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小学校プログラミング教育必修化−その定義と課題とは
教育zine編集部 城野
2016/7/31 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程

プログラミング教育の普及に向けた新たな動き
 今月19日、総務省は、『「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」に係る提案公募の結果』を公表しました。次期指導要領改訂初年度にあたる平成32年より、小学校でのプログラミング教育必修化が検討されています。
 総務省では、今年度より新たに若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業を進めており、その一環として効果的・効率的なプログラミング教育の実施モデル校を公募しました。全46件の応募の中から、今回は小学校、中学校、高等学校より11校が選定されており、実証校では、基本的なものから発展的なものまで多様な教育プログラムを開発・提供予定とのことです。教育課程外の時間に行い、講座の時限数は原則5回以上、事業期間は契約時から平成29年3月までです。
 ここでは実際の学校現場でのプログラミング教育を実証するということだけでなく、同時にプログラミング指導者の育成も目的としています。講座の提案団体となる事業者は一般企業や社団法人などで、大学生や専門学生などが指導にあたります。学校現場内に留まらず、クラウドや地域人材を活用したプログラミング教育の普及を目指しています。こうした実証校での取り組みを通し、プログラミング教育の全国への普及に向けて、指導者やノウハウの不足を補うことが期待されており、プログラミング教育必修化への具体的なプロジェクトが動き始めました。

プログラミング教育の定義とは?
 6月、文部科学省は小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について、有識者会議での議論の方向性を公表しています。
 この中で、

 プログラミング教育とは、子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディング(プログラミング言語を用いた記述方法)を覚えることが目的ではない。

とその定義を明確にしています。
 では、小学校でのプログラミング教育では、プログラミング的思考を身につけるために、どういった取り組みが具体的に想定されているのでしょうか。
 プログラミング教育の導入にあたっては、プログラミングそのものを1つの教科として捉えるのではなく、教科横断的にプログラミング的思考を取り入れられることを想定しています。教科内容をふまえ、具体的に想定される導入内容には下記のような例が挙げられます。

【理科】
・電気の性質や働きを利用した道具があることをとらえる学習を行う際、プログラミングを体験しながら、エネルギーを効果的に利用するために、様々な電気製品にはプログラムが活用され条件に応じて動作していることに気付く学習を取り入れる。
【算数】
・小学校で筆算を学習するということは、計算の手続を一つ一つのステップに分解し、記憶し反復し、それぞれの過程を確実にこなしていくということであり、これは、プログラミングの一つ一つの要素に対応する。つまり、筆算の学習は、プログラミング的思考の素地(そじ)を体験していることであり、プログラミングを用いずに計算を行うことが、プログラミング的思考につながっていく。
【音楽】
・音楽づくりの活動において、創作用のICTツールを活用しながら、与えられた条件を基に、音の長さや音の高さの組合せなどを試行錯誤し、つくる過程を楽しみながら見通しを持ってまとまりのある音楽をつくることや、音長、音高、強弱、速度などの指示とプログラムの要素の共通性など、音を音楽へと構成することとプログラミング的思考の関係に気付くようにすること]などが考えられる。

今後の課題
 例に挙げたような教科での取り組みは、各小学校の実情をふまえた上での導入が必要とされており、どのような学年・教科・単元で取り入れていくかは、各小学校単位での計画・実施が求められています。その一方で、各小学校が円滑にプログラミング教育を実施していくためには、具体的な実証例の蓄積や指導例をまとめることや、各教科の強みとプログラミング教育のよさが結びついた教材の開発が急がれます。合わせて指導者の確保も必要不可欠であり、教員による指導のみならず、地域社会と連携した取り組みが重視され、先述の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」に関わる事業などでの実践例が期待されます。
 また、実践例の蓄積と普及を進めるとともにICT環境を整備していくことも今後の課題です。プログラミング教育の目的が教育現場に正しく周知され、円滑に実施されるためには、ノウハウの蓄積、環境面の整備、地域社会との連携とクリアすべき課題は多くあります。急速に変化する社会の中で、より現在の社会の動きに即した教育の在り方が求められています。

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