堀江式 国語授業のワザ
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堀江式 国語授業のワザ(5)
文学教材は「心情曲線」を効果的に使おう!
―文学教材全体の構造を押さえる―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2012/10/5 掲載

【文学教材】

「心情曲線」を使って文学教材全体の構造を押さえたいのですが、どうもうまくいきません。どのようにすればよいでしょうか。

ココがポイント!

文学教材の多くにおいて、登場人物の心情が消沈、回復、上昇、昂揚する

 例えば、「スイミー」(2年上、光村)ではこれが非常に明確です。

「たのしく くらして いた。」(昂揚)
  ↓
「こわかった。さびしかった。とても かなしかった。」(消沈)
  ↓
「スイミーは、だんだん 元気を とりもどした。」(回復)
  ↓
「スイミーは 見つけた、スイミーのと そっくりの、小さな 魚の きょうだいたちを。」(上昇)
  ↓
「みんなは およぎ、大きな 魚を おい出した。」(昂揚)

 学年が上がるにつれ教材文が長くなり、この消沈、回復、上昇、昂揚が複雑にからみあっていきます。そうした変化を目に見える形にする「心情曲線」は、文学教材の全体構造を押さえる方法として、うまく使うと非常に効果的です。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 授業実践の基本となる学習指導要領を押さえる―「叙述を基に」読む―

 「心情曲線」を活用した授業を何度も観ましたが、残念なことに曲線を描くだけにとどまっている場合があります。授業実践の基本となる学習指導要領を押さえてみましょう。例えば、〔第3学年及び第4学年〕の「C 読むこと」領域の指導事項ウを挙げることができます。

ウ 場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像して読むこと。

 登場人物の気持ちの変化を読む際に、「叙述を基に」読むことが重視されています。

ワザ2 「心情曲線」に叙述を添える―心情曲線と本文の叙述をつなぐ―

 「心情曲線」を活用する際にも、この「叙述を基に」読むことが基本となります。「大造じいさんとガン」(5年)のノートに書かれた「心情曲線」の例を示しましょう。「心情曲線」をはさんで、上に「行動(叙述)」が示され、下にその叙述から読み取った「心情」が書かれており、それをつないでいます。廣門知紗学級(赤穂市立赤穂小学校5年)において生み出されたノートです。
 さらに詳しくは、堀江祐爾編著『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』をご参照下さい。

例

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
10件あります。
    • 1
    • 島唄
    • 2012/10/15 19:56:52
    文学教材の多くにおいて、登場人物の心情は昂揚、消沈、回復、上昇する。だから心情曲線を使って、心情の変化を目に見える形にする、というのがなるほどと思いました。廣門先生のノートは、行動(叙述)と心情の間に心情曲線を置き、叙述を基に心情変化を考えることのできるすばらしい工夫で、自分も実践してみたいです。今回、堀江先生が示された「叙述を基に」読むことの大切さ、よく覚えておきたいです。
    • 2
    • うっちい
    • 2012/10/21 17:57:28
    文学の基本的な構造がとても分かりやすく整理されている。このような基本的な構造は、教材研究にも役立つと思う。
    登場人物の叙述を添えるという簡単な工夫だけで、本文に立ち返らせて心情曲線をかくことになる。心情曲線を「読むこと」の学習として生かす工夫を教えていただくことができた。
    • 3
    • けいちゃんまん
    • 2012/10/21 19:07:35
    「堀江式国語授業のワザを毎回楽しみにしています。
    私も心情曲線をよく使うのですが、本文の引用を板書し、そこに黄色チョークで読み取った気持ちを書き込む、その後赤チョークで心情の高まりや心の通い合いなどを線で書き込むことが多いです。もっとすっきり表す方法はないかと模索していました。今回の廣門先生のノートは、上段に本文、中段に曲線、下段に読み取った気持ちと整理されていて、とてもすっきりとわかりやすいです。ぜひ板書にも取り入れたいと思います。
    • 4
    • はまっち
    • 2012/11/7 18:09:46
    心情曲線によって、登場人物の心情の変化を目に見える形にすることは、子どもたちの考えを整理することにもつながり、とてもわかりやすくていいなと思いました。廣門学級の子どものノート例は、ノートを3段に分けて(行動)(心情曲線)(心情)と関連させて書いており、その心情の変化が叙述をもとに考えられたものであることが明確にわかり、すばらしい工夫だと感じました。この関連が大事なのであり、この関連を目に見える形にすることが大切であると思いました。
    • 5
    • がま
    • 2013/1/2 15:10:27
    心情曲線を効果的に使うには、「叙述を基に」が大切なポイントだと理解しました。ノート指導においては、叙述と心情を分けて書くと、とても見やすく構造化されていると感じました。
    • 6
    • さっこ
    • 2013/7/24 23:24:29
    心情曲線は物語を構造的に読むことにおいて非常に有効な手だてであると思います。物語の起承転結を見ていく上でも役立つことです。そのような読みは、単に登場人物の気持ちを考えるだけでなく、物語の読み方を学び、他の読書活動にも広がりや深まりを持たせることができると思われます。しかし、物語を読むときには「根拠」「理由」は必要です。どこに書いてあるのか、どうしてそう思ったのかを明確にしていかなければ読み深めることはできません。堀江先生がおっしゃる「叙述を基に」はとても大切なことであると痛感しています。行動(叙述)と心情と心情曲線がつながりを見せ、わかりやすくノートにまとめられている廣門先生の実践は、子どもたちの物語に対する読み方を確立し、他の学習にも応用できる素晴らしいものだと思いました。
    • 7
    • D.T
    • 2013/7/25 3:25:13
    文学教材、特に物語文において、登場人物の心情変化を読みとるうえで「心情曲線」の活用は非常に効果的です。しかし、心情が変化するにはそれ相応のきっかけがあり、それが行動となって表出することを子どもたちに理解させる必要があります。そこで、学習指導要領に記載されている「叙述を基に」心情の変化を捉えさせる場合、子どもたちはその心情変化に至ったきっかけ(行動)と関連付けて読解する必要があり、「心情曲線」は心情と行動を視覚化して結びつける点で効果的なツールとなり得ます。廣門先生の指導によるノートは、心情と行動の間に心情曲線を置き、三者の関係性を図式化・明確化する工夫が施されています。また、それらの情報を時間軸に沿って整理することで、文章全体の読解をも容易にしていると考えられ、子ども達にとって非常に有効な実践であると実感しました。
    • 8
    • ホリ
    • 2013/7/30 15:28:20
     「心情曲線」は、物語の構造やクライマックス、人物の変容を視覚的にとらえることができる方法の1つであると思います。しかし、私はそれを上手く使うことはできませんでした。
     心情曲線によって、中心人物の心情、つまり、昂揚、消沈、回復、上昇など、心情の変化を視覚的に理解しやすくなったのは確かなのです。しかし、児童の中で、どうも叙述との結びつきが弱いと感じていました。そんな時、今回の例がとても参考になりました。心情曲線、叙述、心情を結びつけて、視覚的にもさらにわかりやすいものになっているのです。次回、心情曲線を使うときには、この例を参考に、さらに視覚的に理解、そして、叙述に沿って、児童が物語文を読めるように努めたいと思いました。
    • 9
    • flaba
    • 2013/8/9 16:22:00
     文学や心情という言葉だけを聞くと、つい個々の自由な読みが許容されるように考えがちですが、客観的な読みの力を子どもたちは身につける必要があります。そこで、このワザの説明にもある「叙述を基に心情を捉えていく必要がある」という点に強く共感できました。
     心情は文章中にそのまま書いてあるとは限りません。台詞、行動、情景描写を手がかりに、正しく解釈することが求められます。このワザでは「行動」の欄に取り出した情報について、「心情」の欄に子どもたちが自身の言葉で解釈した結果を書いています。これならば高い読解力が身に着くと考えられます。
     叙述を抜き出すだけでも、曲線を描くだけでも、心情を言葉で書くだけでも理解は深まりません。それらを複合的に考えることを可能にしているのが、このワザなのだと思います。
     また、授業の中で物語の状況を一通り確認してからこのワザを使うと、より効果的なのではないでしょうか。
    • 10
    • HIROYN
    • 2013/8/12 12:52:48
     『小学校学習指導要領解説国語編』第3学年及び第4学年「C読むこと」(2)内容➀(1)ウ「場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像して読むこと」とあります。この叙述を基にというところにポイントがあるのだということは、当たり前のことですが、改めて気づかされました。登場人物の心情を読み取るとき、根拠がなければいけません。中学校国語教科書第三学年に、「故郷」という魯迅の作品があります。ルントーとの出会いは「わたし」にとって感動的なものであるはずですが、「旦那様」とルントーに言われた時の「わたし」の心情は、「わたしはぞっとして身震いが出そうになった」から読みとることができます。最初は、ルントーとの関係は「わたし」にとって素晴らしいものでした。心情曲線をつくり、「わたし」の心情の上がり下がりがよく表れていることを可視化すると、心情を基に物語の内容を読み取る大きな手助けとなると考えます。根拠を考えるきっかけとしても、可視化は重要です。上がり下がりが見られると、当然そこに疑問を持つであろうと考えるからです。
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