲気を温めるスキル
- 教材提示
- 9 情感を込めて範読するスキル
- 10 小道具を用いて提示するスキル
- 11 再現構成法で提示するスキル
- 12 一部分を抜き出して提示するスキル
- 13 結末を見せずに提示するスキル
- 発問
- 14 子どもの考えから学習問題を導くスキル
- 15 登場人物について共感的に考えさせるスキル
- 16 行為の原因や理由について分析的に考えさせるスキル
- 17 自分が主人公だったら…と投影的に考えさせるスキル
- 18 主人公や教材に対する考えを批判的に問うスキル
- 19 比較を通して考えさせるスキル
- 20 子どもの考えを生かし問い返すスキル
- 問題追求を仕立てる
- 21 場面ごとの共感から中心発問につなげるスキル
- 22 価値に関するテーマで追求を仕立てるスキル
- 23 教材に関するテーマで追求を仕立てるスキル
- 板書
- 24 場面絵を配置して時系列をわかりやすく書くスキル
- 25 考えの変化をわかりやすく示すスキル
- 26 考えの対比をわかりやすく示すスキル
- 27 構造化・図式化して理解を助けるスキル
- 28 黒板を劇場のようにして生かすスキル
- 29 ウェビング等を活用するスキル
- 30 子どもを板書に参画させるスキル
- 話し合い構築
- 31 座席配置を生かすスキル
- 32 ペア・小グループの話し合いを生かすスキル
- 33 グループ構成を工夫するスキル
- 34 相互指名を活用するスキル
- 35 役割を決めて子どもに任せるスキル
- 36 討論形式で深めるスキル
- 書く活動
- 37 ねらいにそってワークシートを工夫するスキル
- 38 道徳ノートの書き方を指導するスキル
- 39 図解化・イラスト化で表現させるスキル
- 振り返り
- 40 教材と子ども自身の生活をつなぐスキル
- 41 学んだことを意識させるスキル
- 42 日常と授業をつなげる工夫をするスキル
- 終末
- 43 体験談を生かした説話を行うスキル
- 44 格言・名言を生かした説話を行うスキル
- 45 補助教材を活用するスキル
- 46 ゲストティーチャーとコラボするスキル
- 47 次時への課題を明確にするスキル
- 評価
- 48 指導と評価の一体化を図るスキル
- 49 授業中の発言や学習の様子から見取るスキル
- 50 ノートの記述から見取るスキル
- 51 子どもの表現活動(パフォーマンス等)から見取るスキル
- 52 板書の結果等から見取るスキル
- 53 自己評価を効果的に活用するスキル
- 54 子どもの相互評価活動を生かすスキル
- 多様な指導法活用
- 55 役割演技を活用するスキル
- 56 構成的グループエンカウンターを活用するスキル
- 57 モラルスキルトレーニングを活用するスキル
- 58 問題解決的な授業展開にするスキル
- 59 複数時間扱いで深めるスキル
- ICT活用
- 60 動画を活用するスキル
- 61 タブレットPCを活用するスキル
- 62 電子黒板を活用するスキル
- 教材教具の開発・活用
- 63 自作教材のタネを見つけるスキル
- 64 読み物教材(自作)を開発するスキル
- 65 ミニホワイトボードを活用するスキル
- 66 心情を表す教具を活用するスキル
- 予想外への対応
- 67 ねらいと外れた発言に対応するスキル
- 68 沈黙・無回答に対応するスキル
- 69 不適切な発言に対応するスキル
- 70 突然の涙に対応するスキル
はじめに
道徳の時間が「特別の教科」である道徳科として位置付けられて,その新たな展開が始まりました。今,まさに「考え,議論する」道徳授業,アクティブ・ラーニングを実現する授業へと,その「質的改善」による力強い歩みが日本中の各小学校でスタートしたのです。私たちは,この大きなチャンスをどのように生かすとよいのでしょうか。
まず必要なのは,授業に臨む私たち一人ひとりが,道徳科の新しい姿やその特質などについての的確な理解を深めることです。新しい道徳授業は私たち教師にどんな働きかけを求めているのかについて見通す必要があるからです。しかし,それだけでは,頭の中だけで発想を巡らせるだけで,「絵に描いた餅」から抜け出すことができません。
例えば,人を魅了する料理を仕上げるには料理人の豊かなセンスが伴った調理法を修得することが必要なように,また,住み心地のよい家を建てるのには,建築に携わる職人が多角的で応用性のある建築のノウハウを心得ておくことが必須であるように,道徳授業においても,その授業の構想や具体場面で生かす指導スキルを自身の中に多彩にもち合わせていることが大切なのは言うまでもありません。そのことによって,授業づくりをより柔軟に発想でき,指導の幅や可能性を広げ,その実践的指導力に磨きをかけていくことができるからです。
今までも,長い道徳授業の歴史の中で,様々な指導スキルとしての方法が発想されてきました。もちろん,その財産を生かしていくことが大切です。しかし,ややもすると,指導技術ともいうべきノウハウの開示にとどまるものも多かったかもしれません。私たちは,「何をどうする?」というやり方をすぐにでも知ることにどうしても汲々となりがちだからです。
しかし,テクニック(技術)を単に身につけるだけでは,スキル(技能)は生まれません。技術を実際に用いる一人の人の能力が生かされ,伴ってこそスキル=「技能」となります。その意味からも,本書は,様々な指導技術を併記して知ってもらうことをその第一の目的とはしていません。むしろ,いかに一人の教師が,指導技術を自己の能力を生かして消化し,授業場面に効果的に織り込んでいくか,その技術と実際的な指導力をつなぐ考え方をイメージしてもらうことに重心があります。それこそが,私たちが身につけていくべき指導スキル(技能)であると考えるからです。
本書は,「特別の教科」としての道徳授業に実際に臨んでいる各先生が,授業を充実させるための指導スキルの視野を広げ,それを自分のものとし,生かしていくための考え方や具体的な筋道などを,15のポイント,70の指導スキルに整えて展開し,提示しました。しかも,それぞれの指導スキルを執筆いただいたのは,いずれも日常から手応えのある授業実践を数多く重ねられている実践的指導力のある先生方ばかりです。したがって,一読していただくとわかるように,その内容はきわめて実際的,具体的で,イメージしやすく,かつ説得力があります。
ぜひ,本書を一つの重要な手がかりとして,指導スキルを多彩な角度から発想する力を高め,それをこれからの道徳授業の構想や実践に生かしていってください。また,指導に行き詰まることがあったときにも,また本書を開いてみて,それを切り開くためのヒントや迷いを打ち切るための処方箋を見出してみてください。
そのことを通して,各学校で授業に取り組む先生方一人ひとりが,自分なりの新たな指導スキルを生み出すなどして,子どもにとって学びがいのある道徳授業を実現していくことを心より願っています。
2019年3月 /永田 繁雄
道徳科の授業をどう展開していけばいいか、と悩んでいる者にとっては読んで損なしの一冊に間違いないだろう。
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