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英語能力判定試験「TEAP」―求められる英語コミュニケーション力
教育zine編集部小菅
2015/7/31 掲載

 7月19日、昨年度から実施されている新しい英語能力判定試験「TEAP」の第1回試験が実施されました。

TEAPとは?

 TEAP(Test of English for Academic Purposes)は、大学などのアカデミックな場での英語力を測定する試験として、上智大学と日本英語検定協会が共同で開発を行いました。主に大学入試を控えた高校3年生を対象としており、難易度は英検準2級〜準1級程度とされています。「読む」「聞く」「書く」「話す」の英語4技能で構成されているのが大きな特徴で、論理的思考力が問われます。
 今月行われた2015年度の第1回試験では、受験者数が前年比の162%と大幅に増えており、次の試験でもさらなる増加が見込まれています。

TEAPの試験内容

 それでは、TEAPでは実際にどのような形式の問題が出題されるのか、4技能のそれぞれのカテゴリーにそって見ていきます。

○Reading 「読む」
 試験時間70分で、問題は60問。問題形式は語彙・文法や図表・英文の読み取りといった通常の試験のようになっていますが、内容は大学の授業を理解する上で必要な資料や教材などがテーマになっています。
◯Listening 「聞く」
 試験時間50分で、問題は50問。問題形式は会話や英文の聞き取りで、内容は、大学の教授や留学生とのやりとりなどがテーマになっています。
◯Writing 「書く」
 試験時間は70分で、問題はTask AとTask Bの2問。Task Aでは、説明文や評論文などの課題文要約を行い、Task Bでは与えられた情報を読み取ってエッセイを書きます。
◯Speaking 「話す」
 試験時間は約10分で、問題数は4問。試験官からの質問に答えるだけでなく、スピーチや試験官へのインタビューも行います。

 このように、TEAPでは受動的に問題を解くだけでなく、自ら英語を用いて考え、意見を発信する英語運用能力が測定されるのが特徴的です。

国際基準規格に対応した成績表

 TEAPの成績は、英語4技能の試験の得点である「スコア」と「CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)」という国際基準規格による「バンド」で表されます。CEFRは欧州評議会で公開され、ヨーロッパ言語圏で広く使われ始めている語学レベルの指標を示すもので、その言語で具体的に何ができるかを指標に、レベルが6段階に分かれています。
 また、4技能ごとにスコアに基づいたアドバイスも表記されています。TOEICなどの英語能力判定試験では、結果しか表記されないのに対し、TEAPでは今後に向けてどのような学習を行っていけばよいかが示されています。そのため、受験者は自分の苦手分野だけではなく、苦手を克服するためにどのような学習を行うべきかが分かります。「今後の英語学習につながる、効果的なウォッシュバック(波及効果)を目的としたフィードバック」があるという点がTEAPの成績表の特徴です。

TEAP Can-doリスト

 TEAPの成績表には、スコアとバンドのほかに「TEAP Can-doリスト」も表記されています。Can-doリストは、以前の記事にもあるように、平成25年に文部科学省で生徒に求められる英語力を達成するための学習到達目標として提示されたことで注目されています。TEAPの成績表にも、成績に応じて現在の英語力で具体的にどのようなことができる可能性が高いかの目安を知ることができるCan-doリストがあります。

TEAP利用入試について

 TEAPが開発された背景には、大学入試の現状があります。現在の大学入試では、主に「読む」「書く」能力が中心に測定されており、「書く」「話す」能力があまり測定されてきませんでした。また、大学によって問題の質にばらつきがあり、英語運用力が正確に測られていないという現状がありました。これを解消し、新たな英語テストとして作られたのがTEAPなのです。
 そのため、TEAPを利用して、大学入試を行う学校が増えてきています。青山学院大学などは、設定している基準点に達していれば、外国語(英語)の試験は免除されるTEAP利用入試を2016年度から導入します。その他にも、15の大学も導入予定です。
 いくつかの大学でこのような動きがあるのは、文部科学省が平成26年12月22日の第96回総会において発表した、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」(PDF)において、英語4技能が注目されたことに関係しています。そこでは、以下のように述べられています。

真に使える英語を身に付けるため、単に受け身で「聞く」「読む」ができるというだけではなく、積極的に英語の技能を活用し、主体的に考え表現することができるよう、「話す」「書く」も含めた4技能を総合的に育成・評価することが重要である

 また、文部科学省が検討している大学入試センター試験に変わる新しい入試、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」でも英語4技能は注目されています。先述の答申では、以下のようにも述べられています。

特に英語については、4技能を総合的に評価できる問題の出題(例えば記述式問題など)や民間の資格・検定試験の活用により、「聞く」「読む」だけではなく「話す」「書く」も含めた英語の能力をバランスよく評価する

 これまでの入試で測定されていた「聞く」「読む」が中心の英語力だけでなく、実際に海外の方とコミュニケーションをとるにあたり必要な「話す」「書く」能力も測定できるような入試が求められているのです。
 2020年の東京オリンピックが近づき、日本のグローバル化が進む中、さらなる英語コミュニケーション能力の向上が求められています。TEAPや大学入学希望者学力評価テスト(仮称)で英語4技能が測定されますが、それらの能力の向上のために、どんな動きがあるのか見守っていきたいと思います。

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