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全国学力・学習状況調査 今年の結果から課題を見る
教育zine編集部川西
2015/9/30 掲載

 今年4月21日に実施された全国学力・学習状況調査の結果が8月25日に発表されました。国立教育政策研究所がまとめた報告書・調査結果資料によると、 都道府県の状況は

○国語、算数・数学については、引き続き、下位県の成績が全国平均に近づく状況が見られ、学力の底上げが図られている
○理科についても、平成24年度調査実施時と比べ、下位県の成績に改善傾向が見られる

とのことです。

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※問題の異なる年度間の相対的な比較ができるように、平均正答率ではなく各年度の調査の全国平均正答数がそれぞれ100となるようにした標準化得点のグラフです。(教育課程研究センター「全国学力・学習状況調査」報告書・調査結果資料より)

 問題が違うための、年による誤差が多少あるとはいえ、平均正答数が低い3都道府県の標準化得点は「おおむね改善している」と言って差し支えない数値が出ています。

 問題の例をあげながら顕著に表れた結果を教科ごとに見ていくと、

小学校理科

「地面に水をまいたときの地面の様子と温度変化について、実験結果から言えることを選ぶ設問」では正答率84.3%であるのに対し、「水の温度と砂糖が水に溶ける量との関係のグラフから、水の温度が下がった時に出てくる砂糖の量を選び、選んだわけを書く設問」では29.2%
 実験結果を正しく読み取ることはできるが、その後の考察に課題があることがうかがえました。

中学校国語

「文章の最後の一文があった方がよいかどうかについて、話の展開を取り上げて自分の考えを書く設問」で正答率は31.7%
 自分の考えを書き表すことへの課題が大きいことが示されました。

数学

「四角形EFGHがいつでも平行四辺形になるように点Fの位置を決める方法を、平行四辺形になるための条件を用いて説明する設問」で正答率22.1%、無解答率は47.3%
 考えを文章に表すことへの苦手意識がうかがえました。

 記述式の問題で選択式の問題よりも正答率が下がること自体は自然ではありますが、これらの無解答率が「用語を答えなさい」などの暗記していなければ書けないものの次に多くなっているという結果は、自分の思考を文章に表すことを苦手とする傾向があることを示しています。
 数学では「解答時間が少なかった・全く足りなかった」と答えた割合よりも、無解答率の方が高い記述式の設問もあり、時間に余裕ができていても記述は白紙にして諦める、という傾向も見受けられました。
 思考力・判断力・表現力を身につけようという現行学習指導要領の趣旨、「『生きる力』を育む」のためには、発展的な問題や自分の意見・考え方の道筋を述べる記述問題でこそ、その成果を発揮したいところでしたが、今後更に時間をかけて取り組んでいかなければならない課題だということが見えた結果になったようです。正答率の向上もさることながら、今後の調査で記述の白紙率低下が望まれます。

 さて、毎年の調査では年々どのように学力が推移しているかがわかりますが、3年ぶりに行われた理科の調査では、前回実施時に小学校6年生だった児童たちが中学3年生になっているということで、次は中学校での生活を通してどのような変化があったかについて読み取ります。

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(教育課程研究センター「全国学力・学習状況調査」報告書・調査結果資料より)

 3年前には理科の勉強が役に立つと思えていた児童たちが、本来ならばより高度な内容を理解し「生活に必要な知識だ」と実感できるはずの中学の学びを通した結果、理科の勉強が役に立つと思えなくなってしまったということが顕著に表れた結果となりました。

 「数年前の同世代に比べて今の子たちは理科に興味がない」という、単なる時代の変化とも取れる結果でなく「数年前役に立つと思っていたことに今は意味を見出せなくなった」という結果となると、一層、成長過程での教育の仕方の重要性を感じます。
 より高度な内容を学んだ結果つまずいてしまって教科自体がつまらなくなること、学んで理解はしたけれど有益だと思えないこと、これらは今回の理科だけでなくどの教科においても生じる可能性が高い問題だと言えます。
 学問が単に処理して点数を取るべき問題なのではなく、実生活に関わるものであると日々感じてもらうよう、学校生活を通してモチベーションを上げることが大切です。「授業中の何気ない先生の雑談」は、以前も今後もやはり有効な手立てなのでしょう。

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